第9話 もっとずっとぎゅっと抱いて


午前6時半、土方や鉄筋屋なら起きるには遅い時間帯。学生の俺はこんくらいに起きてる。・・・こされると行ったほうがいいか。


現在月日はGW前の4月の末日。学校に行くのにも少し慣れた。そろそろお気に入りの女子とさらにさらに関係を深めたいと思ったのでGWに何処かへ行こうとデートの計画を立てた。初デートはカエデちゃんとだ。男が街中を歩くのは滅多にないので護衛の増量は必須、左腕の中に注射でマイクロチップ的な物も入れて追跡出来る様にもした。母さんがゴネたが街中を女の子と歩きたかったので母親以上にゴネてナデたらなんとかなった。


んなわけで明日からは暫く休日になるので張り切って登校。配信もたまにやってるが現在チャンネル登録者数が6億2千万とか言うわけわかめな状態になっている。



ガラッ

「おはよー!」


「「「「「おはよー朽木くんっ!!」」」」」


2週間以上経つのに教室に入ると未だにチ◯ポが立つ。女子高の先生とか大変すぎないか?

まあ俺に対して皆は安定のガン見なので助かるんだが。


鏡花にセクハラしつつ席に座ると俺の丁度後ろの席の女子から話し掛けられる。彼女の名前は久藤彩愛くどうあやめ関西人だ。


「おはよ〜朽木くん、佐々木に触りすぎやで〜」


ニヤニヤと笑いながら俺に肩タッチしながら話す彼女。俺が童貞なら勘違いしてしまいそうな馴れ馴れしさだ。いや童貞なんですが。


「そうですっいけないことだと私も思います」


なんつって俺の席の近くに来て言ってくる女の子は緑髪おさげメガネ爆乳女子の委員長。名前はまだない。


「ハハハ、めんごめんご彩愛っちに委員長勘弁してちょ」


彩愛の肩に触れた手をナデナデしながら委員長のデカパイをガン見すると大概許してくれる、がこの日は何か違った。


「聞いたで朽木くんGW柿崎とデート?デートぉするんやって?しばいたろか?」


『ガタガタッ』


顔を若干赤らめながら脅してくる黒ギャル金髪大阪人と左側からイスがガタつく音が。なんでカエデちゃんとデートする事知ってるんだ。


「えーと?」


「聖夜くん私もデートしたいなっ」


「あんたは黙っときい」


「ハッハイッ」


のぞみんが便乗するも撃沈される。もうちょい頑張ってえやあ。


「ごっ!ごめん!朽木くん!嬉しくって私クラスチャットでお漏らししちゃったぁぁあ」


なんつって謝るカエデちゃん。お漏らし?見たいんですが。違うか。


「いや別に大丈夫だよカエデちゃん、てか彩愛っちはどうしたいん?カエデちゃんに攻撃するのはNGやで」


なんとなく関西弁ではなしてみる。

「クラス・・チャット??私そんなのはいってない」なんつってるのぞみんはほっとく。


「それは大丈夫ですよカエデちゃんは優しい子なので皆敵対しません。朽木くんには順番に私達とデートしてみてはと私達は愚考しました、どうでしょうか?」


「それな〜」


順番にデート?俺得しかないのでは?

「私は?めっちゃ叩かれるんだけど」つってるのぞみんは以下略


「いや、俺は全然良いけど護衛の手配とかあるしキツくない?カエデちゃんと行こうとしてるデートも1日だけだし」


「そこはわたくしにお任せになってくださいまし聖夜さん。佐々木家から護衛の手配を致しますわ」


「?そなのん?鏡花もデートする?」


「あらん、イケズなお方、勿論ですわ」


んなわけで鏡花、委員長、彩愛っち、お情けでのぞみんともデートする事が決まってイチャイチャしてたらお前ら〜席につけ〜このばかちんが〜という先生が来てHRが始まった。







GW初日になりこの日は朝から屋敷が殺気立ってた。メイド達と家族からの威圧が凄い。朝はスポンジまで参入してきて魂がでかけた。凪紗姉ちゃんとメイド長に行かないでと言われてもイッてしまう、いや行きたいんだ。イってるんだが。俺は出掛ける。

今日は彩愛っちとのデートだ。カエデちゃんとはGW真ん中らへんの日付に元々予定を立てていたのだ。彩愛っちとの待ち合わせは中野のブロードウェイ。中1の時にカツアゲされてから行ってねえなとぼんやり思った。


