第5話原色の少女

 恋人たちが、クリスマスソングを唄う頃。

 僕は、うらびれたように背を丸め、コートのポケットに手を突っ込み、カラフルに飾られたもみの木を眺め、幻想の緑野を歩いていた。

 ポケットに入っている、携帯プレーヤーには最新のポップミュージック。僕も、ずいぶん年を重ねたものだと、実感した。あの頃流れていたロックンロール。ブルーでブランキーな街の上にかかる、虹のたもとに、七色の少女たちがいる。彼女たちは、気まぐれ。鼻歌を歌う僕。その横を通り過ぎていく七色の少女は、ちらりと僕を見て、目を伏せた。ほかの子とはちょっと違う苦悩に似たものを感じた。悪くはない。僕は、ちょっと、客観的に見過ぎていたようだ。

 音楽が変われば、世代の感覚も違う。

 でも、変わらないものは、情熱。

 姿、立ち居振る舞いは違えども、心の底にあるパールのような輝きを放つ元型の優しさ。きっと、弱さからくる共感であったしても、悪い気はなしない。

 孤独な僕を癒し、守ってくれた優しさは、クリスマスツリーに飾られた星や、ハートや、クマの人形、ベル、そういったものに、溶け込んでいる。

 お金とか、肉体とか、そういうものを越えた、本当の愛は、君の心に訊いてくださいと、僕は言いつつ、七色の少女を、見守っていたいよなんて言ってみたらレモンが訊きたくなった。

 

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花束 鏑木レイジ @rage80

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