大好きな作品にファンレターを書いたのに感想を受け付けていませんって出てきちゃうどうしたら良いんだろうって思っていたらとんでもない事になっちゃった。

水無月 一夜 みなづき ひとよ

大好きな小説の世界へ

第1話 虐められ体質の私に降って来た驚きの出来事

 山田香里は自称不運の女でした。


中学一年の時に虐められてから人間不信になっていたのです。

 ある時、西田健太君が香里を守る為にクラスのみんなの前で堂々と告白をしてくれました。

香里は、これは罰ゲームか何かで、西田健太が私に告白して来たのだと思いこんでいました。

 優しい言葉を掛けられても、決して信じようとしませんでした。

いつかきっとフラれると思って、10年間も距離を置いて付き合っていたのでした。

西田健太君は雨の日も雪の日も毎朝迎えに来てくれて、ほぼ毎週デートに連れて行ってくれる、とても優しい恋人でした。

西田健太君は上京して有名企業に就職し、山田香里は地元の零細企業に就職し総務課に勤務しました。

しかし、総務のはずなのにほぼ一日おきに休日までも営業の接待に駆り出されていて、上京した西田健太との電話すら出来ませんでした。


昨日も営業から「お前が来ないと、お得意さんの機嫌が悪くなるから会社の存続の為にも必ず来い」と、定時で上がろうとしている所を強引にお得意さんとの接待の為に連れて行かれてしまったのでした。


◆  ◆  ◆


「うわ~ オリーちゃんどうなっちゃうのかなぁ。。。」


私は、通勤の運転中なのに、出発前に読んだ物語の世界の主人公に思い入れ過ぎて、涙が溢れて前が見えなくなっていた。


半年ほど前から、ライトノベルサイトに毎朝投稿されている小説を読むのが日課になっていた


特にこの数ヶ月、ほんわかした世界観が特徴のこの作者さんのお話が好きで、毎朝新しい話が投稿されるのを楽しみにしている。


「危なかったわぁ」路肩に停車して感情移入し過ぎた事を少し反省する。


中学校一年の時に虐められて、その時罰ゲームか何かで出来た彼氏は10年も一緒に居たけど、半年前突然いなくなった。


毎日家まで迎えに来てくれる、形だけの彼氏持ちだったけれど、手を繋いだことも数回と言うか、毎日フラれる不安しかない10年だった。


大学を出て地元の小さな会社に就職して総務の仕事自体は順調だったけど、二日に一度近いペースで営業さんの接待に付き合わされて深夜まで、下手すると始発時間まで酔っ払いの相手。


女子社員は私の他にもいるのに声を掛けやすいのか、いつも私が接待係、平日だけならばまだしも、最近は休日まで駆り出されてしまっている。


自分は営業じゃないって大声で言いたかったけれど、いつも断れない自分に嫌気がさしていた。


大学時代には彼氏は東京の国立大学、私はそのまま地元の私立大学だったので、年に数回会う程度に減っていたけれど、連絡は毎日してもらっていた。


社会人になってからは、彼氏が休暇の日程を送ってくれているにもかかわらず、私の日程が全く分からないというひどい状況なので、まったく会えなかった。


しかも営業さんの実績が上がっても私には何のメリットもない。


会社では飲めない事にしているから、今の所それだけでも助かっているけど、飲まされるようになったら、本当に過労死しちゃいそうなこのごろ、寝不足が酷すぎる。


で、実生活に嫌気100%の気分の時に出会ったのが、ライトノベルでした。


最近は、この作者さんの作品の中でも、特にオリーちゃんが出て来るこの物語にハマってしまって、日常生活そっちのけでオリーちゃん一筋なのでした。


どれくらいハマっているかって言うと、休みの日は第一話から最新投稿迄を全話読み返す。


休日の食事は、物語に出てきたメニューだったり、物語からイメージした料理を作っているし、


リビングルームは物語の舞台を勝手にイメージした家具や鉢植えに変えてしまったくらいかな。


書籍化されるって書いてあったから、保存用と読む用それぞれ二冊ずつ購入予定


既にママゾンで予約をしてあるのだ。


もしアニメ化されたらDVDも間違いなく買うと思う。コスプレもしてみたいけど、まだ挿絵とか無いのと服装の描写が無いので、どんな格好をしているのか想像もつかないのです、残念ながら・・・


もう恋愛に鈍感な主人公オリーちゃんの動向が気になって、通勤の運転中も、オリーちゃんの事が思い浮かんでしょうがない。


会社のお昼休み、お弁当を食べながらオリーちゃんを思い浮かべる


そっ そうだ、この物語の作家さんにファンレターを書こう


普段スマホしか使わない私は、その日は帰宅して、久しぶりにパソコンを起動した


なんで久しぶりかって言うと、忘れもしない半年前、彼氏が私の家で遊園地のチケットを予約するって言いながら、私がトイレに行っている間に忽然と居なくなってしまったから。