んなわけで中野へ。なにも見る所がないと思うんだが。玄関から出ると鏡花から送られてきたアフガンの傭兵部隊みたいな人達16人が待機してた。セ◯ムと名乗った隊員達は影から付いて来ますのでご安心を。なんて言われたので丁寧なお礼と丹念なセクハラをしておいた。



三戸さんの車で向かう車内。

助さんに聞いてみる。


「助さん中野ってなにかあったっけ?」


「中野にはモンモンダンジョンがありますね」ニヤリ


「モンモンダンジョン?」


「可愛いですよモンモン」テヘテヘ


「にゃるほろ」


照れてた助さんが可愛かったので見惚れてしまった。まさか俺がダンジョンマスターになるなんてこの時は思っても居なかった。




「おはよ!朽木くん」


「おはよー彩愛っちごめんね遅れて。てか私服めっちゃ可愛いじゃん」


「あ、あ、アホー!!!行くでえ〜!」


誰がアホやねん。アホな事言ったのだあれ?僕です。多分。腕を掴まれ引き摺られる僕ちゃん。護衛達は真後ろに着いてます。



少し歩いて落ち着いたのか彩愛っちは俺と腕を組みながらもしきりに髪を自分の指で梳かしてる。そんなに髪触るかってくらい髪を触ってる黒ギャル彩愛。目を見詰めて話すと髪を梳かす女、間違いなく女意識しちゃってます。間違いない。


「彩愛っち何処行くの?俺中野詳しくないんだけど」


「ああっ。中野って言ったらモンモンダンジョンやで知らん?」


「さっき護衛の人にも聞いたけど初耳。可愛いの?」


「そやで!ダンジョンだけど安心してええからなあ、佐々木がようけ護衛用意してくれる言うてたさかいに」


「・・・ダンジョン?ダンジョンあんの?」


「男でも興味あるやろ?モンモンダンジョンはカップルも来るからオススメやでっ!安心しいや」


「・・・」

マジかダンジョンとかファンタジー小説になってきたな。作者はいつも唐突にネタを変えてくるから困る。なぞ。


「しかしうちも鼻が高うなるわ、朽木くんと居ると道が出来るやんね。」


「う?うん」


「なんやねんそれ笑」


ダンジョンが気になって周りも話も見えてなかったんだが。てなわけでダンジョン前、ダンジョン前。

ぽっかりと空いた暗闇。ビルの隙間に暗闇のゲートがある。禍々しいんだが。


「え?これ?」


「そやで、中に受付有るから安心してな」


「朽木殿、私が先導します」キラリンコ


後ろでずっと黙ってた助さんが先導をする。流石に頼もしい。助さんと三戸さんが先に入り俺と彩愛っちが続く。暗闇の中に足を入れると一瞬の浮遊感の後に真っ白な空間へとワープした。



目の前に真っ白い空間が有るなと思っていたらそれは大きな白い獣だった。狼だ。狼と気付いたのは顔を向けて口を大きく開いたからだ。俺はパクリと食べられた。









:同時刻護衛視点


1階の広場にて聖夜が居ない事に、腕を組んでいた彩愛が疑問の声をあげる。


「あれ?朽木くん?」


「朽木殿!?!?」アセアセ


「異常事態発生だ。角村、朽木さんの場所は?」


「深部・・未達成エリア・・・」


「ぬわにぃっ!!?不味いぞ。角村何とかして・・・べないか?」


「私の名前を主が呼んでくれないと無理・・・」


「ぐぬぬっ。仕方がない正攻法で攻略するか。セロム隊の皆さんと協力して進めるぞ」


「三戸、セロムの人が20階層に行けるみたいだ、現在最高到達点は36階層らしい」ヒヤアセ


「ヨシッ。いくぞっ!」


「待ってえな!うちはどうしたらええ!?」


「すまんな今は一分一秒を争う、ここで待機してくれ。」


「うちは役立たずやな、わかったで頼んます!!」


「うん、これは多分迷宮の呪いだ。君が気にすることじゃない。ではまた後でな」


「ッ!?」



ゲートを使い20階層へと飛ぶ3人衆とセロム隊。総勢19人で怒涛の勢いで進撃した。




1時間で30階層まで駆け抜けた。フロアボス前に休憩スペースを設けて消耗した体力を回復するための小休憩だ。

助平が口を開く。


「なあ三戸、迷宮の呪いって本当にあると思うか?」


「ああ、600年前の文献に書かれてる奴をお前も読んだか?」


「読んだよ、イケメンが好きな迷宮の主は男を呼び寄せるって話だろ?」キラリ


「ハハッ。そうだ。面食いの呪い、なんて言ってた学者も居たが正しくそれだったな。この事件は学者さん達が喜びそうで今から頭が痛いよ」


「朽木殿が生贄になる、か」ギラリ


「ああ、立証するためにダンジョンに行ってくれなんて平気で言うような奴等だからな。ヨシそろそろ行くか、行けるな?」


「勿論さ、行こう」キラリ











:聖夜視点


ん?ここはどこ?わがしはだれ?

