第217話 クリスマス大宴会 その四
「──んじゃ、早速作るかぁ。一番手、巫女乃美琴、いっきまーす」
「お願いしまーす」
「よーし、残ったメンバーは曲入れてくよー」
「ううっ、一番。一番かぁ……。えー、どの曲にしよっかなぁ……?」
というわけで、はい。料理と歌の順番も決まったので、本格的に行動開始。巫女乃先輩がキッチンに向かい、四谷先輩がタブレットを抱えながら悩み出す。……そして雷火さんは相変わらずぐぬぐぬ鳴いている。
ま、それはともかく。俺は俺で動くとしますかね。周りのメンバーに軽く会釈だけして、巫女乃先輩を追ってキッチンへと移動。
「どった? お前までこっち来て」
「シチューとプルドポークの温め直しを。まだ温かいとは思うんですが、やっぱり熱々の方が良いじゃないですか。……邪魔にはならないと思うんですけど、大丈夫ですか?」
「あー、はいはい。納得納得。私の方は気にしなくて大丈夫よ。こっちもすぐ終わるから」
「何作るつもりなんです?」
「ツマミ」
うん。それは知ってるというか、そんな気はしてました。……いや、巫女乃先輩のキャラがどうこうとかではなく。単純に時間の関係でね。
何度も言っているが、今日のコラボは一人一品がルールである。一巡した後に、さらに料理を追加するかは自由となっているが、最低でも八人全員が一度はキッチンに立つわけで。
どう考えても時間的な余裕が存在しないので、選択肢がサッと作れるツマミ系メインになるのは、ある種の必然というやつである。……だからこそ、俺も別枠でガツンとしたメニューを用意したのだし。
「で、そのツマミとやらは一体?」
「クッソ簡単なやつだよ。私がたまにいく飯屋……フランスとかイタリア系の居酒屋で、お通しとして出てくるやつ。名前は知らん」
「名前知らないんすか」
それでよう作ろうと思ったな。名前知らなきゃ、作り方とか調べらんないだろうに。それとも、調べる必要がないほど簡単なやつなのだろうか? ……あ、なんかカタカナだったから忘れたと。一応、軽く調べはしたらしい。
ビーフシチューを火に掛け、プルドポークをオーブンに突っ込みながら、巫女乃先輩がしようとしていることを眺める。
「なー、小さい鍋ってある? できれば底が深いやつ」
「鍋系はそこの引き出しですね。そこになければねぇです」
「へいへい……お、あったあった」
小鍋を使うのか。あと手に取ったのは穴あきお玉か。しかも金属製の方をわざわざ選んでたから……揚げ物かな?
あー、それっぽいな。網付きバットに、キッチンペーパーも並べてる。完全に揚げ物をやる態勢だわ。
「あー、巫女乃先輩。油を固めるやつはあそこの引き出しにあるんで。洗い物をする必要はないですけど、使い終わったら油の処理だけお願いします」
「え? 揚げ物の油って、何回か使い回すんじゃないの? 私の実家だとそうしてた記憶があるんだけど……」
「実家での記憶なんすね」
「だって一人暮らしで揚げ物とか絶対ダルいじゃん。特に片付け。食いたきゃ外出るか、店で出来合いの買うわ」
「なるほろ」
まあ、ある意味でそれが一番賢い選択ではあるよな。自炊能力があるに越したことはないが、自炊の際に発生する諸々のコストと釣り合いが取れるかというと、かなり疑わしいところがあるし。
特にいまの時代はなー。一人暮らしの場合だと、下手に自炊するよりスーパーの惣菜を買った方がお得だとか、いろいろ言われてたりするし。
揚げ物とかは正にソレで、一人暮らしでやるにはちょっと面倒すぎるのよな。できたて熱々を食べれるというメリットはあれど、それ以上のデメリットとして用意から片付けまでの手間がある。
このメリットとデメリットを天秤に載せた場合、多分結構な人間が後者の方を重くみる。実行するような人間は、悲しいことに少数派になるだろう。
美味いんだけどね。揚げたての揚げ物。天ぷらとか唐揚げとか。それでも家で、ましてや一人暮らしじゃやりたくないよね。俺だって基本はやりたくねぇし。……そもそも時間停止の空間袋があるから、できたてを店で買えばそれでこと足りるんだけども。
「だから正直、揚げ物の知識はそんなないんだわ。今日のためにわざわざやり方調べたぐらいには」
「それでよく揚げ物チョイスしましたね」
「それ含めて選ぶぐらい楽なんよ」
その割にはいろいろ使おうと……追加の鍋にザル? 揚げ物にしてはまた微妙な道具を。どう使うの?
