羅生門の鬼-兵庫県警組織犯罪対策課・古谷善太郎-
卯月 絢華
Phase 00 序章 -Introduction-
【
――今昔百鬼拾遺 雨
【準暴力団等の動向と特徴】
暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の事件を起こしている例がみられるほか、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活発化させている。こうした集団の中には、暴力団のような明確な組織構造は有しないが、犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在しており、警察では、こうした集団を暴力団に準ずる集団として「準暴力団」と位置付けている。
準暴力団等は、犯罪ごとにメンバーが離合集散を繰り返すなど、そのつながりが
準暴力団等の中には、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動によって蓄えた資金を、更なる違法活動や自らの風俗営業等の事業資金に充てるなど、活発な資金獲得活動を行っていることがうかがわれる集団が数多くみられる。また、資金の一部を暴力団に上納するなど、暴力団と関係を持つ実態も認められるほか、暴力団構成員が準暴力団等と共謀して犯罪を行っている事例もあり、このような準暴力団等の中には、暴力団と準暴力団等との結節点の役割を果たす者が存在するとみられる。
――令和4年 警察白書
僕は、鬼だ。
本来、刑事と言うのは犯罪者と言う名の鬼を
今、目の前には半グレ集団のリーダーがいる。
銃口を、神戸羅生門のリーダーへと向ける。僕が痛めつけたから、リーダーは荒い息遣いで僕を
「最後に、何か話すことはないのか」
「お前に対して話すことなんて何もねぇよ」
「だったら、死ぬだけだな。お前たちがやったことは死刑が
「それだけは厭だッ!」
「そうか。命
僕は、拳銃の
一応、万が一の場合に備えて拳銃は携帯しているが、相手に向けての発砲は
弾丸が、相手の胸を目掛けて発射される。
「ぐはァッ!」
神戸羅生門のリーダーだったモノが、その場に倒れ込む。血溜まりが、どくどくと僕の足元へと広がっていく。当然、僕も返り血を浴びている。半グレと言う言葉は、現行の法では裁けないから英語で灰色を意味するグレー、そして愚連隊との造語から来ていると言われている。しかし、その血はとても赤黒く感じた。
サイレンが鳴り響く。どうせ、僕は逮捕されるんだ。ならば、殺人罪として逮捕されるべきだろう。
パトカーから誰かが降りてくる。それが、上司の警部である事は分かっていた。
部下の刑事が、僕の手に手錠をかける。
「
そして、僕は刑事の身でありながらそのまま兵庫県警へと送還された。
兵庫県警に到着すると、僕は取調室へと入れられた。当然、鍵はかけられている。
取調室という
大泉警部の低い声が、取調室に響き渡る。
「古谷君、
「矢張り、相手が悪人であっても人を殺すことはいけないことなんですね」
「そうだ。君がやったことは大罪だ。殺人罪だと、最低でも5年は塀の中に閉じ込められることになる」
「5年か。刑期を軽くすることなんて、出来ないですよね」
「そうだな……。では、君に職務復帰のチャンスを与えてやろう。ミッションは簡単。神戸羅生門の内部へ潜入するんだ。彼らは裏社会で数々の
大泉警部からの提案に対して、僕は疑問を呈した。
「僕に潜入捜査官が務まるというのか」
しかし、大泉警部からの答えは意外なものだった。
「君は兵庫県警組織犯罪対策局組織犯罪対策課の刑事。兵庫県警で一番激務と言われている部署だ。それぐらい、
その言葉に、僕は正答するしか無かった。
「……。分かりました。やってみます」
僕は、潜入捜査官として神戸羅生門に潜入する覚悟を決めた。当然、僕が
「では、古谷君。後は自分の好きなようにしたら良い。ただし、自分がサツの犬であるという匂いは隠すんだ」
――僕は、吸っていた
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