せめて人間らしく
「あいつのことが嫌いだ」とあなたがいうとき
あなたはまるでそれが常識かのように
「私も嫌い」と返ってくると信じている
だからわざわざ嫌悪感を表すことができる
俺のことが嫌いならそれはそれでいい
それは仕方のないことだからそれでいい
でもそれで俺の生活を阻害しないでくれ
どうか俺を殺さないでくれ
あなたが当たり前のように持っているもの、普通に言っていること、
それを俺も手に入れたい あなたがそうしているように
それは気に入らない、だってそれって生意気だ、とあなたは言う
そしたらもう弱者じゃなくなるから差別ができなくなると
そう他人が幸せになるのが気に入らない、と
“あの人たち”とカテゴライズすることで
あなたは俺を別の世界の住人だと考える
すれ違う すれ違う どこまでもすれ違う
あなたにはあなたの理屈があって
あなたにはあなたの都合があって
だからそれなら俺は打破の努力をしなきゃいけなくて
でもどうして俺だけが頑張らなきゃならないんだろう
“それ”を言われるのは嫌なんだ
どうしても嫌なんだ
だって人間の尊厳に関わるんだ
“それ”は受け入れられないんだ
気持ち悪いと思ってしまうのは仕方ない
だからいじめたいと思ってしまうのも仕方ない
自分と反対意見の人を叩いてはならない
だからいじめが嫌いだからっていじめをする人を叩いてはならない
“それ”は意見じゃなくて差別だ
だから絶対に受け入れられないんだ
差別とか人権とか
俺だって本当はそんなこと大したことじゃないと思いたい
だけど考えないではいられないんだ
独りでいても襲われる
“弱者は弱者らしく ものを言ったりしないように”
“俺はお前を殴ることをやめない
お前がなんとかすればいいんだ
”気持ち悪いと思ってしまうのは仕方ない
だから気持ち悪いと思われるのを耐えながら生きていけ“
どうか理由を教えてくれ
”こんなことを言ったら相手は傷つくだろう“となぜ思わない
どうか理由を教えてくれ
どうか俺に教えてくれ
差別も自由の一つなのかもしれない
でもそんなに差別がしたいの
「人権は尊重されるべきだ」
「でも嫌いな気持ちも尊重しろ」
「お前も誰かを嫌いだと思うだろう」
そうして差別の問題を好き嫌いの問題にすり替えて
環境と能力は平等じゃない
でも権利と尊厳は平等であるはずだ
そのはずなんだ
あなたがここにいられるように
俺もここにいたい
この世に必要とされて生まれてきたのだと信じたい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます