第27話 股間スタンディングオベーション
「だって今の会話、不吉です。だから、勝った時の前祝いってことで、今どうぞ」
俺は即座に立ち上がった。股間もスタンディングオベーションでバディの美貌と妖艶さを讃えている。
いわゆる死亡フラグというのがこの世界にもあるんだろう。
「いいのか?」
「好きな時に、好きなだけ触っていい約束もありますから」
耳まで真っ赤に染め、内股でモジモジしだした。何度でも恥じらいを忘れない乙女心からくる挙動が、俺の股間を熱くさせる。多分今股間を検温したら52度くらいある。
「右手でおっぱい、左手でお尻がいいと思うか? それとも右手でお尻、左手でおっぱい? いやいや、一旦両手でおっぱいを揉んだ後に両手でお尻を揉み、その後右手はおっぱいを維持して、左手でお尻を、いややはり左手でおっぱいを維持して右手かな? それと、正面からおっぱいで手を回してお尻なのか、それとも後ろから___」
「もう! 早くして下さい!!!!」
アイオンは俺の両手を掴み、自らの両胸に押し当てた。
「あんっ」
ポジティブサプライズ!!
両手の平がおっぱいを包み込む!たわわに実った重量感と弾む柔らかさに意識が飛びそうだ!
しかし、まだだ、ここから先に進む必要が俺にはある。呼吸を長くとれ、ゆっくりと息を吐き、短く吸い込め、興奮を鎮めるんだ。感動を抑えろ!
「スーーーーーーーーーーーー、ハッ、スーーーーーーーーーー」
「何してるんですか! 早くお尻も揉んでください」
なんてセリフだ。アイオンは早く終わらせたいから言っただけなのかもしれない。だがそんなことは関係ない。そのセリフだけで母なる海に還りそうだ。
まごつく俺をせかすように、右手をおっぱいから引き剥がし、一歩さらに距離を詰め、抱きしめる形になるようお尻に導く!
左手はおっぱいを包んだまま、右手がついにアイオンの右尻に___
「【風喰らう大蛇】」
空間を切り割く音と共に、強烈な打撃が俺を襲った。即座にアイオンを巻き込まないように手を離す。背後の木に吹き飛ばされ、叩きつけられた。さらに打撃を与えてきたであろう鞭が投げられ体に巻きつき、巨大な蛇に変化し牙をむいた。
「くははははは! なんてマヌケなんでしょう」
「ベルフェゴール! どうしてここに」
アイオンが距離を取り魔法杖を構える。青白く、それでいて爬虫類顔の痩せ型の男がそこに立っていた。
「私が城の周りを警戒しないとでも? 隠れて視察するならこの森が最適解ですからね、より一層警備を増やしておきました」
木々の至る所から大量の蛇が這い出てきた。囲まれていた。
「あまりにも予想通りで拍子抜けですよ」
幾千の蛇達とベルフェゴールは赤い瞳でアイオンを睨みつけた。
「な、身体が……動かない」
「ベルゼブブを城ごと瞬殺した魔法は対象範囲が広いため、距離が近ければ自分たちも巻き込まれるため使えない。そうでしょう?」
ヘビとベルフェゴールの目が赤く輝き続け、アイオンの自由を奪う。
顔を下げ抵抗するアイオンの顎に手を当て、無理やり顔を上げさせた。屈辱と怒りから顔を歪ませ、アイオンはベルフェゴールを睨みつける。
「は! 図星ですか。わかりやすくドジでマヌケでバカな女です。価値があるのは顔と身体のみ。少しは楽しませてくれるんでしょうね?」
ベルフェゴールが右手を虚空に振り上げると、新たに鞭が出現した。それを握りしめる。アイオンはその先の痛みを想像し、歯を食いしばった。
「アイオンに触るな」
「おっと、忘れていました、勇者もどきが居たんでしたね。あなたはそこで見ていてください。とっても楽しいショーになりますよ」
一瞥もくれぬままベルフェゴールは蔑んだ。その油断がチャンスだった。俺だって黙って見てたわけではない。
【戦いの唄】無詠唱×10が完了する。縛られていた蛇を引きちぎり、地面を蹴る。アイオンに鞭が当たる直前、俺の振り上げた拳はベルフェゴールの顔面に直撃する。
「オラァ!」
周りの木々を薙ぎ倒しながら、ベルフェゴールはぶっ飛んでいった。アイオンは拘束がとかれたのか、力が抜け後ろに倒れ込もうとする。背中に手を回し抱き抱えた。
「怪我はないか?」
「無事です。すみません油断しました」
「謝らなくていい。今終わりにする」
俺は吹き飛ばされたベルフェゴールの方に片手を向ける。
よし、城からは充分離れた位置でダメージから立ち上がれずにいるようだ。
アイオンのお尻とおっぱいを同時に揉む幸せを邪魔した罪は万死に値する。
「【雷神の鉄斧】」
雷雲が立ち込め、巨大なイカヅチがベルフェゴールを襲う。この後の城攻略と姉救出のため威力を抑えたつもりだったが、充分すぎるほどの破壊力だった。
ベルフェゴールがいた付近の全ては、跡形もなく消え去った。
俺は短時間の急激な魔力消耗の反動で力が抜けてふらついた。その体を今度はアイオンが抱き止めてくれる。
「凄いです守さん! かっこよすぎます」
アイオンはもうメスの顔をしていた。抱いてくれと言わんばかりだ。
俺は言葉を語る気力がなかったため親指と股間を若干立て、笑ってみせた。これで姉の救出終わったらまたおっぱいとお尻同時に触らせてくれるだろうか。
「本当に凄い、いや恐ろしい。ベルゼブブが葬られるわけですね」
アイオンと俺は声がした方に振り向くと、木の裏から現れた無傷のベルフェゴールがパチパチと塵が舞う攻撃跡を眺めていた。
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