目が覚めるとタオルの上だった。

転生したのか?確か狼に食べられて、

気付いたら赤髪の貞子みたいな女が目の前に

死後の世界か、ここは


「おお、起きたか」


「あなたは?あ、おはようございます」


「うっ、うん。おはょ、大丈夫だったか?いや大丈夫じゃないよな、ここはあの銀狼の腹の中だ、私も食べられた口でさ、スキルのおかげで生活出来てるがもう3年もここの胃袋の中だ、笑っちまうだろ?いや、笑ってくれ、ソロでS級になって天狗になった私の末路だ、だがこんな私でも神は見てるんだな、こんな美少年が飛び込んでくるんだもんな、なに、大丈夫だ目を閉じて天井の血管でも眺めてたらすぐに終わるから、な?」


なんつってめっちゃ早口で喋りながら服を脱ぎだす目の前の女性。なに俺狼に食べられてこの人にも食べられるの?なんて上手いこと言ってんじゃあない。


「あっ、あのっ!」


「なんだ?」


乳がでか過ぎてTシャツがなかなか脱げない彼女を止めなくちゃ。


「お名前はなんて言うんですか?もっとあなたの事を知ってからそういう事をしたいです」


なんつって言ったら小一時間武勇伝を聞かされた。


「ドラゴンが馬車を襲ってたのを見て私はイったんだ、掘るのは私の番だっ!!お前の穴にぶち込んでやるって!そう言って私は」


「カレンごめんトイレしてきていい?」


「ウッ、うん。あそこ、下り坂の方でしてね」



体感3時間くらい経っても彼女は喋るのを辞めなかった。そりゃ3年も一人で居たら話相手欲しいよな。彼女はカレンって名前の外国人だった。日本でダンジョン攻略をして生活、スキルは万物創造と言うレアスキル持ち。狼の腹の中だと生活用品しか召喚出来ないみたいでツナ缶なんかで3年過ごしてたみたいだ。お互い呼び捨てで話し合うくらいには仲良くなった。つまりそれは脱童貞へのカウントダウン。


どうすっかなと思いながらも便所らしき場所でこんにちはする。周りは赤黒い血管とかで不気味だが俺とカレンが居た場所にはカレンの創造した生活用品で溢れてるのでここらへんの剥き出しの内蔵みたいな感じがしないから精神的に良い。


小便をすると白い煙が立ち上りだした。なんだこれ?と思うも上下に激しく揺れる胃袋、もとい狼。俺の小便で狼の胃が溶けてるのだ。

激しく揺れる体内で俺は宙に浮きながら小便をまき散らかした。


俺の小便は酸かよ。空中で周りがめっちゃ溶けてるのを感じながら自分の顔にもかかりながらも感情を押し殺す。オスの精神だ。雄の小便特攻により雌狼は屍へと変わった。光に包まれ宝箱が出現する。ダンジョンの特徴だ。




