第17話 容疑と冤罪②

ため息とともにティタンは教師陣にうながした。

「虚言癖がある。祖国に送りかえしてもらおう」


「えっと、あの」

教師陣は困惑するばかりであった。


双方の言い分が違いすぎるので、どう対処するか。


しかもティタンはミューズをすぐに連れて帰りたいと部屋を出たそうにしている。


男に襲われそうになったというアニスは、今やティタンに残ってもらおうと必死だ。


どちらの証言が正しいのか。


「まずは落ち着いて。皆椅子に座ってください」

副校長が座るよう促す。


「早く終わるようしっかり事実確認しましょう。不毛な言い争いは止めてください」

一つ一つ確かめるように話を進め始めた。


「まずはアニス様。襲われたのは本当ですか?」


「はい、腕を掴まれました。怖かったです。でもティタン様に助けてもらえて、嬉しかった」


「事実だけお話してください。感情の話は置いておいて。その男は知っている人ですか?」


「知らない人です、見たこともない」

ぶんぶんと首を横に振る。


「なぜあそこにお一人でいたのですか?」

アニスがいたのは人気のないところだった、しかも取り巻きもいない。


「散歩です。たまには一人になりたくて」

その言葉はどうとでも取れるようなものだ。


「では、ティタン様はどういった感じでアニス様を助けたのですか?」


「悲鳴が聞こえたため、駆けつけたらそれがいた。仕方なく助けたが、放っておけばよかった」

ミューズを膝にのせ、ソファに座るティタンは不機嫌だ。


早く帰りたそうである。


「どうしてそこを歩いていたのです?」


「ミューズに会いに図書館へ行こうとしたのだ。訓練所から行くときはいつもあそこを通る。皆は真っ直ぐ帰るから、俺たちくらいしかあそこにはいなかった」

通るのはティタン達くらいだそうだ。


「ではミューズ様。アニス様に男をけしかけた事実は?」


「ありません」

はっきりと言い切るミューズ。


アニス達は不愉快そうだ。


「嘘よ! ティタン様と仲良くするあたしに嫉妬したのでしょ。だからこんなひどいことを……!」


「証拠はあるというのですか?」

ミューズも冷めた口調だ。


何度言ってもとまらない冤罪の言葉に、うんざりしている。


「だって、その男がミューズに頼まれたって言ってたもの!」


「ホントにホントなのですか?」

マオはジト目で睨む。


「本当よ。だからミューズが真犯人よ」


「証言だけでは何とも」

どちらが本当であるとしても、このままにはしておけない。


「仕方ないですが、王室からの警備隊に要請しようかなと思います。そうしたら関係者の皆さんは、それぞれ部屋から出ないようにしてもらって……」


「なぜ被害者のあたしがそんなことを?そこのミューズだけが疑わしいはずですよ」


「私はしていません」

その時ガンガンと乱暴にドアが叩かれた。


「失礼します。容疑者の男を捕まえました」

ズルズルと男を引っ張ってきたライカが、ムスッとした表情で入ってくる。


護衛騎士として側にいなかったのはそうした事をしていたからだ。


連れてこられた男は必死で抵抗したのだろう、擦り傷や出血の跡がある。


「こちらはアニス嬢とともにこの国に来た者です、今回の不審者はこいつです」

ライカは非常に苛立っていた様子で男を放り投げた。

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