そうだ、自殺前に告白しよう~クソ陽キャ共のさらし者として追い詰められた俺、最後に地味系美人教師へ告白したら甘々で幸せな毎日が待っていた〜

甘なつみ

そうだ、自殺しよう

「……死ぬか」


 俺、真島優馬は決心した。

 何故そこまで追い詰められているのか。

 その原因は普段の学園生活にある。



「ぱらっぱっぱーん!!」


 唐突に教室の真ん中で手を大きく広げ、大声をあげる人物。

 中身もなくつまらない。

 こんな事をやっている馬鹿は一体誰か、俺だ。


「ははははは!! なんだよこいつバカみたいな事言い出してよー!!」

「ねー!! 陰キャオタクの癖にこれが面白いと思っているわけ?」

「だっせー!!」


 陽キャ共の笑い声に釣られて、周りの人間もクスクスと笑いだす。

 俺だってこんなことしたくてしているわけじゃない。

 逆らえないヤツがいるからだ。


「なー真島くーん、次はこれやってよー」


 スマホを突きつける金髪の男。

 ピアスまで付けて、見ただけで派手な陽キャだと分かる。

 朝日陽太、俺を晒しものにしている主犯格だ。


「え、こ、これは……」


 スマホの画面には、真っ裸で股間にお盆を当てている人物が。

 こんな恥さらしみたいな事したくない。したくないのだが 


「ごちゃごちゃうるせぇなぁ!!」

「ごほっ!!」


 陽太はそれを許さない。

 反抗すれば暴力。従えばおもちゃとして遊ばれる。


「さっさと言うとおりにしろって。次は骨折っちゃうかんなー?」

「陽太ー、次はアタシも蹴っていいー?」

「いいよー、なんなら今やれって」

「まじ? やったー」

「あぐっ」


 陽太の隣にいたギャルにまで蹴られる。

 それに続いて陽太の取り巻き全員が俺に殴る蹴るの暴行を加えていた。


「……」


 周りの人間は見て見ぬ振り。 

 何故かって?

 陽太らが怖いのと、父親の存在にある。

 こいつの父親は大企業の社長。

 その立場と金の力で陽太はやりたい放題だ。

 おまけに社長はウチの私立高校の有力な支援者。

 そんな支援者の息子である陽太の行いを先生方は見過ごしていた。


「陽太ーそろそろ先生くるって」

「あーやべぇなぁ。お前ら黙っとけよ? 黙ってたらこいつのようにはならないから、さ」


 これが社会。


 力が強いものは権力を振りかざし、ないものはそれに怯え続ける。


「はぁい!! 何も履いてませぇん!!」

「ぎゃははははは!! 真島って頭おかしいよなぁ!!」


 結局、裸おぼんはやらされた、そして殴られた。

 運悪く担任にその姿を見られ、滅茶苦茶怒られては反省文を長々と書き続ける。

 陽太らに目を付けられて一年。俺の精神はとうとう限界を迎えていた。



「……もういいだろ」


 そんな感じだ。

 俺は毎日、陽太らにいじめられている。


 ある時は服を濡らされ。

 ある時はネットのさらし者にされ。

 ある時は教師にいたずらをさせられ、滅茶苦茶怒られた。


 ……もうしんどい。


「あ、でも……最後にやり残したことあるかなぁ」


 やりたいこと、と言われてパッと思いつく事なんてない。


 美味いものいっぱい食べる?

 やりたいゲーム買っちゃう?

 読んでいない漫画全部そろえる?


 なんか違う……イマイチやりたいと思えない。


 ……あ


「篠宮……先生……」


 ふと頭に浮かぶ、一人の先生の名前。

 篠宮志乃。数学担当で生徒からは地味で人気もあまりない女性の先生。

 ちなみに三十二歳、アラサーだ(陽太がどこからか聞いて広めた) 


「よく勉強を教えてくれたなぁ……」


 篠宮先生の授業は少々難しい。

 教え方が悪いわけではなく、内容が難しいのだ。

 その為、ウチの学校では数学の平均点が低いのだが、俺は平均どころかトップの成績を取っていた。


 何故か? それは篠宮先生に個別に教えてもらっていたからだ。

 放課後、陽太達が遊ぶ為に早く帰る中、俺は篠宮先生に個別で指導してもらっていた。

 先生の教え方はわかりやすく、授業でわからなかった点含めてキッチリ解説してくれる。


「俺の成績も篠宮先生のおかげだしなー」


 暴力と金には屈するが勉強だけは負けたくない。

 そんな思いで常日頃から勉強はしていたが、数学だけは元から苦手なのもあって自学自習ではどうにもならなかった。

 だからこそ、篠宮先生を頼って勉強を教えて貰っていた。

 おかげで成績は学年トップクラス。

 ま、そのせいで余計にいじめられるようになったが。


「……そうだ、最後に先生に告白してから死ぬか」


 先生はいじめられてる俺に学校で唯一話を聞いてくれた。

 そんな先生が俺は大好きだった。

 どうせ生徒からの告白なんて振るだろうし、関係ない。

 最後にやり残した事として、篠宮先生に告白しよう。

「先生いるかなー」


 死ぬ直前だっていうのに、俺は少しだけ楽しくなっていた。

 だが、俺は知らなかった。


 自暴自棄なこの行動が、後に予想もしない展開になるなんて。


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