「出れたあ」


「アハハッ!何があったんだ!?すごいぞセーヤ!!!」


ヤッターヤッターと騒ぐカレン。そんなカレンが俺の方に駆けつけたと思ったら顔を真っ赤にして何故か服を脱ぎだす。


「ちょっと!もうええからそのネタっ!」


「ネタ?何を言ってるんだ?それよりも乳が邪魔で脱げないから手伝ってくれ脱がすの。セーヤはチ◯ポ出して服着たままするんだろ?」


ああ、そう言えば小便してたんだったな。びちゃびちゃなったあ〜



なんとかカレンを宥めてボス部屋の戦利品をカレンに回収して貰ってからダンジョンコアなるものが有る部屋へ



「これがダンジョンコア・・・ごくり」


「ああ、私もこんなでかいもん初めて見たぞ。さあセーヤが触るんだ。ここの主を倒した者なら認めてくれる筈だ」


「よし、いくぞう」


ダンジョンコアに触れると頭の中に情報が、なんてことはなく。ダンジョンコアが喋った。


「モフモフダンジョン、ダンジョンマスターを登録しました」


「喋った」


「ああ、人工知能らしいぞ」


「カレンもダンジョンコアを?」


「いや私は見た事しか無いな、日本でもダンマスなんて10人くらいしか居ないんじゃないか?」


「そうなんだ、ダンジョンコアさんここはモンモンダンジョンじゃないの?」


「ここのダンジョンの正式名称はモフモフダンジョンです。入口に居る敵対勢力からの情報により判断しますと地下一階から三階までの猿型モンスターを愛で、観光する故にモンモンダンジョンと言う名称が付けられたと推測します」


「こいつ俺より賢いな」


「ナニイッてんだ?セーヤ?」


おっと口に出てたか。


「ダンジョンコアだと長いからコアね、コアさんは俺に何かして欲しいの?」


「・・ありましぇーん、しぇしぇしぇ」


急に馬鹿になったぞ。ええと、どうするか考えてるとカレンが解決策を教えてくれる。


「ダンマスなるとダンジョンイジれるぞ。松戸に有る不殺のダンジョンとか西川口に有るNK流ダンジョンとかな」


ふむ。真似するか


「じゃあ不殺で、コアさん、後モフモフコーナー作ってもいい?」


「了解しました。・完了。モフモフコーナーはマスターの好みの思考を読み取って各階層に設置してます。マスターはダンジョン内転移が実行出来ます」


「転移ってどうやるの?」


「思考により可能です」


「カレン、この子も連れて行ける?」


「・・・マスターと接触すれば可能です」


「ありがとコアさん、そだ他の人に奪われたりとか気を付けなければいけないことはある?」


「踏破済みのダンジョンはダンジョンマスターが死亡した場合のみ塗替え可能です。私に会いに来ることが優先事項かと、しぇしぇしぇ」


「・・わかりました。」


ドラッグでも決めたのか?なんつー思ったがあまり深く考えてはいけない。カレンと手を繋ぎ一階層へと飛んだ。皆待ってないかな?帰ってたりして笑







:彩愛視点



やってもうた。私はただ自己嫌悪に陥っていた。迷宮の呪い。歴史の授業でも習った。習った筈やねん。面食いの呪いで洒落が効いてるねなんてアホかっ!1人ノリツッコミも冴えない。朽木くんになにかあったら、私は誰かに確実に殺されるやろ。佐々木かもしれんし、朽木くんの家族かもしれん。いや、私の命なんてどうなってもええ。

朽木くんは世界の宝や。

派手な顔射をブチかましてくれるだけじゃなくてド派手なオ◯ニーショウを見せてくれる超絶美男子。わけのわからんラップも歌うんやが。世界の隅々まで探してもそんな頭のイカれた事をするのは朽木くんだけや。

どうか神様、助けて。

私は生まれて初めて真剣に神様に祈った。





入口の広場に何時間居たやろうか、携帯を見ると5時間は経っている。もうお昼の2時や。流石に空腹になってトイレも我慢してたので広場のカフェでも行こうと思ったそんな時やった。朽木くんが入口から入ったすぐの所に突然現れた。知らない女と手を繋いで。


「!?朽木くんっ!!」


「あっ、彩愛っちただいま。ごめん遅くなっててか服汚れてるじゃんどしたの?」


「あ、アホかっ!んな場合じゃないやろ!めっちゃ心配したんやから・・えぐっ」


私の服が汚れてるのは地べたに座り込んでたからだ。土下座でお祈りしてたからだ。周りの女達は白けた顔で見てただろうけど私は本気だった。それで気の抜けた返事をしてる朽木くんを見たら安心して涙が出てきた。良かったほんまに。そんな私を朽木くんは優しく抱き締めてくれた。


「ごめん心配かけて。」


いつもお尻や胸ばっかり触ってくる朽木くん。こんな優しく抱かれたら勘違いしてまう。


「じゃあキスしてや」


唇が重なって周りの冒険者達が悲鳴をあげた。あ、うちこんな公衆の面前で初キスしてもうた。


「初めてやのにっ!ムード考えてや朽木くん!」


朽木くんは一切悪くないのに朽木くんに八つ当たりしてしまう私、うちの事嫌いになったらいやや


「俺も初めてだし丁度いいじゃん」


なんて言って笑った朽木くんの事をもっと好きになった1日だった。




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