靴も鞄もそのままに、居なくなっちゃったので


事件かなって思ったし、警察に連絡しようかなって、心配だったんだけど、彼の鞄の中には、次のデートの後、私に出す別れの手紙があったのよ。


東京に住んでいる共通の友人にも別れる決心をしてたって言う話を聞かされちゃったし、手の混んだ芝居で、私の前から居なくなったのねと、諦めたってわけです。


まぁ10年も毎日毎日、今日こそフラれるんじゃないかって思っていたのだから、フラれて当然だったかなとは思ってる。


そんなわけで、たまたまネットで読んだ漫画が面白くて、原作が読みたくなって探したらそれがライトノベルだったということで、それ以来むさぼるように、ライトノベルを読む生活になってしまって


生きている人間には興味を無くして、ラノベの世界に没頭してます、


主人公は女の子だけど、変な男より良いじゃないって事です。


そうそう、今夜は台風の影響で前線が活発化して凄い雨になるらしいから会社から早く帰れってアナウンスがあったのです。


車でいつものショッピングモールに行こうとしたら駐車場待ちの車が長蛇の列だったので、諦めて次に向かったお弁当屋さんも早仕舞いしちゃっていて、


結局、コロッケが評判のスーパーでコロッケを沢山売ってたから、コロッケを買って来たのよ。


しょっちゅう接待があるので、夕食の材料を用意しておいても作れないで痛んじゃう事もあるから


平日は勿体ないけど、買って食べることが多くなってました。


ホントはね、ぬか漬けとか自分で作りたいなぁって思ってるんです。


早く帰れたときは自炊するんだけど、今日はほら、ファンレターを書きたくなっちゃってるからね。


料理の時間をお手紙の時間に回したいって事です。


昼休みにもラノベを読んでいたせいか、スマホは充電が切れちゃったので、帰宅して直ぐにスマホを充電に繋いで、部屋着に着替えて


久しぶりにパソコンの画面を見つめる。


危うくパスワードを忘れそうになっていたので、いけない事って知ってるけど、パスワードを附箋に書いて画面の横に貼り付けました。


何度も、何度もオリーちゃんへのラブレターじゃなくって作者さんへのファンレターを書いては消して書き直し、やっと、まともっぽい文が書けた~って事で、ライトノベルのサイトを開いた・・・


スマホより画面が広いから、パソコンはやっぱり読みやすいよね。


ついつい一話目から読みそうになるのを堪えて、最新話が載っていない事を確認。


今朝も読んだ最新話を読み返してニマニマする。


改めてオリーちゃんの素晴らしさに感動。



今度の週末は、オリーちゃんのコスプレでもするかっ♪



と、挿絵も服装の描写も無いから滅茶苦茶勝手にオリーちゃんの服装を想像する。


末尾までしっかりと読み終わったので、感想を書くをクリックする


ん? 2回クリックする んん?


何も反応が無い事に慌てて、まさか壊れたんじゃないかって焦った。



人間慌てると、ろくなことをしないもんで、焦りまくって、友人に電話しそうになってた。



でもちゃんと気が付いた、自分偉いっ「感想は受け付けておりません。」って書いてある



自分偉かったけど、ショックは大きかった。


パソコンの前で放心する私、そうだよ、折角書いたオリーちゃんへのラブレター


オリーちゃんの似顔絵、まだ書籍出て無いけど、やっぱりファンだったら、オリーちゃんの絵くらい自分で描けなきゃね。


作者さん・オリーちゃんに手紙を渡せない、そんな重大事態が起こっているというのに、防災無線がなにか言ってる、だけど! それどころじゃないのよお!


雷の音がして、部屋が真っ暗になってしまったけど、何故か動き続けているパソコンに向かって




妄想する




私がハッカーだったら、このサイトの中に入り込んで、作者さんにメッセージを出しちゃうのに



ううん、作者さんじゃなくって、オリーちゃんに直接メッセージを渡しちゃいたいのさ



停電してるのに、延々と物語を読んでいると段々と雷の音が近くなってきた。



そしてドーンと凄い音がして部屋の中が真っ白になった、マンションに落雷直撃したと思ったけど


次の瞬間森の中にいる事に気が付いた。


右手にはマウスじゃなくて、机の脇に置かれていた筈のコロッケの袋が握られていて


雨は止んでいたっていうか、雨が降った形跡はなかった。


眠気に負けて、寝落ちしたのかな? っていう事は夢の中?


そんな事を思いながら、コロッケを一口食べてみる



うん美味しい、冷めても美味しい


これは、夢じゃないね、と自覚する



そんなに異世界転生物は読んでないんだけどなぁ


って言うか、私そのままだし、転生じゃなくて、召喚されたって奴かしら


って事は・・・やだぁ、私が聖女なの♪




なんかそんな話しあったわよね。


でもさ、召喚だったら目の前に神官さんとかいたりしないの?


