ダンジョンで一回り年下の彼女と同棲生活始めました

もぐすけ

第一章 イグアスのダンジョン

第1話 二人の出会い

「ちょっと何するのよ」


いきなり後ろから蹴られて、私は転んでしまった。


転んだ拍子に下着が見えてしまったようで、


「おっと、こりゃあいいや」


と下品にはやし立てるのは、5人の男たちだった。


ここはダンジョンの地下4階だ。助けを呼んでも無駄だろう。私は観念して、持っているものを全て冒険者たちに差し出した。これで見逃してもらうしかない。


「ほお、なかなか持ってるじゃないか。次からはあまり持って来ない方がいいぞ」


全員が下品に笑っている。私は悔しくて泣きそうになるが、こいつらの前では絶対に泣いたりするもんか。


もう冒険者のことなんてどうでもいい。問題は1人でどうやってこのダンジョンから脱出するかだ。


「なによ。もう用は済んだでしょ。さっさと消えてよ」


男たちが私のことをねっとりとした目で見ている。やはり目的はそれか。


逃げよう。


私は一目散に逃げだした。


「おい、こらっ、逃げんじゃねーぞ」


ダンジョンで走りだしたりするのは自殺行為だ。魔物をおびき寄せてしまう。


しかし、そんなことには構っていられなかった。冒険者たちが猛然と私を追ってくる。


あそこの角を曲がれば、セーフティゾーンがある。ほかの冒険者がいるかもしれない。


私はセーフティゾーンに飛び込んだ。セーフティゾーンは黒い壁に囲まれた10メートル四方のキューブ型の空間だ。


よかった、1人いた。


「すいません。私は魔力売りなのですが、客の冒険者に襲われていて、助けてください」


「……」


「すいません!」


「うるさいな、聞こえている」


この人、かなり臭い。髪はぼさぼさだし、髭もぼうぼうだ。


(お風呂に何日も入っていないんだわ。まずい、もうすぐあいつらが来る)


勢いよくドアが開き、冒険者5人がセーフティゾーンに入ってきた。


「ルシアだっけか? 逃げても無駄だよ。それともあれか、セーフティゾーンの方が落ち着いてできるからって誘ってんのか、お前?」


「おい、なんか臭くないか?」


「ほんとだな。ルシア、お前、ちょっと走ったぐらいで、こんな臭いさせて。ちゃんと風呂入ってんのか? 魔力売りがいくら不景気だからって、風呂ぐらい入れよ」


冒険者からは臭い人は私の陰になって見えないようだ。


「いいねえ、俺はそっちの方が興奮するんだよ」


冒険者5人がいっせいにとびかかってきた。


すると臭い人が早口で話しかけてきた。


「おい、お前、魔力売りといったな。俺に魔力を寄こせ」


私は夢中で臭い人に魔力を提供した。


セーフティゾーンでは攻撃魔法は無効化される。臭い人は何をする気だろうか。


突然、天井から猛烈な勢いで水が落ちてきた。まるで部屋のど真ん中に突然滝が現れたかのようだ。


冒険者5人は水に直撃され、私たちとは反対の方向に流されていく。


大量の水がセーフティーゾーンを瞬く間に満たしていき、もうすでに水位が天井にまで届きそうだ。


冒険者たちは水面に顔を出して必死で呼吸をしていたが、部屋が水に満たされてしまい、パニックになっているようだ。


私も水没しているのだが、なぜか問題なく呼吸出来ていた。


男のうち、1人がセーフティゾーンのドアの方に向かって泳いでいったが、ドアに泳ぎ着く前に水流に流されてしまう。


私たちの方に泳いでくる冒険者もいたが、水流で押し戻されてしまうようだ。


今、気づいたのだが、私の魔力が継続的に吸われている。あの臭い人がこの水の魔法と息を吸える魔法を出しているようだ。


気になって臭い人の方を見てみると、なんと水の中で頭を洗っていた。


その後、服を脱いで、上半身を手でゴシゴシ洗っている。


あの臭い髪と体を洗っている水の中に自分がいるかと思うと、少し気分が悪くなった。


でも、命の恩人なんだから、感謝しないといけない、と思っていたら、今度はズボンまで脱ぎ始めた。


私という若い女性がいることをまったく気にしていないようだ。


とうとうパンツまで脱いで、あそこをゴシゴシ洗っている!


ちょっと、勘弁してよ。私も同じ水につかっているのよっ。私は汚水が目に入らないように慌てて目を閉じだ。

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