第9話 ティタンの初登校

次の日ティタンは登校した。


体格も大きくとても目立っている。


一人だけ入学式にも出ず、後から登校を開始したというのもあるが、クラスでもぐんを抜いて長身なので目を引いてしまう。


ミューズの後ろに座っているが、別な意味で威圧感もすごい。


(もっと、落ち着いて)

ミューズは自分もプレッシャーを感じ、小声でそう話す。


「俺の不甲斐なさで嫌な思いをさせてしまった。今後はそんな事がないようにする」

表情からして、不機嫌オーラが出ていた。


腕を組み、周りを睨みつけていれば誰も近づきたくはないはずだ。


「周りも怯えているです。ミューズ様、早く宥めてほしいです」

手綱を任され、ミューズはそっとティタンの手に自分の手を重ねる。


「落ち着いてティタン、私は静かに過ごせれば充分なの。こちらから喧嘩を売るような真似はしないで」

軽い叱責混じりだが、ミューズの手の温かさに冷静さを取り戻し、深く呼吸をした。


「あぁわかった、やめておく。マオ、ぶちのめせという時教えてくれ。止める時はミューズに頼むように」

ティタンは両手で顔を押さえ、天を仰いだ。


何をするかわからない自分の扱いをミューズとマオ一任したのだ。


ミューズに何かあればとモヤモヤし、感情抑制が上手くいっていない事に、自分でも気持ちを持て余しているようだ。


「それでもダメそうな時は兄上に至急連絡してほしい。ミューズの事になると血が上ってだめだな」

まだまだ未熟な自分を恥じてしまう。


「こういうのはもう少しスマートにやらないといけないのに」


「そうです。エリック様みたいに証拠集めと周りを固めてからガツンと完膚なきまでに叩きつけるのです。感情に任せてだけはいけないのです」


「お願い、やめて…」

争い事が苦手なミューズはこれだけで熱が出そうだ。


今日の運動の時間は休ませてもらおうと考えていた。






今日はティタンが登校したためか、嫌味を言う様子は今のところない。


ただやはりひそひそと話しているので、本当に心に悪い。


ティタンについては自分の婚約者兼護衛だとクラスには話している。




「今日の基礎体力訓練はお休みさせてもらうわね」


「僕も付き添います。ティタン様頑張ってください」

ちょこんとミューズの隣に進み、さっさと行けと手を振る。


「なら俺が付き添うぞ」

隣にいたいティタンにダメだとマオも譲らない。


「ぼくは従者だからいいのです、何かあれば呼びます。ティタン様は強い護衛として、他の男が近づかないように皆との差を歴然にしてきてください。ミューズ様に手を出したらどうなるかと武力アピールなのです。ほら今もミューズ様を見てる男子がいますよ」

その言葉にティタンは鬼の形相で振り向いた。


なんの気なしに三人を見ていた者は視線を反らす。


「任せろ、力の差を見せつけてくる」


「無理しないでね」

ミューズの優しい声にティタンは跪く。


「大丈夫だ、それよりゆっくり、休んでいてくれ。何かあればすぐ言うんだぞ」

ミューズに見送られ、ティタンは駆けていく。


ひと通り基礎訓練が行われたが、ティタンは並外れた体力だ。


汗はかくものの涼しい顔をしている。




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