第160話 男たちの宴 その一
「──はい皆さんこんばんは。ばーちかる所属のサラリーマンこと、沙界ジンでございます。本日はスタジオを借りてのオフコラボとなっておりますので、よろしくお願いいたします」
:ばんわー
:きちゃっ
:待ってた
:こんばんみー
:開封配信助かる
:このコラボを待ってたんや
:何が出るか超楽しみ
:きちゃあ
:WTGプレイヤーとしては見逃せん
:伝説の始まり
:きちゃあ!
配信が始まった。開幕の挨拶は沙界さん。理由は今日のコラボにおけるチャンネル主だから。
つまるところ、今日の俺はゲストの立場だ。それに伴い、スタジオもばーちかる側に用意してもらっている。俺以外のメンバーが、全員ばーちかる所属であるが故にこうなった形だ。
「それでは早速ですが、本日共演する皆さんのご紹介に入りたいと思います」
そんなわけでコラボスタート。まずは参加メンバーによる挨拶&自己紹介から。
「それでは千田さんからお願いいたします」
「あ、はい。皆さんどうもこんばんは、千田です。今日はWTGの開封配信とのことで、お邪魔させていただきました。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
トップバッターは【千田ムツミ】さん。専務の愛称で親しまれている、アラサーの男性ライバーである。
ガワは草臥れたスーツ姿のイケオジ。そしてガワにマッチしたレトロかつマニアックなゲーム知識と、ディープなネット知識が特徴となっている。
なお、配信における鉄板ネタは社畜ネタ。なんでも元はブラック企業所属の社畜だったらしく、よくコメントで『専務なのに……』と言われていたりもする。
過去の経験談を披露し、たびたびコメント欄ともども呻き声を上げている切り抜きもよく見る。本人曰く前職は大手ゼネコンの施工管理だったらしい。
「それでは次の方。カルメンさん、よろしくお願いします」
「やあお前たち。増田カルメンだよ。よろしくぅ」
「……あ、終わりですか!? 短いな!?」
「別に良いでしょう? いつもやってんだから」
「いや悪いとは言いませんけど! それでも一応初対面の方もいるんですよ!? いつものコラボじゃないですからね!?」
「あ、お構いなく」
「ほら、山主もこう言ってるから」
「お二人ともそれで良いんですね!? あと自己紹介前から自然に会話してますね!?」
:草
:草
:マスターほんま草
:草
:草
:相変わらずで草
:山主さんも草
:草
:草
:草
:山主もユルいからなぁ
雑な自己紹介を済ませたのは、マスターこと【増田カルメン】さん。
ターバンと褐色肌が特徴の、アラビアンなガワの男性ライバー。独特な感性とテンポの持ち主で、実に説明し難いキャラクターをしている御仁だ。口調もなんか胡散臭いし。
ただ個人的には結構好きというか、見ていて面白い感じの人だなと思っている。なんというか、言動がマトモと天然の狭間で揺らいでいるのよね。
真面目な人が頑張ってネタキャラを演じているようにも見えるし、素であのテンポと感性の持ち主である可能性も普通にあるように思える。……まあ、どちらにせよ変人であることには変わりないのだが。それがまた癖になるのである。
「えー、では最後。既に会話に混ざってしまっていますが、はい。山主さん、よろしくお願いいたします」
「どうもー。デンジラスのスーパー猟師、山主ボタンです。本日のコラボはとても楽しみにしていたので、皆さん今日はよろしくお願いいたします」
「はい、ありがとうございます。というわけで、本日はこの四人で配信の方を進めさせていただきたく思います!」
「いぇーい。どんどんぱふぱふ」
「うぉー!」
「……なんかこの二人ってノリが似てるね」
「私もそんな気がしてました」
なんか遠回しにネタキャラと言われたような気がするが、気付かなかったことにしておこう。
「ところで、こちらのお二人と山主さんは初絡みですよね?」
「そうですね。お二人ともデビューする前から見ていたライバーさんなので、お会いできて光栄に思ってます」
「いやいやいや! それはむしろこっちの台詞ですよ! 山主さん、現代の英雄じゃないですか。こうしてコラボするのだって、恐れ多いって感じるレベルですよ」
「本当よねぇ。私も沙界から話が来た時はびっくりしちゃった。『え、良いのぉ?』って」
「そんな畏まらなくても大丈夫ですよ。ライバーとしてはお二人の方がずっと先輩ですし。もっと砕けた感じで」
「あ、そう? じゃあ、山主君って呼ばせてもらうね」
「私もー」
「いま許されたみたいな空気出してるけど、お前は最初から呼び捨てじゃねぇか!」
「あはは」
:草
:草
:マスターだもん
:草
:基本誰にでもそんな感じだし
:こんなん笑うわ
:草
:草
:草
:シレッと距離詰めてるやつ
:草ですわよ
:草
うーんこの。この独特の空気感、マジで感動するわー。俺はこの三人の雑談コラボは全視聴してる系の人種なので、こうして生のやり取りを見れるとね。ライバーやってて良かったって思うのよね。
ましてやコレに混ざれるのだから、もう感慨深いってもんじゃないよ。ついつい張り切って、追加の話のタネを用意してしまうのも仕方ないと思うの。
「まあ、そんなわけで。今日は本当によろしくお願いいたします」
「山主君もめっちゃ堅いね!? もっと肩の力抜きなって! ここにいるのアラサーのオッサンだけだから! キミなんかよりよっぽど駄目な奴しかいねぇから!」
「打ち合わせの時から思ってたけど、この子ずっと私らにキラキラした目を向けてくるのよねぇ。若い子にこんな目向けられると、なんか申し訳なくなってくると言うか」
「お二人とも自虐がすぎませんか……?」
「ジンとは事情が違うんだよ! そっちはアメリカのアレ以前から知り合いだけど、こっちは今日が初対面だぞ!? 感覚が違うんだよ感覚が!」
「沙界にとっては可愛い後輩かもしれないけど、私らにとっては現代の偉人だし……。わりとちゃんと緊張してる」
「あ、本当だ!? よく見たらカルメンさん小刻みに震えてる!?」
「見るなぁ! 見るなよぉ!!」
「草」
本当に見てて楽しいなこの人たち。緊張してるみたいなこと言いつつも、言動は完全にいつも通りじゃないか。流石はベテランVTuberである。
ーーー
あとがき
遅れたというか、ズラしました。明日はWeb掲載のコミカライズ版が更新されるからね! 仕方ないね!
てか、やっぱり当分は木曜更新にしますわ。Web版の更新の宣伝をかねて。
てことで、よろしくお願いします。……最初のうちは、もしかしたらズラしたの忘れて水曜更新するかもだけど。
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