っていうか、それだったらさ、こんな森の中じゃなくてさ、王城の中とかだよね。



って思ったら、不安しかなくなってしまいました。


っていうか、部屋の中だったからよれよれの薄い部屋着だしね。



思えば中学生の頃から、冴えない容姿でずっといじめられてきて、


社会人になっても接待続きで会社と家の往復だけだったもんなぁ


最近は心の支えのオリーちゃんがいてくれたから、幸せだったけど



もしかして、ここってオリーちゃんの世界なのかなぁ、うふふオリーちゃんに会いたいな。



一人でコロッケの袋を握りしめげニマニマしていると、後ろから草を分ける音がした。


「ハニョホニャホニャ」なにか叫ばれた。




次の瞬間、首元に大きなナイフが突きつけられていた。


「うわっ、ちょっとなにすんのよ、危ないじゃない」猟師風の格好をした3人の男が前と左右に居て今にも襲われそうな状態になりましたけど、しかもこの3人の男達、



さっぱり分からない言葉で、なにか言い続けて、今は首とお腹にナイフが突きつけられている。



部屋でパソコンに向かってくつろいでた格好のままだから薄着だし、裸足だし


こんな山の中で逃げられる可能性0パーセント




なんなのよぉ~ こんなのは、ほのぼのとしたオリーちゃんの世界にはないよって思った。



この絶体絶命状態、眠気でぼーっとしてた頭で、必死に脱出方法を考える



そっ、そうだ、私は名案を思い付いた



世の中やっぱり美味しい物に勝てるものはない


この美味しいコロッケを食べて貰ったらきっと、機嫌よくなって私を大事に扱ってくれるんじゃない?



私はこの10年で初めてのレベルの最高の笑顔を作ると、コロッケの紙袋を前に来た男に突き出した、「コロッケですどうぞ」



男は紙袋をひったくるように取ると、中を見る


何だか分からないようで、袋ごと投げ棄てた。



凄くショックで、大声出してしまった。


「ちょっと~、何で捨てるのよ、美味しいコロッケなのに~、食べ物を粗末にしないでよ~!」




大声で怒鳴られて、首にナイフを突きつけていた男が


「オメ、イホンジンカ」と口にしたような気がした。



ん? なんか日本語っぽかった?



「そ~私日本人だよ」って答えたら



もう一人ナイフをお腹に突き付けてた男も「イホン、コロスナイ」って言ってナイフを仕舞った。



ん、もしかして言葉通じる?通じた?


「こんにちはここはどこですか?」



話しかけてみたけれど、完全に無視された。


直ぐに腕を掴まれて後ろ手に縛られてしまった。



そうして後ろ手に縛られた格好で、しかも裸足の状態で、歩くように促されたから歩き始めたら、


落ちている小枝とか痛いのなんの



すぐに「痛いよ~」って叫んでしゃがみこんじゃった。


なんか刺さったでしょ絶対、もう痛くて歩けないって思っていたら



仕方なさそうに左にいた男が私をおぶってくれた。


本当になんにもない山の中なんだなぁって思いながら、


さっきからずっと同じところを歩いていない?



なんて不安に感じ始めた頃なんとなく、景色が変わり始めて


だいたい一時間ほど山を歩いたころに集落に着きました。



集落の人たちは私を見て、やっぱり何か分からない言葉で口々に何か言ってる。



あれぇ異世界に召喚されると、チート能力が働いて言葉が分かるんじゃなかったの?



こんなのやだよって思っていたけど、広場みたいなところに椅子とテーブルが用意されて、


スープみたいなものを出された。



手を後ろに縛られてるんだけどなぁ。って思ってたら


縄はほどいてくれた、そして横に大きなスプーンを置いて、食べるジェスチャーをしてくれた。


どうやら食べていいみたい。



一口口に入れたら、インゲン豆のスープっぽい感じで、すっごく優しい味でした。



夕食のつもりだったコロッケは、食べてないのにこっちの世界に来ちゃったから、


お腹空いていたので、はしたないとか思われようとなんでもいいから、パクパク飲んでしまいました。



そしたら、丸いお皿に、キャベツ?っぽい千切りと、添えられた赤かぶっぽい物と、黄緑色のレモンぽい物が添えられたコロッケが出された。



「あれっ コロッケ?」思わずつぶやくと


「オロッケ」「オロッケ」と言いながら、食べるジェスチャーで食べる事を促された。



美味しいって評判のスーパーのコロッケよりも、ずっとおいしい



周りがサクッとしていて、中のお芋がこれまた甘みがしっかりとあって、ジューシーで


口の中一杯に優しい味が広がります。



キャベツもどきの千切りがまた、すっごく甘みがあってシャキシャキしていて


ソース掛かってないのに、この美味しさ、これでソース掛けたらもう完璧でしょ



いやはや日本で食べるコロッケよりも美味しいです。


そりゃ~冷えちゃったコロッケ捨てられちゃうわ


なんか納得してしまった。

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