第14話 進級

レナンの卒業式が終わると彼女はエリックのいる王城へと移った。


これから本格的な王太子妃教育が始まるそうだ。


卒業式にエリックは出向き、見事なエスコートでレナンを連れて行ったそうだ。


そしていよいよ新学期。


魔術コースにミューズとマオが、騎士コースにティタンとキールが進んだ。


新たな生活に胸が踊る。


「こうやって、見学できるのは嬉しいな」


「ティタン様がんばってるです、去年よりまた体が大きくなったです」

学科が違いクラスは離れたものの、将来の騎士候補の訓練を自由に見られるのは嬉しい。


ありがたく見学させてもらうことにした。


将来の人脈作りや婚約者作りのため、垣根をなるべく作らないようにしているようだ。


ミューズ達はもちろんティタンを見に来たが、大半の女子生徒はキールなどの見目のいい騎士を見ているようだ。


(でも少なからずティタンを見ている人もいるわよね)

ちらりと横目で他の女生徒を見る。


将来の護衛騎士候補として、しっかり見定めようと見る者は多い。


……そうじゃない視線もあるようだ。


「マオ、あちらは?」


「アニス=フランク子爵令嬢です。確か隣国シェスタから来てるです」

ひそひそと話をした。


マオも気にしていたようで、話が早い。


「あの、見つめているよね……」


「はい、キラキラお目々です。まさかミューズ様以外でティタン様をあのような目で見る女性がいるとは」


「マオ?」

どういう意味かと問いたかったが、流されてしまった。


二人に気がつき、ティタンがミューズに笑顔で手を振っている。


振り返そうとしたが、それより早く先程の令嬢が大きく振っていた。


ティタンは気づかないようなので、ミューズも改めて手を振ると、にかっと嬉しそうに笑うとまた訓練に戻った。


「あたしに手を振ってくれたわ!」

と件の令嬢はキャアキャアと周りの令嬢と話をしていた。


ミューズとマオは複雑な顔をして視線を交わす。



「今日、見に来てくれたろ!凄く嬉しかった!」

王室寮に戻るなりぎゅうぎゅうとミューズを抱きしめる。


よしよしと手を回し、背中をさすってあげるが、ミューズの前では本当に子どものようだ。


「ティタン様、僕たちの隣で手を降っていた女性は知り合いですか?」


「いや? 誰かいたのか?」

目に入ったのはミューズだけのようだ。


一応説明だけはしておく。


「アニス……知らないな。仮に好意を持たれていても返すことはないが、気のせいじゃないのか?」


「まぁティタン様ですし、僕らの気のせいかもしれません。でも件の令嬢とは念のため二人きりは止めてほしいのです。冤罪怖いです」


「あぁ〜そういう事もあるのか。わかった、ルドかライカを俺の護衛として借りるぞ。誰かがいればそういう事は防げるだろうから」

今ままではティタンは強いのでミューズの守りとして二人をつけていた。


誰かがいるというのは証人となるため心強いだろう。


「勘違いならまぁいい。勘違いでなかった場合が厄介だな」

今までエリックがいかに大変だったのかを聞いていたので、女性問題の厄介さも身に沁みてわかっている。


まさか自分がとは多少思ったが、念の為だ。


「俺にはこんなに可愛い婚約者がいるのに知らないのかなぁ」

ミューズを抱き上げ、頬ずりをする。


「もう、すぐ抱っこするのやめて」

抱えられると顔が近くなるので、慣れてきてはいるが恥ずかしいのだ。


「そうなのです、去年は騒動もありましたし、クラスは違えどわかりそうです」

「折を見て聞いてみようかしら、私ちょっといやだもの」

小さい声で呟くミューズにティタンは歓喜で涙が出る。


「ミューズがヤキモチを……! 俺はなんて幸せ者なんだ」


「ミューズ様、大丈夫です! 何かあれば僕とティタン様で力づくで排除するです!」


「それは止めて」

止めるものがいない二人の暴走にミューズは苦笑いをするしかなかった。



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