第15話 アイオンの悶々
私は今、勇者さまの作って下さったロテンブロというものを堪能しています。
私にこんな女神生が待ってたなんて、思いもよりませんでした。
守さんは本当に優しくて、かっこよくて、ちょっぴり、いや大分おっぱいが好きすぎますけど、心優しいお方なのです。
いつだって、私を気遣ってくれます。
私の体を好きにしていいと、代償として命を差し出すよりマシかと思い告げました。
とっても恥ずかしかったな。
でも、初めて触れて貰えた時、嬉しくて嬉しくて、涙が出そうなの堪えてたっけ。
それに、いつでも無理やり押し倒される覚悟で告げたのに、胸を触るだけでも許可を取るんですよ。自身の命と引き換えにとった約束なのに、おかしいですよね。
私が一人で戦うと言った時も、全てお見通しでした。
本当は、嫌だった。孤独と恐怖で胸がいっぱい、今にも大声で助けてって、泣き出しそうだった。
でも、そんな時、私が一番欲しい言葉をくれました。まるで夢みたいでした。
すぐにおっぱいでしたけどね。
もう少しムードを維持して、何も言わずに揉んでくれたらいいのに。
あ! 嘘です創造神さま!
お許し下さい、私は聖女神です。いやらしい気持ちなんてまったく。ええ。無理やりされたとしても、私の心の貞淑は創造神さまのものですから。
はあ。
私は守さんの善意に甘えている。
本当は守さんが、私とこの世界のために戦う必要なんてないんです。
私を生贄に勇者となれば、創造神様の加護を受け、苦労することなく世界を救い、その後の世界の王となれるのに。
元いた世界は、モンスターなど存在しない、平和な世界だった聞きました。きっとゴブリンとの戦闘も怖くて、痛くて、仕方なかったんでしょう。
私ったら本当にドジで、気が使えなくて。
なんで私のことを見捨てないでくれるのか、不思議なくらいです。
あら、いけないですね。一人になるとマイナス思考になっちゃう。
そういえば守さん、さっき私の体に触れてこなかったな。
絶対触ってくると思ったのに。
わ、なんだか触ってくれるのを期待してたみたいで、はしたないですね。
私はロテンブロに顔を半分しずめて、ブクブクと空気を吐き出しました。
創造神さまに今の心の声が聞こえていませんように。
でも、私が隣にいってから、凄く悲しそうな、辛そうなお顔をしていました。
近づいたこと、いやだったのかな?
お休みなさいと告げた背中を思い出すと、なんだか胸が痛くなります。
私は心配になって、こっそり勇者さまの寝室に向かいました。
寝ているかもしれないので、おこさないようにゆっくりと。ゆっくりと。
すると、鼻を啜る音が聞こえてきました。
乾燥が足りなかったかしら?風邪ひいたら大変、ただでさえお召し物がないので。
お召し物…? そういえば、私裸できちゃいました!
慌てて神衣を取りに行こうとした時
「クソ……なんでだよ。ごめんな。ううっ」
勇者様の声が聞こえました。
かぼそく、震える声で。
寒くて鼻をすすっていると勘違いしていた私を罰してください。
泣いていました。あの心の強い、自分よりも私を優先してくれる守さんが。
どうしていいかわからず、気付かれないように近づき顔をのぞくと、守さんは泣きながら眠っているようでした。
本当に私はダメな女神です。
自分を大切にしてくれる、私の大切な人の悲しみ一つ気付けない。
それどころか、そんな時でも星空をプレゼントしてくれて、私はただただ舞い上がって。
違う世界に突然召喚されて、孤独と恐怖に襲われているに違いありません。
私は、前回までのタイムリープの中、一人森の中で魔物に怯えながら、魔王を討とうと泣いていた日々を思い出しました。
私は一番大切な人に、自分が味わった孤独を与えてしまった。
それどころか、守さんはこの世界で私しか知り合いがいないのです。もっともっと、辛く、寂しかったことでしょう。
ごめんなさい、もうそんな思い、決してさせません。
勇者さまのお部屋に入るのは失礼かと、いらぬ気を使っていました。
私は布団に入り、勇者さまの広い背中に抱きつき、眠りが良くなる魔法と共に、首に触れる程度の口づけをしました。
泣き止むまで頭を撫でると、呼吸が安定し、魔法も効いているのかスヤスヤと眠りについたようです。
よかった。私も誰かと一緒に眠るなんて、子供の時以来です。姉と妹に挟まれて、一緒に過ごしていたあの日。
いけない、またお姉様と妹が心配で焦り出しそうに。勇者さまの力添えがなくては助けられません。まずは勇者さまに強くなって頂かなくては。
利用するつもりはなくても、そうなってしまう私をお許し下さい。
せめて、この世界で少しでも幸せに過ごせるように、私の全てでお支えします。
この戦いが終わり、聖女の役目が終わったその時には、お望みのこと以上の全てを……
勇者さまのおそばにいる安心感からか、私もとっても眠くなりました。
お休みなさい、良い夢を。
勇者様、いや、私の王子様。
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