第48話 お胸のお釣り

 魔王は手始めにアイオンに電撃の拷問を行った。しかし、なんの抵抗も見せなかった。磔にし、火あぶりを行った時もほぼ動揺を見せなった。ただ痛みに苦悶の表情を浮かべるが、声を上げたり絶望を見せることはなかった。


 おかしい。少なくとも、治癒魔法を自分にかける程度の抵抗は苦痛からしてしまうはずだ。

 それなのに、アイオンはむしろ攻撃を歓迎しているように無抵抗だった。


 となると、このまま続けるのは思うつぼとなる可能性が高い。


 はやるアポカリプスを宥め、再生魔法を終え2度目の火あぶりを開始する前にアイオンに直接問うことにした。磔にされたアイオンのいる位置まで浮遊し、顔を近づける。


「本当に来ないとはな。勇者の行動にはいちいち驚かされる」


「私にどれだけ拷問をかけても無駄です」


「なぜだ?」


「……」


 アイオンは答えない。魔王は、ふむ、と息を鼻からだし、顎に手を当てた。


「女神アイオンには痛覚がなく、苦しむ演技をしている。そもそも諦めている。死そのものがトリガーとなる何かがある」


 ゆっくりと言葉を告げた。最初の二つの答えには変化を見せなかったが、最後の質問のみ彼女は眉を一瞬ひそめた。

それを見逃す魔王ではなかった。


「死そのものがトリガーか。だが我々は勇者がくるまで拷問と回復を続けるといったはずだ。ずいぶんと余裕があるか、見当違いなのか」


 アイオンは表情を読まれていることに気づき、顔をそむけた。

 しかしそれは、読まれたくない何かがあるのと同義だ。


 勇者とセドナについても、時間稼ぎにすぎないことを何故かしている。

 アイオンに時差式の魔法でもかかっているのだろうか。魔王は下で待機する部下に声をかける。


「残留魔法に対する鑑定のスキル持ちはいるか?」


「なっ……」


 ビンゴだ。アイオンの反応を見て魔王はニヒルに笑った。


「わかりやすい小娘だ。可哀想なくらいにな」


 〇


 セドナはベッドに横たわったままボタンをはずし、神衣に守られていた女体があらわになる。


「勇者さま、私に跨ってください」


 こんな時なのに、それでも俺の心臓と相棒は強く脈打った。

 セドナにまたがると、俺の腰付近に両手の平を当てた。ジワジワとMPが吸いだされていく。


「どうぞ、揉みしだいてくださいませ」


「すまんアイオン! すぐいくからな!」


「あんっ」


 俺は懺悔とともに両手でセドナの乳をわし掴んだ。大人の男の手でも抑えきれずこぼれるその夢の塊は吸い付いて離さないようだ。俺は興奮しすぎて意識がかなたにとばないように、今に集中した。


「勇者様っ、すごいです、魔力が溢れかえってます!」


 腰に当てていた手が輝いている。MPがセドナにいきわたっている感覚がわかる。


「もっと強くもんでください!」


「こ、こうか?」


「そうです、すごい……!ビンビン来てますっ」


 俺はもうパンでもこねてるんじゃないかというほど揉みしだいた。セドナの疲れていた表情がみるみるうちに精気を取り戻していく。


「うおおおおおおお」


「ああっ、もっと!……んっ!」


「何をしているんだ貴様らは」


 はっ!また魔王の声がした。そうか見られているんだった。


「見たらわかるだろ、胸を揉みしだいてるんだよ!」


 しばしの沈黙が流れる。


「……まあいい。アイオンの時差式魔法は解除した」


「なん……だと」


「は、その反応。これで確定だ。自死以外でのアイオンの死がタイムリープの発動条件で、飛ぶのは勇者であろう。お前がくるまで、アイオンへの拷問と再生を続ける」


「やめろ! それになぜタイムリープについて知っているんだ! そんなことをしなくてもすぐに行ってやるから!」


「アイオンの拷問の最中に姉の胸を揉むバカの言うことを信じられるか」


「……っぐ」


 すみません、言い返せないです。


「魔法を解くまでのアイオンは叫び声一つあげなかったが、解いてからは良く泣いてくれるようになったよ」


「サタン!! 貴様どこまで我々をいたぶれば気が済むのだ!」


 セドナが強烈に叫んだ。


「勇者を殺すまでだ。早くしないと、ついうっかり殺してしまうかもな」


 ッブ、という断線音と共に魔王との対話は終わった。


「勇者様! 早く続きを」


 セドナが俺の両手を胸にあてがう。しかし、その手の力はさっきとは大違い、それどころかセドナの全身は力強く発光していた。先ほどの怒りの叫びといい、力が漲っているように思える。


「セドナ、ステータスを見てみてくれ」


「な、これは……! MPはすでに全回復し、ステータスに補正がかかっています」


 セドナは飛び起きた。

 HPはそもそも無限瞬間回復だ。気力とMPさえ戻れば、彼女は無敵に近い。

 嬉しい誤算だ。俺は一切MPの変化はなかった。気力も失っていないどころか、体感増えている。おっぱいは偉大だ。


「よし! 【戦いの唄】×10」


 俺は戦いの唄を詠唱する。必要なMPを一気に放出した上で詠唱すれば一度に重ねがけできることもわかった。これでセドナの速度強化についていけるはずだ。


「【小石召喚】×10。セドナ、この小石を可能な限り強化しながら向かってくれ」


「わかりました!」


 俺とセドナは急いで武器と防具を着て、神域を出る。最終決戦だ。

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