第161話 師匠の実家にお邪魔しました・3
「私達の事は気軽に名前で呼んでね。あ!お義父さんとお義母さんでも良いけど!」
まるで良い事を思い付いたみたいな感じで言われて、それってどう言う意味で?と聞きたいような聞きたくないような気がしてくる。
「母さん!?」
反応したのは意外と師匠だった。スルーするかと思ってたから私としては本当に意外だった。
「あら、だってリンちゃんまだ子供だし保護者はいた方が良いんじゃないかと思って。リンちゃん可愛いし、こんな娘がもう1人居たら良いなぁって」
「それあいつらが聞いたら焼きもち妬くぞ」
楽しそうなミルザムさんを師匠が心底嫌そうに溜め息を付く。
あいつらとは?
きょとんとして師匠とミルザムさんを眺めていると、アダラさんがコッソリと教えてくれた。
「あいつらとはシリウスの弟と妹の事だよ。あの子達は焼きもちやきでね。家族の気持ちが自分の知らない他人に少しも向くと怒りだすんだよ」
え....?それって相当やばくないですか?
「相手に怪我をさせたりするのではないから毎回小言で済ませているんだが....もう2人ともいい大人だし大丈夫だと思うんだがね」
「.....でも性格って大人になったからと言って変わるものでもないと思いますよ?」
逆に大人になっても変わらないから厄介なのでは?と思うんだけど.....この辺は人とエルフの考え方の違いなのかも知れないけど。
「ふむ....何だか君と話してると娘より年上の人と話してるみたいだよ...きっと苦労してきたからなんだろうね.....でももう大丈夫だ!我々が君の後ろ楯になれば怖いものは無くなるからね!」
いや、逆に怖いんですけど?え?私が人の国に何かされたらどうするつもりなんだろうか?下手な行動出来ないんですけど!?
そんな私の心の葛藤に気づく事無く、ミルザムさんとアダラさんの会話は続く。
「そうそう、貴方達暫くはエルフの国に住むんでしょ?どこに住むつもりなのかしら?」
そしてミルザムさんが唐突にそう切り出した。きっとタイミングを見計らっていたんだと思う....だって態度が何となく態とらしい感じがする。
「ああ、この国に俺が個人で所有する屋敷がないから暫くはここに住まわせて貰いたいんだ。良いかな?父さん母さん」
まさかのこの屋敷に住む発言にぎょっとして師匠を見上げる。その視線に気が付いたのか私の方を見てニヤリと笑う。
....態と黙ってたのか、コノヤロウ.....
きっと私を驚かそうと思って敢えて言わなかったんだろうなぁ!でも!そう言う大事な事は先に言って欲しかったです師匠!!世話になる身分だからワガママは言えないけど、こんな豪華な屋敷に住むなんて緊張するでしょ!?
「あら!勿論大歓迎よ!!そう言うかなって思って部屋は用意させてたから全然問題がないわよ」
「そうだな。久し振りに賑やかな屋敷になりそうだ」
ニコニコ笑う2人には最早何も言えない。私はただ、お世話になりますと、渇いた笑いを発しながら挨拶するしかなかった。
こうして私のエルフの国での怒涛の生活が始まったのだった。
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