第2話 「お前はなんて良いやつなんだ!」
「今日も、たくさんの嫉妬の視線から生き延びることができた………」
そう言いながら、目の前の机に突っ伏す。突っ伏したことで、安堵と同時に疲れも襲ってくる。まだ登校しただけなのにかなり疲れた………
あの後も、たくさんの嫉妬にまみれた視線を感じながらも、無事に自分の教室にたどり着くことができた。なぜかは分からないが、幼馴染5人と俺は全員同じクラスのため、クラスに入るまではずっと視線を感じることになる。………6人全員同じクラスってどういう確率だよ………
「虹くんや。今日も大変だったそうですな」
視線から開放された喜びを感じながら、束の間の休息を取っていると、後ろから少しふざけた口調の声が聞こえてくる。
「橙弥〜、助けてくれー。俺はいつまであの大量の嫉妬の視線に耐えないといけないんだー」
そう言って、俺は声をかけてきた男────桐谷 橙弥(きりがや とうや)────にすがりつく。コイツは、俺の唯一と言っても過言では無い男友達である。男友達が少ない理由は何となく察しがつくとおもうが、あの5人の美少女がいるせいで、誰も話しかけてくれないからだ。俺から話しかけようとしても、基本幼馴染5人の誰かに邪魔される。
「まぁ、そのうち収まるだろ。というか、そんなに言うならあの5人と関わらなければ良いだけだろ?」
「そんな簡単な話で済むなら、俺は今頃お前以外の男友達もたくさんいるだろうよ。アイツらは、簡単には俺からは離れてくれない。」
「それもそうだな〜。………あの5人はお前のこと、もれなく全員大好きだからな…………」
「なんか言ったか?」
「いーや、なんも」
橙弥のやつ、何か小声で言っていたような気もするが、そんなに気にすることでもないか。
「あー、桐谷くんだー!おっはよー!」
「おう、湯原さん。おはよう」
俺と橙弥が話していたところへ、朱莉が元気な声で挨拶をしながらやってきた。
そして、朱莉が来たということは他の4人も来るわけで…………
「おはよう。桐谷くん」
「桐谷、おはよう」
「桐谷さんー、おはようございますー」
「ん、桐谷。…はよ」
「おーう、みんなおはよー」
と、こんな感じでまたまた5大美少女が全員集まってきてしまいました。
俺と橙弥が友達であるということは、幼馴染の5人も全員知っているため、こんなふうに挨拶を交わす。橙弥も5人とよく話をしているのだが、コイツはあまり周りの視線を気にするようなことを俺には言ってこない。
「なぁ、橙弥?お前もこの5人と絡むと周りからの視線が気になるだろ?無理して俺や5人と仲良くしてくれなくてもいいんだぞ?」
俺と絡むことがなくなれば、橙弥も5人と関わることはなくなる。橙弥が少しでも周りの視線を気にしているのなら、俺との友達をやめてくれてもいい。橙弥もいなくなったら、また男友達がいなくなるが、橙弥の気持ちが優先だ。そう思い、小声で橙弥に提案をしてみる。
「何言ってんだ!俺はお前と友達になったことを後悔なんてしていないし、周りの視線が気になったりもしねー。だからお前は、俺の事なんて気にしなくていいんだよ!」
「橙弥……お前はなんて良いやつなんだ……!」
俺は、橙弥の言葉に感動した。コイツは、周りの視線なんか気にせず、俺と友達でいてくれると言った。男友達が少ない俺にとっては、その言葉はとても嬉しかった。
「……それにこの5人の恋愛模様は絶対最後まで見ておきたいし………」
橙弥の言葉に感動していた俺は、ボソッと橙弥が発した言葉に、気づくことはなかった。
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