7‐6話

「ねぇ、虹?少しいいかしら?」

5人をそれぞれの家に送り終えてから家に戻ると、リビングの椅子に座っている母さんにそう声をかけられた。

「ん?どうしたの」

俺も返事をしながら、母さんの対面の位置に座る。


「あなたもそろそろ決心をするべきだと思うの」

開口一番、母さんはそう言ってきた。決心ってなんの決心だろう?俺は頭にはてなマークを浮かべる。

「もう高校生でしょ?だからねそろそろ真面目に考えて欲しいの」

母さんは、真剣な口調でそう言う。この口調だと、進路の話とかだろうか?確かに俺はまだあんまり進路のことは、考えてないけど。まだ、高校生になって2週間が経ったばかりだし、何も考えられない。


「進路のことなら、まだ考えられないかな。まだ高校生になったばかりだし」

俺がそう言うと、母さんは静かに首を横に振る。

「確かにそれもあるわね。けど、私が言いたいのはそこじゃないわ。もっと大事な話しよ」

「え?」

母さんの言葉に俺はビックリする。今現在、進路のこと以外でなにか考えなければいけないことなんてあっただろうか?先程解消したはてなマークが、再度頭に浮かぶ。


「これだけ言ってもまだ分からないようね。もう単刀直入に言うわ」

「う、うん」

頬に一筋の汗が流れる。な、なんだか緊張してきた。

ゴクリと喉を鳴らし、母さんの言葉を待つ。


「あなた、5人の中の誰を選ぶの?」

「………………………………………はぁ?」

母さんの言葉にポカンと口を開ける。何を言っているんだ、この母親は。

「は?じゃないわよ。いい加減決めるべきじゃないの?」

「え、さっきから何を言っているの?ホントにわかんないんだけど。選ぶってどういうこと?」

戸惑いを隠せない俺は、混乱した頭の中でも突出した疑問を投げかける。


「だーかーらー、5人のうちの誰と付き合って、誰と結婚するのかを聞いているのよ!」

「…………………………………はぁ?」

いよいよ意味がわからない。誰がいつ、5人の誰かと結婚するかってぇ?


「……いやいやいやいや。俺、5人の誰かと結婚するなんて言ってないよ?」

「………はぁ。あなた本気で言ってるの?」

ため息と同時に、心底呆れたような声で聞いてくる母さん。

本気も何も、全く意味がわからない。


「あなたねぇ!あの5人があれだけ好意を寄せてくれているっていうのに、いつまでもハッキリさせないじゃない!私もあの子たちも、もう我慢の限界よ!」

「……………………………………………はぁ?」

今日だけで何度目かわからない『はぁ?』が登場する。5人が俺に好意を寄せている?ありえないだろ。あの5人は『彩良5大美少女』だぞ?そんな人たちが俺なんかに好意を寄せているなんて嘘に決まっている。


「母さん、笑えない冗談はやめてくれ。5人もそんな風に言われたら嫌に決まっているだろ」

「冗談じゃないわよ!」

俺の言葉にすごい剣幕で反論してくる母さん。……今の言葉にボン〇レーを想像してしまったのは、俺だけじゃないよな?

「あなた、本気で気づいていないの?」

母さんの言葉に俺は、思考を巡らせるが、それらしき記憶は全くない。

「気づくも何も、俺告白なんてされたことないぞ?」

「あなた、もしかしてだけど、告白だけが好意の表し方だと思ってるの?」

「そんなことはないけど……………」

別に告白だけが好意の表し方なんて思ってはいない。ただ、それが1番わかりやすいと思っているだけだ。


「まぁ、いいわ。ただ、あなたが思っているよりあの子たちはあなたの事を好いてくれてるわ。もちろんLoveの方でね。そのうち、あなたもそれを思い知る時が来ると思うわ。」

「どういうこと?」

「それだけ、彼女たちが本気になるということよ。女の本気は怖いわよ?」


母さんの言いたいことは、何となくしか理解出来ていない。けど、これから恐ろしいことが起きそうだということは、母さんのニヤニヤした顔を見ていればわかる事だった。









〜第1章完~

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あれ、俺今日2話投稿するって言ったよな?このペースで大丈夫か?

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