第11話 格納無双 ルシア視点

私もライルを守りたい。いつも守ってもらってばかりだから。


ライルは今までの男とは違って、私がやせ細って綺麗じゃないときに私を助けてくれた。綺麗じゃないから捨てられちゃうと思って、必死に綺麗アピールしたけれど、そんなの関係なかった。


ちょっとこの格好は恥ずかしいけど、ライルの役に立てるのであれば、どうってことはない。


さっきの水鉄砲でタイミングはわかった。水鉄砲が終わったと思って油断したら、まだ終わってなくて、ちょうど乳首に当たって声出しちゃったけど。


「ルシア、リッチだ」


よし、行くわよ。おお、怖い。リッチさん、凄い迫力ね。


(格納!)


「あれ?」


「おい、凄いな。リッチを格納しちゃったじゃないか。しかも、10体も」


ライルが驚いているけど、私も驚いた。


本当は敵の魔法を格納しようと思ったのだけど、本体ごと格納してしまった。


でも、ライルが喜んでる。この人の役に立てて私は本当に嬉しい。


「さあ、次行くわよ」


「頼もしいぞ、ルシア!」


私、ひょっとすると、アンデッドキラーかもしれない。ワイト、レイス、デュラハン、そしてエルドリッチまで格納した。


そして、セーフティゾーンをようやく見つけたのだけど、フロアボス部屋の隣だった。


ライルが何か言いたそうだ。


「ルシア、物騒だから、格納したアンデッドをリリースしないか?」


ライルは臆病者ね。


「大丈夫よ。何かに使えるかもしれないでしょ」


「寝てるときに出て来たりとかしないだろうな」


「そんなこと今までなかったでしょう?」


「まあ、そうなんだが、ルシアとそのう、しているときに、エルドリッチとか出て来たら、間違いなく漏らすぞ、俺は」


「もう、変なこと言わないでよ。そんなに、怖いなら、私としなければいいでしょ」


ふふふ、考えてるわね、おじさん。そもそも私とそう簡単に出来ると思わないで欲しいわね。あなたを大切に想っているけど、するかどうかの主導権は渡さないわよ。


「分かったよ、ルシア。ところで、どうする? フロアボスもアンデッドだと思うが、格納できると思うか?」


「やってみないとわからないけど、出来るんじゃないかな」


「休むか? それともこのまま行くか?」


さすがに疲れたけど、一度休んじゃうとまた覚悟決めるまで大変だから、このまま行った方がいいだろう。


「このまま行きましょう。そして、格納したボスをボス部屋にリリースして、この下の階を家にしない?」


「そうだな。それはいい考えだ。よし、やろう」


私はフロアボス部屋への扉を開けた。


ボス部屋にはドラゴンがいた。


「ゴーストドラゴン!」


ライルが叫んだ。


ドラゴンのお化け! こんな大きな魔物、格納できるのかしら。


(格納!)


あ、出来ちゃった。私って、何者?


ライルがポカンとしている。何だか笑っちゃうわね。


地下60階への扉が開く。まだ何だかぼうっとしているライルを先に行かせて、私はゴーストドラゴンをボス部屋に戻した。


これで、地下59階はフロアボスが健在のままとなった。私とライルは地下59階で死亡したことになるだろう。いいカムフラージュになった。


「ライル、地下60階はどんな感じ?」


私は先に降りているライルに様子を伺った。


「凄い。ルシア、降りて来て」


ライルの声が弾んでいる。どうしたのだろう?


地下60階に降りると、そこは今までのフロアとは全く様子が違っていた。


巨大なドーム状の閉じられた空間のなかに森と湖と小屋がある。地面は土で出来ており、天井は星空になっている。


「ひょっとして最深階?」


私がそう呟くと、ライルが答えた。


「そうかもしれない。索敵にはなにも検知されないが、用心しながら、あの小屋に行ってみよう」


私とライルは手を繋いで、小屋へと歩いて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る