てか、道具の感じからしてコンロ結構使うな? 三口コンロだから多分大丈夫だとは思うけど……まあ、使い始める前にビーフシチューは回収しちゃうか。そろそろ温まるだろうし。
「で、話を戻すけど。私のなけなしの知識だと、揚げ物の油って使い回すもんなんだけど。そこんところどうなの?」
「どうなのもなにも、普通に新しい油の方が良くないですか?」
「それはそうだろうけど」
「あと、そういう節約テクやるほど金に困ってないんで」
「思ってた以上に最低な台詞きたな……」
そう言われてもな……。いやだって、実際そうじゃん。油の使い回しって、節約以外にやる理由ないじゃん。んで、俺は節約なんて選択肢が必要ないタイプの人種なのよ。
そりゃまあ、資源的な意味でもったいないと言われたら、確かにその通りなのかもしれんけどさ。でも、それより美味いものの方が食いたいよねって話でして。
「それに揚げ物とか滅多にやらないんで、古い油残されても困るんですよね。だったらサクッと捨ててくれた方が、こっちとしては助かるといいますか」
「あー」
「まあ、巫女乃先輩が気になるってんなら、他のメンバーに訊くだけ訊いたらどうですか? 揚げ物やる予定の人はいるかって。いたら器に移して残しておく的な」
「……んー、じゃあそうするかぁ」
「そうしてください。んじゃ、俺はそろそろ戻りますね」
どっちも温め終わったのでね。必要な食器やらなんやらと一緒に、それぞれをキッチンワゴンに乗せれば準備はオーケー。
長居して邪魔しても悪いので、やることやったらとっとと撤退してしまおう。
「あいよー。また探し物とかあったら呼ぶから、そん時はよろしく」
「ういっす。……で、巫女乃先輩。結局何作るつもりなんです?」
「あー、ほら。クルクルのパスタあんじゃん」
「あー、フジッリ」
「何て?」
「フジッリ。巫女乃先輩の言ってるパスタですよ。俺の予想があってれば、ですが」
「アレそんな名前だったんか……。てか、アンタ良く知ってたわね」
「絶妙に記憶に残らない名前をしてたんで、逆にそれで記憶に焼き付いたというか」
パスタってたまに調べるんですよ。料理配信の関係で。それで一覧みたいなのを見掛けた時に、『へー。これブリッジっていうんだ。……ん? フジッリ? フジ?』みたいな感じになりまして。
「で、あのマカロニモドキをどうするんですか?」
「結局名前言わんのかい。軽く茹でた後に揚げるのよ。そしたらカリカリの良いツマミになんの」
「へー。ポテチの亜種みたいな?」
「まあ、そんな感じ。想像以上に美味いから、楽しみにしてなさい」
「あーす」
それはそれは。実に気になる誘い文句である。
「あ、一度茹でるなら、しっかり水気拭ってから揚げなきゃ駄目ですよ? 油クッソ跳ねるんで」
「わーっとるわい。はよ戻れ」
ーーー
あとがき
三巻買ってー! 三巻買ってー! ついでに販売サイトで高評価やレビューしてー!
あと個人的に気になるのは、特典小説どうだった? アレちゃんとリアルの方で対応してるというか、わりと私情たっぷりで書いてたんだけど。
で、コレは闇の促販技なんだけど……。三巻には雷火さんのちょっとセンシティブな情報が載っております。はい。
凄いサラッと書いてあるので、よく読んでる人じゃないと気付いてないかもだけど。(編集さんになんか言われるかなと思いつつ書いてみて、見事にスルーされてそのまま本採用されたの図)。
んで、この際だから明記しておくと、雷火さんの読みは【ライビ】です。
……いやね、最初(Web版含む)はらいかのつもりで私も書いてたんですけど、すったもんだの果てにライビに収まって。
それでも本当にすったもんだしたもんだから、二巻まては『らいか』がたまに顔出した挙句、校正をすり抜けておりまして。
電子版と重版後の二巻は修正されてるはずなので、まあ暖かい目でスルーしていただければと。一巻とかも重版したら後続は修正入ると思うんで、ある意味レアってことで。
そんなわけで、レアにしたい人は周りに広めて一巻を重版させてください。はい。
それはそうと進まねぇな本編。
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