今世ではもう騙されな……凄いおっぱいと尻だ〜童貞おっさん、ハーレム無双出来るまでタイムリープして王になれ〜

君のためなら生きられる。

第一部 女神アイオン

第1話 その男、童貞につき

相沢守は妻の微笑みを後目に走馬灯を見ていた。

 思い返せば女運のないクソみたいな人生だった。


 17歳。

 初めてできた彼女との、キスの間際。

「ごめんなさい無理」

 と泣き出し、罰ゲームだったと告げて去っていった。

 知らない間にいじめに加担していた。


 20歳。

 大学のサークルで18歳の新入生に告白。

 奇跡的にOKをもらうが、俺が手も繋いでないうちにヤリチンに寝取られた。


 26歳。

 女性との出会いすらほぼなくなる。

 ガールズバーに同期から誘われ、通いだす。

 オキニの桃ちゃんに、私たち付き合ってるよね?と言われ有頂天だったが、同伴して金を落とすただの客だった。


 30歳。

 もうガールズバーにはいかないと決めていたが、キャバクラに誘われる。

 「キャバクラはガールズバーと違うか」と独り言をもらしながら、ほがらかに向かうとそこには天使が。

 もはやわかっているのにハマリにハマリ、貯金は底を尽き借金もした。

 借入が出来なくなると、他にお金が使える客に勿論とられる。


 34歳。

 なけなしの給料からデリヘルを呼び、オブラートに包むとあまり好みでない顔と体型と年齢の女の人と初行為。

 童貞のプライドからなのか、合体は愛する人と、とおっさんながらに思い、それ以上は進まず。


 38歳。

 婚活パーティで知り合った32歳の女性と付き合い始める。

 愛していた。宗教上の理由で婚前交渉ができず、この年まで処女だという。

 俺は信仰に関わらず童貞だったため鵜呑みにしてしまう。

 とんとん拍子で結婚し、初夜に誘ってみたが、初めてなので少しずつ進めましょうと言われ、キスで終わる。そして今。


 愛していた女性が俺の死を心底喜んでいる姿を最後に、その命と走馬灯を終える。

 出された食事に毒が盛られていたようだ。

 生命保険。つまり金のために騙されて、殺された。


 神様 もしも来世があるのなら。

 俺はもう騙されません、女性、いや女なんて信用しません。

 絶対の意思をもって誓います。

 なのでどうか、どうかせめて幸せな人生を送らせてください。

 悪いことはなにもせず、自分を犠牲にして人に尽くし、捨てられ続ける人生でした。

 

 ああ、体の感覚が薄れていく。視界は閉ざされ、心臓の脈動ばかりにフォーカスされる感覚もなくなった。


 これが、死か。


 無になるのか、大いなる存在に還って記憶をなくして転生するのか、また同じ人生を繰り返すのか。

 諸説あったが俺は無宗教だし、どうなるのか検討もつかない。

 しかし思考できるということは、意識はあるということ。

 暗闇の中、ただ考える。 


 まてよ。何も起きないぞ。


 まさか、このままか?

 死の正体は肉体の消失で、意識が魂?

 そんなバカな!せめて霊になって妻を呪わせてくれ!


 この世界を否定していると突然まばゆい光に包まれた。


 な、なんだ?ここが天国なのか?


 天国なら天国といってくれ!誰か!


 しかし俺はパニックとは裏腹に視界を得た。魂の状態でも見れるということは、やはりここは天国なのだろうか。


 ぼやける視界をこらす。上下左右の感覚が研ぎ澄まされていく。

 気づくと俺は、学生時代に社会の授業で見た、ローマにある某宗教の教会を思わせる荘厳なつくりの神殿の中にいた。


 床には俺を中心に巨大な魔方陣が描かれている。


「はあ……はあ……よかった、成功です」


 前方、魔方陣の端、玉座のある階段のすぐ下。

 声が聞こえた方に目を向けると、薄い銀色の衣装をまとった、絶世の美女がいた。

 決意と共に固くなる心と、アソコの熱の冷まし方を、俺はまだ知らないでいた。


 美女は某歌舞伎町No. 1キャバ嬢だったミリアちゃんがボストロールに見えるほどの美しさだった。

 というか某歌舞伎町No. 1キャバ嬢って何人いるんだ、唐揚げの金賞か?

 この子は賞を与えられる側ではなく、その美しさから死後、美しさを讃える賞の名前になる側だろう。


 髪は真夏蒼天の入道雲より純白、それでいて傷みは一切ない。

 しなやかに胸まで、流水さながら流れている。

 長いまつ毛は瞳の存在感を誇張し、大きな猫目は艶やかに濡れていた。

 すんと通った鼻筋に、小さな鼻と、産まれたての赤ン坊のように無垢な唇。

 大きくはだけた胸元は、その極上の膨らみを余すことなく誇示し、銀色の衣装の隙間から、一凛の淡いピンク色の花が透け咲いていた。

 ギリシャの彫刻のようにバランスがとれ、それでいて華奢なくびれの中央には、控えめなおへそが呼吸とともに上下する。

 そのくびれの急斜をたっぷりと活用した魅力的な腰つきと、ほどよい太さを持つ太ももが、白ピンク色の肌に包まれ、神殿に漏れ差す太陽光を反射していた。


 その美女がだ。ゆっくりと俺の方へ歩み近寄ってくる。

 額は汗ばみ、表情は疲弊からか歪んでいたが、そんなものは彼女の美しさを否定する材料にはならなかった。


「私は平穏と時をつかさどる女神アイオン。あなたをここに召喚した者です」

 

 召喚陣の中に入り、背筋を伸ばすと、わずかに顔の角度を上げた。威厳を作りたかったのだろうか。そんなことよりも、だ。


 召喚?女神?


 どういうわけだ。

 天国じゃないのか?

 ふと視線を真下にやると、足があった。


「うわっ」


 情けない声が出た。どうみても生前の俺の体だ。

 年月をかけて育んだ、ぶよぶよのだらしないビールっ腹。

 不揃いなすね毛。

 うん、まあ俺の描写はいいわ。

 小太りのおっさんです。


「相沢守よ。この世界であなたは転生し、英雄としてこの世界を救うのです」


「へ?」


「私は10回のタイムリープを繰り返し、毎回違う勇者と共に世界を救おうと努めました」


「おっぱい大きいですね。何カップですか?」


「しかし、魔王軍の強さは異常です、何度繰り返しても返り討ちにあいます。私はかつてない魔力を込め、あなたを召喚しました」


「ぷぅう」


 屁で返事してみたが、無視された。


「これより私の全魔力と生命をあなたに捧げます。どうかこの世界を、救ってください」


 アイオンは両手を広げ、返事も待たずに呪文を唱え始める。

 脇の下を数刻みつめた後、深く息を吸い、申し上げた。


「嫌です」


「え?」


「だから、絶対嫌」


 断固、拒否だ。

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