謎の美少女転校生に「おっぱい揉ませてあげる代わりに居候させてほしい」とか言われて、勢いでOKしちゃったんだけどどうやら裏がありそうです。
藍坂イツキ
第1話「おっぱいを揉ませてあげる」
「おっぱいを揉ませてあげるから私をあなたの家に泊めて頂戴?」
それはある日の放課後、校舎裏の壁にて起こった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
何でもない朝のホームルームの時間。
担任の先生の「頑張れよー」だとか意味のない話を聞き流しながら外の景色を眺めていると、急に先生が口調を変えてこんなことを言った。
「えーっと、みんなにはここでお知らせなんですか今日から皆と一緒に過ごす転校生が来ています」
ざわざわとしていた空気が一変し、黙り込む男女ともども。
もちろん、男どもが鼻を荒くさせているのは女子の転校生を望んでいるからだろう。女子も女子でイケメンが来ないかななんて思っている所でガラガラと扉が開いて答え合わせ。
「「「「うおぉおおおおおおおおお」」」」
正解は男子の歓声。
扉を開けて入ってきたのは途轍もないほどに綺麗な女の子だった。
腰辺りまで伸びる美しい白髪に、見る者すべてを恋に落としそうなくらいに綺麗なスカイブルーの瞳。極めつけには整った鼻に、色っぽさと艶がある黄金比の唇。
すっぴんだろうに全くも見劣りしない女の子が現れたのだ。
止まらない男子の歓声に追い打ちをかけるようにぶるんと揺れる胸。そこそこの大きさでも制服越しなら分からないはずなのだが、そんな防御壁すらも越えて襲ってくる凶悪なるその胸があった。
大きさは——目算も出来ない。というかあんなの見たことないが故によく分からない。
よくある、多すぎて分からないってやつの大きさ版だ。
すると綺麗な髪をふわりとかき分けながら教卓に来て口を開いた。
迸るほどに美しい瞳がきらりと輝き、誰もが息を飲む。
おっとここで斎藤君が目を合わせて泡拭いて倒れました!
何と同性の三木谷さんまで白めになって倒れたぞ!
なんて実況の声が上がりそうな緊迫した状況。
「私立孔明学園からやってきました。島崎カエデです。よろしくお願いします」
しかし、余りにも簡素な自己紹介に誰もが声を出そうか迷っていた。そんな中、若干苦笑いで声を掛ける先生。
「あ、えと、それじゃ島崎さんは窓側の席に座ってくれる?」
「いえs……分かりました。ご命令ありがとうございます、サー」
「え?」
急な「サー」呼びに先生は戸惑っていたが皆にとってそんなことは関係がない。
ふわりといい匂いを漂わせながら振り向いて席に着く彼女に誰もが見惚れ、ホームルームは幕を閉じた。
もちろん、ここからの流れも想像できる通り。
色目ありありの男子や好奇心で近づく女子たち。
それはもう耐えられないほどに囲まれている彼女を目にした俺はどうせ関係ないと知らんぷりを貫いた。
見た瞬間は惚れかけたが、こういう女子はイケメンにとられるのが相場だ。俺みたいな陰キャ植物に話しかけてくれるはずもない。
そんな風に決め込んでいるのが今思えば悪かったのかもしれない。
授業が終わり、余りにも塩対応な彼女に呆れたのか帰る頃には話しかける人も少なくなっているところでそれは起きた。
掃除が始まるので適当に机を後ろに下げてリュックを担ぎ、イヤホンを耳に付けて帰宅しようと廊下に出た瞬間だった。
「んがっ⁉」
急に体が傾き、なぜか行こうとしている方向の真逆に引っ張られる。耳も塞いでいたので何が何だか分からず、しかし鍛えていない細身の体が如何せん役に立たない。
どんなにもがいても引っ張られる体に結局は従う形で振り向くとそこに居たのは白髪美少女こと島崎カエデさんだった。
「え、ひゃ、な、なんで島崎さんが⁉」
あまりにも学校でしゃべらなかったためか声が裏返ってしまったがそんな俺のきもさ満点の反応も微動だにせず、そのガッチリムッチリとした身長160㎝ボディから繰り出されるパワーに負けてどんどんどんどんと引っ張られていく。
きりっとした表情に心がザワつくが血管浮き出た腕にゾッとして力が抜ける。
「何もしないから、こっちに来て」
え、何、怖い怖い!
俺ってまさかこのままレイプでもされちゃうのか⁉
さすがに暴れる俺にしびれを切らしたのか安心させようとしてくるが逆効果。
しかし、俺も俺で抵抗できるわけがなくそのまま校舎裏の支柱の陰になっている場所に打ち付けられた。
「ふげっ⁉」
背中がジンジンと痛み、前を向くと凄い形相でこぶしを握る姿が見えた。
やばい、なんかヤバいけど一発くる!
「ひゃっ――」
そう思って身構えると一発顔面に炸裂っ—―――はしなかった。
恐る恐る目を開くとそこには大きな胸と可愛らしい顔。美しい綺麗な瞳がほぼゼロ距離で俺の汚い目を見つめていた。
「えっ」
さすがに状況に声が漏れて、ふと視線を横にするとそこには壁にドンっとされた右手。
その状況を頭で理解するのにはやや時間を要したがハッとして気が付いた。
これは、かの有名な――壁ドンだ!
と。
急なキュンキュン展開、俺が女子高生ならもう恋に落ちているだろう状況だった。
しかし、同時に疑問が湧いてくる。
最高なシチュエーションなのは間違いない。ただ、なぜ俺が急に来た転校生に校舎裏に連れ出されて壁ドンされているのか。
何にもしゃべらず認めてくる彼女に俺は訊ねてみることにした。
「——あ、あの、何か御用で」
引けた弱々しい声。
仕方がないと言いたいところだが自分で聴いても情けなさが込み上げてくる。
すると、彼女は手を降ろし、俺の目の前で平手打ち――ではなく手をパチンと綺麗に合わせて一礼。
「あ、え、急に何を――」
そうして、彼女はこう言ったのだった。
「私のおっぱいを揉ませてあげるから、その代わりにあなたの家に居候させてくれないかしら?」
「え——っ?」
☆あとがき☆
見切り発車作品です。
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