第45話 目玉焼き配信

「はい皆さんこんばんは。デンジラス所属のスーパー猟師。山主ボタンです。今日は料理配信となっております」


:きちゃ

:ばんわー

:地味に久しぶりな料理配信

:わーい飯テロだぁ

:今日はなんの料理なんだろ?

:またやべぇ食材が見れるのか

:今日って前のコラボで話してたスタジオでやってるの?


 恒例となった挨拶を済ませる。内容は薄めで、必要以上の情報は語らない。代わりにコメント欄を確認し、配信が正常に行われているかの把握を行う。


「──よし。音声とかは大丈夫そうですね。それじゃあいつも通り前置きは最低限に、サクサクっとメインの方に移っていきましょう。ちなみに今日は自宅での配信です。スタジオは大型食材やコラボの時に使うつもりなんで」


 今日予定しているのは、比較的小さめというか、食材さえ用意できればわりと誰でもできそうな内容だからね。わざわざ料理スタジオを使うほどのものではない。

 あと単純にまだスタジオは使えない。管理してもらえる人がいないんだよね。個人で所有しているとなると、そういう人材も自分で用意しなきゃなので。そこが個人所有の面倒なところ。

 なので現在進行形で人材募集中。前にチラッと思いついたエンジェル計画に絡められたらなとも思ってる。まあ、難しそうなら玉木さん経由で国から引っ張ってくるだけだけど。


「というわけで、キッチンにGOしましょうか」


 いつものように画面を切り替え、料理の準備に取り掛かる。カメラ良し、画角良し、映り込み対策良し、その他諸々良し。問題がないことを確認したところで、配信の方を再開。


「はいでは、今日の飯テロですが。シンプルに卵料理で優勝していこうと思います。というわけでドンッ」


:卵かぁ

:うわデカッ

:なにそれダチョウの卵?

:でかぁぁぁいッ(説明不要

:一体なんの卵なんですかねぇ……?

:ダチョウのそれより多分一回りぐらい大きいんですが

:そもそもそれ鳥なの? もっと違うナニカだったりしない?


 うむうむ。コメント欄の反応も上々のようだ。パッと見では大きいだけの卵だし、これまでの食材よりもインパクトが弱いかなと心配してたんだけど。意外と高評のようでホッと一安心だ。

 とはいえ、世の中にはダチョウの卵ってやつが流通しているのも事実。絵面だけだと、偉大な先達である配信者のお歴々が既に実現させてしまっているので、何番煎じ的な印象は否めない。

 なので今日は、如何にありきたりな絵でリスナーたちを楽しませるかというのを、密かな課題として設定しておくことにする。というか、その辺りの学びのため今回の配信内容を決めてたり。


「この卵ですが、実はドロップするモンスター自体は既出だったりします。──はいそうです。俺がこれまで扱った食材で、卵を落としそうなモンスターといえば、覇軍鶏ですね。なにそれ知らんという方は、Tweeterの方に以前載せた写真を再びアップしておくので、そちらで確認くださいな」


:鶏油の時のアレか

:でたあのクソデカ鶏

:言われてツイーター見てきたけど、なぁにあれ……

:岩を蹴りで粉砕してる写真、何度見ても恐ろしすぎる

:あれ絶対に鶏じゃねぇから

:確かにあのサイズの鶏なら、その卵も納得かも

:あれもう一周回ってギャグだろ

:地上にモンスターがいないことがどれだけ幸運かが分かる写真よな


 いやぁ、こういう反応を見るたびに楽しい感情が湧くよね。今度プレミアム公開するダンジョン映像も、皆のリアクションが今から楽しみだ。

 以前に企画を練ったものの、編集作業やらなんならで、中々発表できなかったダンジョン内の映像。ようやく公開できる目処が立ったのがついこの間。

 時間がかかった分、追加のお楽しみ要素も練り込むことができたので、その辺の告知も今日の配信終わりにしたいところ。


「で、卵です。皆さんは、卵といったら何を連想しますか? ちなみに俺は目玉焼きです。異論は認めます」


 その手の感性は個人の自由なのでお好きなように。ただ今回に関しては、他の料理を挙げたところで無意味なのでご了承ください。


「てことで、今日はこのクソデカ卵で目玉焼きを作っていきます。それをパンと一緒に食べる王道の朝食メニューですね」


:目玉焼きとパン! これは優勝間違いないやつ!

:シンプルに美味いやつじゃないですかぁ!

:クソデカ目玉焼きとパンって最高に頭悪くない?

:塩コショウで卵の旨味を味わうのが最高なんだよなぁ

:美味そう

:いいよね目玉焼き。ソースかけて食べるの最高

:いいね

:なんか戦争の匂いがしてきた

:醤油(小声

:かけない派だっているんですよ!? ちなみにサラダとかもなにもかけない派です

:委員長かな?


 人の配信のコメント欄でなに火遊びしてんだか。ちなみに俺はソース派です。


「ハイハイ。味の好みってのは人それぞれなんですよ。勧めるのはともかく、押し付けたり否定したりするのはイケマセン。お互いの好きを尊重しましょうね。──ところで話は変わるけど、俺ってタケノコ好きなんだよね」


:秒で新たな火種を撒くな

:草

:さてはより大きな戦争をお望みか?

:それを言っちゃあお終いだろう!?

:草ァ!

:途中まで素晴らしいこと言ってたのに……

:リアル人類最強疑惑のお人が参戦表明だと……?

:これはもう永きに渡る戦争も勝負あったのでは?

:霊長類最強(ネタ)と人類最強(ガチ)のコラボは笑えないんですが

:もう駄目だぁお終いだぁ……

:キノコが絶滅する未来が見える……


 ゴメンて。


ーーー

あとがき

 時間と話の区切りの関係でちょっと短め。

 もう少しでリアル事情も一段落すると思うので、活動の頻度も戻るかと。具体的に言うと確定申告。


 それはそれとして、別作関係ですがちょっとした宣伝をば。

 私の作品である【怠惰の王子は祖国を捨てる】のコミカライズ版が、三月四日に『がうがうモンスター』様にて配信開始となりました。

 もしよろしければ、アプリをダウロードなどして、お読みいただければ幸いでございます。

 それでは小説版ともども、よろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る