第17話 執念
最近の報道で非常に興味深い内容のものがあった。
『長崎県佐世保市の九十九島動植物園「森きらら」で、 単独飼育していた雌のシロテテナガザルが突然子猿を産んだ謎 を巡り、2年越しにようやく父親が判明した。園によると、接触しないように飼育していた別種のテナガザルが父親であることがDNA鑑定で確認された。』
報道によれば、メスのシロテテナガザルは絶滅危惧種に指定されているため、他種のオスと接触しないように飼育されていたのだが、突然妊娠し子ザルを生んだため飼育係や動物園関係者は大変驚いていた、とのことである。当然、父親は誰?となる訳である。
隣のオリには別種のテナガザルが飼育されていたが、仕切りが有り接触不可能と考えられていたが、仕切り版には9mmの穴が複数開いており、この穴を通して接触したらしいとの事である。
「常務! あのニュース知ってっか?」
昼食を済ませ、部屋に戻りビジネス誌を読み始めた矢先、営業課長の伊藤君がやってきた。
「あのニュースて なにや?」
「長崎の動物園のテナガザルが 子ザル生んだって話よ」
「あぁ 隣のオリのサルが父親だったって 話だべ」
「うんうん 9mmの穴から Hしたんだじぇ!!」
「あはは そこがポイントだがしたぁ」
「なんぼ本能だって 9mmの穴から子孫残そうなんて 考えるんだべかねぇ?」
「必死だったんだべ...ところで そのオスの名前知ってっか?」
「ん?...しゃねなぁ...」
「イトウ って名前らしいよ」
「...!?」
伊藤君はすごすごと職場に戻っていった。
それにしても、たった9mmの穴を通して子孫を残そうとする行為を想像すると、その涙ぐましい努力に驚愕するとともに、オスの執念に敬意を表するしかないと思ってしまうのは私だけではないだろう。
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