第187話 翻訳の仕事・4
「まぁそんな訳で今現在は僕を含めたこの3人でやってるから中々進まなくてね。だから今回リンに手伝って貰えるのは凄く助かるんだ」
ウェズンさんが苦笑気味に話す。確かに3人は少なすぎるよね。この蔵書の数を見ると。
そう思いながら図書館内をぐるッと見渡す。勿論この図書館内全ての本を翻訳する訳ではないのだろうけど、これだけの本があるなら翻訳が必要な本の数もそれなりにある筈だ。しかも本の厚みによってはそれなりに翻訳に時間の掛かる物もあるだろう。
うん、ハッキリ言って絶対的に人員が足りてないと思う。
「....ちなみにそれって期限とかあるんですか?この本は何時何時までに翻訳しないといけないとか?」
「いや、期限は特にないよ。逆に期限がないからこの少人数でもやれてると言うか....重要視されていないと言うか.....まぁ、そう言う部署だよ」
ああ......まぁ.....そんな身も蓋もない.....
「でも翻訳してるって事は何かしらの目的があるからじゃないんですか?」
「いや、単に僕達がまだ知らない古代エルフ達の技術や知識があるかもしれないだろう?もしそうなら今の僕達がそれを新しく文書にして後世に残すのも大事な事だからね」
「.....そうなんですね」
確かに。本には今では知らない昔の記録も残ってる事は多々あるもんね。今のエルフですら解読出来る人数が減っている古代エルフ語の場合、この先に生まれてくるエルフ達にはもっと読めなくなる可能性だってある訳で。それなら今の内に読める言語に翻訳していた方が無難と言えば無難だろう。
「でも同時に古代エルフ語を完璧に読める人材育成も必要だと思うんだけど.....」
そうしなければエルフの国から完全に古代の文明が失われてしまう可能性だってある訳で。
「うん、リンの言う事は正しい。だから今の学園では古代エルフ語の授業なんかも力を入れて行われてるみたいでね、何年後かにはこの部署にも人員が派遣されるようになる筈だよ」
.....気の長い話....とは思うけど、人とは違って寿命が長いエルフにはそうとは感じないのだろう。その辺りは人とエルフとの種族の価値観の違いかな。
「じゃあ今は私が変わりに頑張りますね」
「うん。宜しくね」
そう言ってウェズンさんは私専用の机に案内をしてくれた後、翻訳する古代エルフ語を本を数冊置いた。勿論1日で出来る量ではないから定時になったら仕事は終了して帰るのだとも説明を受けた。机の上の本が終わればまた新しいのを渡すので宜しくね、との言葉付きでだけど....。
師匠は取り敢えず初日の今日は終業時刻まで同席するとかで、自分も簡単な物の翻訳を手伝っていた。
そして私は渡された古代エルフ語で書かれた書籍をパラパラと捲ってみる。どうやらこの本は人の国にはないようで私も見たことがない物だった。
さっと見た感じだとどうやら錬金術に関する事が書かれた本のようでレシピなんかも書かれているみたいだった。
.....うーん....これ、私が翻訳して問題ないのかなぁ?エルフ独自の錬金術のレシピみたいなんだけど翻訳してたら覚えちゃうんだけどなぁ....でもその事に何も言及しないっして事は暗黙の了解みたいな物で、私が他の誰かに伝えなければ問題なしって解釈で良いのかな....良いよね?
よし、良いって事にしておこう!翻訳頼んで来た時点でこんな本もあるって解ってるんだしね!
そう自分勝手に解釈する事にして本格的に読むことに集中することにした。
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