■コンビニ _選択11/12/09:05■
ヤタの情報をゴンさんと共有をしていくと信じられない現実ばかり見えてくる。
異世界転移も転生もしていないのに、大穴の向こう側にある異世界『ホールズ』から流れ込む矯正力が俺のいる『原初の世界』を異世界へと変えつつある。
これ程大きな矯正力が生じる原因は不明らしいが、なんとかしなければ俺の今までの平穏な毎日は消えてしまうだろう。
「とりあえずこんな感じだよ、何か質問はある?」
「矯正力は人の記憶を変えるんですよね?」
「そう、もとから当たり前にあったように感じてしまってるかな、物品とかも入れ替わったりしてるけどそれも違和感なく受け入れるくらい」
「俺に侵食される前の記憶があるのは?」
「私の近くにいる時間が長かったからかな、私の周りは神域に近いから、精神的な矯正力は届かない」
「ゴンさんは?」
「残念やけど俺にはそこまでの力は無いで」
「ゴン、堕天しかけてたもんね」
「は、は、は、返す言葉もありません」
「もしヤタの近くから離れるとどうなるの?」
「ナイナイとは『血の契約』を結んでるからこれ以上影響を受けることは無くなってるかもしれないけど、それはあくまでも想定内ならの話。もし契約を結んで無ければ自然と銃の記憶が出来て、当たり前の様に銃を扱えるようになってたと思う」
「なるほど」
「イナゴが外に出てくる程に矯正力の影響は色濃く出てくると思う、だから早く殲滅していかないと」
真剣な眼差しでヤタは語る。
『GYuuuunn』
「うわっ!なんや!敵か!?」
聞き覚えのある音だったのでヤタの方を確認する。真っ赤になっているヤタ。
ヤタが上目使いで何かを訴えている。
「す、すみません、俺の腹の音です」
「なんや、雨森ちゃんか、ビックリするやん。とりあえず朝飯にしよか。ちょっと適当に見繕ってくるから待っててや」
そう言うとゴンさんは店内に移動して休憩室に俺とヤタが残された。
「ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
メイド姿のヤタを見ていると、どうにもやはり今の現実が夢で無いのかと思ってしまう。
「その、一つ確認したいんですけど」
「何かな」
「ヤタは…神様なんですか?」
「今はそうなるかな」
「今は?」
「もとは人間だから。輪廻転生の際に空席になっている役職に最適な魂が選択される仕組みらしくて」
「神様の空席?神様も死ぬってことですか?」
「そうだね、神様と言っても少し特別な力がある人間でしか無いんだよ」
「なんだかイメージと違いました」
「あまり深く考えなくて良いよ、そのあたりも含めて組織の話を説明しだすと日が暮れてしまう。なんとなく理解してくれていたら良いから。あと喋り方」
何だかやたら喋り方にこだわるな、堅苦しいのが嫌いなのかもしれない。
「あ、ご、こめん。注意するよ。ところでこれからどうしたら良いんだろう?」
これは俺にとって最大の疑問だ。
「そうだね、仮に『ホールズ』の侵食が色濃くなると、こちらの『原初の世界』には銃と異能が溢れ、モンスターも現われるようになる。
その世界で生きていく覚悟があるなら、このまま私と別れても良い。
逆に元の世界に戻したければ私と共に行動してもらう事になるけど、その場合は家族や交友関係を捨てて今の生活に戻れない覚悟をしてもらわないといけない」
俺だけ元の世界の記憶がある世界というのは、もはや異世界に迷い込んだようなものだ。しかし、家族や友人を捨てるというのは…。
呆然としていた俺の頭に、柔らかい感触がする。
「決めるのは今すぐじゃなくても、良いから」
俺の頭にヤタが優しく手をのせてくれていた。
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