ただの幼馴染だと思っていた美少女たちは、全員幼馴染では満足できない!
海野 流
第1章 5人の幼馴染と5大美少女
第1話 「5人の幼馴染と5大美少女」
「おい、見ろよ。あれが噂の………」
「あぁ、絶対そうだ。あの場所だけ雰囲気が違う」
周りからチラホラとそんな声が聞こえてくる。相変わらず、注目を浴びてしまう。ただ、昔からこんな感じだし、いい加減慣れてきた。
「彩良5大美少女…………」
こっちに視線を送ってきている取り巻きの中の誰かが、そんなことを言った。そう。さっきから周りの視線を集めているのは、彩良(さいりょう)高校に集う5人の美少女たちだ。
それにしても、さっきから周りの視線が痛い。もうちょっと周りの景色でも見たらどうなんだ。
「というか、あそこにいる男は誰なんだ?あの5大美少女全員と、仲良さげに話しているが」
また取り巻きの中の誰かが言う。多分、その男って俺のことなんだよなー。この5人と一緒にいる俺のことって絶対に好意的には映らないんだよなー。
「なんであんな冴えないやつが、あの5大美少女と仲良さそうなんだよ。あんなやつより、もっと良いやつはいるだろ。………チッ!」
………やっぱりそういう反応されるよな。オマケに舌打ちもついてきたし。俺だって昔は、この5人がこんな美少女になるだなんて思ってなかったんだよ……
そんなふうにネガティブになりつつも、俺────才川 虹(さいかわ こう)────は学校に向かって歩いていく。俺には、5人の幼馴染がいる。その5人は全員女の子なんだが、小さい頃から何かと俺にくっついてくる。今もそうだ。登校中も5人は絶対に俺から離れようとしない。
「おーい、虹くーん!さっきからボーッとしてるよー?大丈夫ー?」
「ごめん、朱莉。心配させたな。大丈夫だよ」
心配そうに俺の顔を下から覗き込んでくる美少女────湯原 朱莉(ゆはら あかり)────に俺は声を明るくして返事をする。朱莉は、俺の幼馴染の1人で、同時に『5大美少女』の1人でもある。茶色がかったボブヘアに朱色の瞳、小柄な体格で明るい性格から『太陽嬢』の二つ名を持つ。ちなみに、5大美少女全員に朱莉のように、それぞれの特徴を捉えた二つ名が付いている。
「大丈夫なら安心だよー!」
俺の返事に対して、本当に心から安心したような表情を浮かべて、朱莉は言う。
「はぁ、どうせ虹のことだから、また周りの視線でも気にしてたんでしょ?」
そういって、呆れたように核心をついた発言をするのは、5大美少女の1人、『氷結女王』こと空凪 蒼(そらなぎ あおい)だ。彼女は、朱莉とは対照的でクールな性格をしている。見た目も黒髪ロングヘアにすらっとした長身で、その眼には紺碧の色が宿っている。見た目も中身も朱莉とは真反対で、まさに『朱』と『蒼』である。
「気にするなって言ってもなー。気になるものは気になるんだよ。蒼もわかるだろー?お前たち5人とは違って、俺は別に容姿が飛びぬけて整っているとかそういうのはないんだよ」
「そんなことないわよ!」
俺の自虐に真っ先に反応したのは、蒼ではない。3人目の5大美少女、『仮面少女』こと氷室 紫夕(ひむろ しゆう)だ。彼女は、純粋な日本人だが、日本人離れしたきれいな白髪に加え、
「紫夕?そんなことないってどういうことだ?」
俺は疑問に思ったことを口にする。話の流れからして、もしかすると俺は容姿が整っているのか?!
「あっ、えっと、その………そ、そう!アンタが整っていないんじゃなくて、私たちが整い過ぎているのよ!」
ハハッ………無惨にも俺のかすかな希望は目の前で打ち破られてしまいました。俺は悲しいです。
「あら?それだと虹ちゃんの顔が整っているということを否定できていないのではないですか?……まあ、いいです。ほら虹ちゃん、私の胸に飛び込んできてください。私があなたのことを慰めてさしあげますよ?」
そうやって、母性全開で俺の事を慰めようとしてきているのは、4人目の5大美少女『聖母』こと遠山 翠(とおやま みどり)だ。彼女は、ウェーブがかったブロンドヘアで、エメラルドグリーンの瞳をしている。顔も童顔で幼さが残っているが、その母性だけはどの女子高生よりも強いだろう。現に今も、両手を広げ、顔には慈しむような笑みを浮かべており、いつでも我が子(俺)を受け入れる準備万端というところである。俺もその母性に負け、翠の胸に飛び込む────────
「はーい、ストップー。翠ー、母性にものを言わせて、合法的にコウのことを抱こうとしたらダメだよー」
翠の胸に飛び込みそうになった寸前、後ろから抱き寄せられる。
「コウも翠の母性に負けたらダメだよー。いつ襲われるかわかんないんだから」
「お、おう………」
危ない……あと少しで、翠の胸にダイビングするところだった。さすがにそれはマズイ。主に俺の男としての尊厳がマズイ。同級生の幼馴染の胸にダイビングなんて完全にアウト。親しき中にも礼儀ありだ。
「わるい、白亜。すぐ離れるからな」
そう言って、俺は後ろから俺のことを抱き寄せている少女────水無月 白亜(みなづき はくあ)────から離れる。彼女は5大美少女最後の1人で、『不思議姫』と呼ばれている。その二つ名の通り、彼女は基本無表情で幼馴染の俺でも何を考えているのかわからない。そんな白亜は、5人の中で1番小柄である。そして、琥珀色の瞳をもち、きれいな銀髪ショートヘアで前髪を下ろし左目を隠している。そのため、見た目もかなりミステリアスである。
「それにしても、お前たち5人ともすごいよな。入学して2週間で、学校全体に名前と姿を知らしめるだけでなく、5人そろって『5大美少女』の肩書きを背負っちゃうんだもんなー」
そう。俺たちはまだこの高校に入学して2週間しか経っていない。その短い期間で、この5人の幼馴染は、全員そろって『5大美少女』と呼ばれるようになったのである。
「別に虹以外の人に美少女とか言われても、嬉しくないもーん」
「そうね。それには同感するわ。特に下心を含んだ視線を向けられるのは、反吐が出るわ」
「そうね。アンタ以外の人に美少女とか言われても嬉しくなんてないわ。……べ、別にアンタなら美少女と言われたら嬉しいとか、そんなんではないからね!?」
「そうですねー。私としても虹ちゃん以外の視線はいりませんからねー。というか、ここまで言うのに、一括りに私たちのことを『5大美少女』でまとめてしまう虹ちゃんはいけませんねー」
「うん。コウはもっと、女の子の気持ちを敏感に察することができるようになった方がいいよ」
俺としては褒めたつもりなのだが、返ってきた言葉は否定だった。それに加えて、ちょっとだけディスられもした。
え〜?俺、なんか変なこと言ったかな〜?
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皆さん、こんにちは!初めましての人は初めまして!海野 流(うみの ながれ)です!
この度、新しい作品をスタートさせました。まだ、連載中の作品もあるので、そちらの作品との同時進行となりますが、できるだけ短い感覚で更新していきたいと考えていますので、よろしくお願いします!
「他人の恋路に敏感な俺。自分に対する好意には鈍感なようです」
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