推しにささげるダンジョングルメ〜最強探索者VTuberになる〜
モノクロウサギ
一章
第1話 プロローグ
好きな言葉は『思い立ったが吉日』。座右の銘は『即断即決』。やらないで後悔するよりも、やってから後悔するのがポリシー。
それが俺、【
『──実はですね、最近珍しい品を口にする機会がありまして』
他にも、一度ハマったものは飽きるまでのめり込む性格だったり、興味のないものにはとことん興味がなかったりとか、わりと社会不適合者側の人間だったりする。
実際、友人たちから『名は体を表すの究極系』と評され、実の父からは『子供には干支に因んだ名前を付けようと決めてたとはいえ、お前を猪の王にするんじゃなかったよ……』と嘆かれてたりするし。
『それがなんと、ダンジョン産の果物でして! いや、噂には聞いてたけど凄い美味しかったんですよ! また縁があったら食べたいなって思ってしまったぐらいで』
「よし。ダンジョン潜るか」
──実際、一事が万事こんな感じで行動するので、縁ある方々には迷惑を掛けているなという自覚はある。
「美味い物、となると食料系のダンジョン。この辺りだと『美食の庭』か」
だが仕方ない。そういう性分なのだから。やりたいことには一直線なのが俺なのだ。
最近のマイブームであるVTuber。その中でも推しに当たるリーマンこと、【
そして幸いなことに、俺はすでにダンジョンを経験済みだ。具体的に言うと、高校入学と同時に、ダンジョンを探索できる探索者資格を手に入れた。
モンスターを倒すと不思議なアイテムが手に入り、スキルという特殊な力に目覚める不思議な空間。そんな浪漫の溢れた代物に、思春期真っ盛りだった当時の俺が興味を持たないはずがないというわけよ。
まあ、高校時代にしこたまダンジョンに潜ったので、卒業してからは飽きたのだけど。そんで二十歳なった今は、VTuber沼に沈んでいる最中だ。
とはいえ、飽きたとはいえブランクなどはない。一人暮らしの生活費を稼ぐために、そんで推しに貢ぐために普通に潜っているからだ。
単純に熱量がなくなっただけで、培った能力は完全に据え置き。なんなら、専業にして余裕で食っていけるレベルだったりする。運と才能があったみたいでなぁ。
「えーと、美食の庭の攻略情報は、と……」
まず前準備ということで、カチカチとネットで目的地を検索。手に入るアイテムがことごとく食料となる食料系ダンジョン、美食の庭の情報を集めていく。
「今は本当に便利になったよなぁ」
ダンジョンができた当初は、かなり大変なことになってたそうだが、それももう一昔前のこと。
昔ではアングラ扱いだった探索者も、今ではわりと一般的になった。制限付きとはいえ、学生がバイト代わりになれるぐらいだし。
だからこうやって、ネットで検索すれば大抵のダンジョンの情報を拾ってこれる。……攻略サイトを過信しすぎると、イレギュラーがあった時に余裕で死ねるのだけど。
「よし、印刷完了。情報はこれでおけ。初めての場所だけど……ま、なんとかならぁな」
美食の庭は難易度的には中の上ぐらい。難易度のわりに金になるようなアイテムは手に入らないから、探索者の間では不人気扱いされている。……ダンジョン産の食材は美味いし高級品だけど、所詮は食料なので換金効率が悪いんだよなぁ。
ただ美味い食材が手に入るから、一定数の顧客はいるとのこと。自分で消費する趣味人か、高級店と専属契約してる探索者ぐらいしかいないと、クチコミでは書いてあった。
俺も趣味人枠になるのだろう。趣味で片付けるには若干物騒ではあるが、美食の庭ぐらいなら登山と危険度は変わらない。油断すれば危険だが、油断しなければ楽しめる。そんな塩梅だ。
「さて。あとはどうやってリーマンに届けるか、だけど……」
ダンジョン産の食材自体は簡単に用意できる。問題は届けるためのルートだ。
リーマンは界隈トップの箱に所属する企業VTuberである。当然ながら、一般人である俺が直接会うことはできない。
差し入れとして事務所に贈るという手段もあるが、まあ間違いなく弾かれるだろう。ダンジョン産の食材は、商品としてパッケージングされていない、安全かどうかも保証できない代物なのだから。
アレだ。顔見知りが趣味で釣った魚なら食べれはするが、見ず知らずの他人、それも漁師でもない釣り人が釣った魚など不穏すぎて食おうと思えないのと同じこと。
芸能人の同類である人気VTuberともなれば、その辺の安全管理はしっかりしていることだろう。
「んー、頑張ってプライベートで仲良くなるは論外。店を開いて来てもらうってのも、まあやってられんわなぁ……」
素直に諦めるが、この場合は正しいのだろうけども。一度やりたい、そしてやろうと思った以上はチャレンジせねば。
それで駄目だったなら仕方ないと諦めるが、一度も挑戦せずに諦めるのはポリシーに反する。
やらないで後悔するより、やって後悔しろ。だってそっちの方が絶対に楽しい。
「──よし。なら俺もVTuberになるか。そんでリーマンとコラボすれば万事解決だ」
──人生というのは行き当たりばったり。少なくとも、俺はそれで生きてきたのだ。
ーーー
あとがき
書きだめは五万。これから十万文字まで毎日、午後6時に更新を心がけます。
つまるところ、十万文字までに書きだめが尽きるか逃げ切るかのチキンレース。
ですので、応援よろしくお願いします。あとハート、星、高評価、コメント、作品&作者フォローも何卒。
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