服って何? side:志乃
side:志乃
「ねぇ、紗栄子……服ってどうすればいいの?」
「……何故私に?」
「だって、頼れそうな人が他にいないから」
「気持ちはわかるが……」
特徴的な赤髪のポニーテールが揺れるほどうーんと考え込む女性。
彼女は冴島紗栄子。
同じ学園に勤務する同い年の体育教師で、私と唯一仲の良い同僚だ。
「私の好みはパンク系だぞ? 志乃の好みに寄り添えるかどうか……」
「そ、それでも頼りたかったの……大事な日だから」
「あー……デートか?」
「……うん」
「まあ、志乃らしい服装がいいんじゃないか?」
「それがわからないから、頼ってるのよ」
今までオシャレにこだわりがなかった。
無難に社会人として恥ずかしくない格好なら、なんでもいい。
どうせ私に恋人なんてできやしない、と勝手に思い込んでいたのだが
「わかった、大事な親友の頼みだ。ショッピングモールにでもいこうか」
「あ、ありがとう……」
自分のセンスに不安があったから助かった。
私は変なのを絶対選ばないと自信はあるが、無難すぎるものを選びそうだし。
「……志乃も随分明るくなったな」
「え? そう?」
「あぁ……そこまで感情を出すなんて。よっぽど彼氏の事が好きなんだな」
「へ……あぁ、うん……」
「随分と幸せそうで……これは気合い入れないとっ!」
優馬くんとの初デート、絶対いいものにしたい!!
「さてと、早速いこうじゃないか!」
「えっ、もう?」
「善は急げ、だ!!」
「ま、まって」
休みとは言え行動が早い。
こうして二人の服選びが始まった。
◇
「はぁ、はぁ……紗栄子、早い……」
「あーすまない……いつものペースだった」
体育教師ということを自覚してよ……
二人が集まったのはショッピングモールの服屋。
なんだけど、周る前から私はもうヘトヘトだ。
「うーん、志乃はいつもより少し大人な感じにした方がいいかもな」
「大人?」
「あぁ。志乃は落ち着いた雰囲気だから、変に攻めすぎずにシンプルに行くべきだと思う」
「なるほど……」
凄く参考になる。
基本なんだろうけど、私はそれすらも知らないから。
「まあ志乃が攻めたいって言うなら全然いいが……スリットのあるタイトミニとか」
「……か、彼が喜んでくれるなら」
「おぉ!? 志乃が攻めた!?」
そんなに驚く事?
確かに恥ずかしいけど、優馬くんが喜ぶなら私だって……
「ま、まぁデート中はシンプルにいかないか? 攻めるのは夜とかに……」
「よ……!? うーん……」
「あー、初めてで恥ずかしいのか?」
「それも、あるけど……」
「……まさか未成年?」
「っ!?」
「え」
あ、まずい。
「志乃って交友関係多くないから、恐らく生徒……で、志乃と仲のいいのは」
思わず目をそらす。
「真島か……」
「はい……」
完全にバレた。
紗栄子も優馬くんのクラス教えてるもんね。
しかも優馬くんとの放課後勉強会も紗栄子には話してるし……ね
「はぁ……恋愛は自由だと私は思う」
「……うん」
「ただ、まぁ……押し倒すのは卒業してからにしろよ?」
「覚悟してるわわ……」
ちょっと危ない雰囲気になりそうだけど、流石に一線は大人になってからにしないと。
仮にも私、先生だし。
「さて、服に戻るとして」
「うん」
「ミニはやりすぎだけど、ロングとかはどうだ?」
そう言いながら、手に取ったのはロングのタイトスカート。色合いはシンプルな黒。
「あ、いいかも……あまり露出もないし」
「志乃はスタイルも悪くないし、多少身体のラインが出ても問題ないと思う。大人っぽい雰囲気も出るし」
「ありがとう……じゃあこれを」
「まった」
「え?」
さっ、と手に持ったタイトスカートを私から離す。
「他にも見てからだ。体力は無限だが、お金はだからな」
「……私はどちらも有限なんだけど」
「色々見た方がいいってことさ。で、次はトップスを……ああ、これもいいな」
それから服選びは何時間もかかった。
私は全然平気だが、服に興味がない人は苦痛に感じるかもしれない。
服選びとは奥が深いのだと、私はこの一日で学んだ。
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