第5話「手紙と花束」

「しかし、どうやって謝罪しよう?

 彼女と顔を合わせると緊張して、また変な事を言ってしまいそうで……不安だ」


「オレにいい考えがあるっす。

 仲直りするために手紙を書くっす。

 手紙と一緒に彼女の好きな花なんかも添えるのもグッドっす!」


「手紙に花だな……!」


魔王様はポケットから紙とペンを取り出してメモしている。


「しかし女性に手紙など書いたことがない。

 何を書いたら良いのか……」


魔王様がまたいじけはじめた。


めんどくさいっすね、うちの魔王様は。


「安心するよ魔王様。

 こんなこともあろうかと、カトリーナ様が好きな便箋の柄を調べておいたっす。

 ついでに彼女が好きな花もリサーチ済みっす!」


「本当か!

 さすが風のラード!

 魔王軍一の情報通だな!」


そんな、魔王様褒めすぎっすよ。でももっと褒めてもいいんすよ!


「カトリーナ様が好きなのは白地に桃色の小花柄の便箋っす!」


「なるほど、白地に桃色の小花柄……だな!」


「カトリーナの好きな花は白の薔薇っす!」


「なるほど、白薔薇……!」


魔王様がまたメモしてるっす。


「よし、白地に桃色の小花柄の便箋と薔薇を買いに行くぞ!

 しかし、どこに行けば手に入るのか皆目検討がつかない……!

 どうすれば……!?」


魔王様には女性向けの小物や人間界の花屋の場所を知らない。


ここはチョロい魔王様を利用してお小遣い稼ぎ……もとい、世間知らずの魔王様を手助けして株を上げるチャンス!


「お困りのようですね魔王様!

 実はオレ、ちょうど白地に桃色の小花柄の便箋と白の薔薇を持ってるっす」


「本当かラード!?」


魔王様がキラキラした目で見てくる。


鴨がネギを背負って……いや、魔王様がゆるい紐の財布を持ってやってきたっす!


「白地に桃色の小花柄の便箋1枚1億ギル、10枚一束で100億ギル。

 薔薇の花1本10億ギル、21本一束2100億ギルでどうすっか?

 ちなみに薔薇の花束21本の花言葉は『あなただけに尽くします』っす!」


「買った!!!!」


魔王様が即答した。


やはり魔王様はネギを背負った鴨!


「魔王様混乱してく単純な計算もできなくなっているんですか?

 便箋1枚1億ギルだったら10枚で10億ギル。

 薔薇の花1本10億ギルなら21本で210億ギルです。

 ちなみに便箋の相場は1枚50ギル、薔薇の花の相場は1本300〜700ギルです」









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