第149話 エルフの国へ行こう・3
エルフの国へ向かって森の中をひたすら歩く事5日目、師匠のところにカノープスさんから通信魔術で連絡が入って来た。曰く、王都から発った使者達が要塞都市ミルトンへ到着したけど既に私が街を去った事を知り、冒険者ギルドに文句を言っていたとか何とか。
「カノープスさん、その場に居た訳じゃないんですよね?よくそんな詳細な事までわかりますね?」
「姿消して居たんじゃないか?彼奴も転移が使えるからミルトンに様子見に来たんだろ....まぁこうして状況を連絡して貰えるのは助かるしな」
「.....確かにそれはそうですけどね」
そもそも賢者と呼ばれるカノープスさんがそんな事してて良いのかなぁ?と言う疑問は私の胸の中だけにしておいた。きっと世の中には聞いてはいけない事のひとつやふたつはあるよね。
「それで街中でリンがどこに行ったのか手当たり次第に聞き回っていたらしく、最終的には俺がギルドを辞めた事と、リンの師匠になった事が伝わったらしく一緒に行動しているんじゃないかと疑われているらしい」
師匠は溜め息をつく。
「まぁ国からの使者の中には騎士達もいるから王都のスタンピードでお前の事を知っていた奴等も居た可能性があるからいずれ知られるだろうとは思っていたからまぁ想定内なんだけど....出来ればもう少し遅く気がついてくれたら良かったんだけどなぁ.....言っても仕方ないんだけどな」
「じゃあ私達を追いかけてくる可能性が高くなったと言う事ですよね?」
「....そう言う事だな....ただ、俺達がエルフの国へ行く事は誰にも言ってないから直ぐにバレる心配はないかな?多分このペースなら俺達がエルフの国に到着するまでに使者達が追い付くのは難しいだろうしな」
取り敢えずエルフの国へ着いてしまえば問題はないのだ、と師匠は言う。
『エルフの国はエルフの許可がないと中には入れないようになっているんだ』
「黎明」
『エルフの国は森に囲まれているが、その森に幻影の魔術を掛けていてな許可なく入ろうとすれば迷って森の中を延々と歩き回る羽目になる』
黎明が詳しく説明してくるのに師匠がウンウンと相づちを打つ。因みに黎明の事は一緒に街を出てエルフの国へと向かうと決めた時にきちんと話をした。勿論、私自身の事はまだ秘密なんだけど、黎明はこの国にある六花の霊峰の聖獣だし国を出るなら一応知っておくべきだと思ったからだ。
因みに黎明に国を出ても問題はないのか聞いたら問題ないと即答された。曰く、聖獣は確かにその場を守ってはいるが、そのものから離れたからと言って縁が切れるモノではないのだと。問題なのは自分が生きているか死んでいるか何だと言われた。つまり黎明が生きている限り六花の霊峰とは繋がっていて何か異変があっても直ぐにわかるんだって。
.....それはそれで凄いよね....
そう言う訳で既に黎明と師匠は凄く打ち解けているし、よく2人で相談してたりする。
「リンは俺が一緒に居るから問題なく入れるし、黎明は聖獣だからそもそも問題ないしな。それに一応エルフの国の王に連絡は入れているから」
「え?師匠はエルフの国の王と知り合いなんですか?」
え?師匠って意外と偉い人だったりする?
「知り合いと言うか、知り合いの知り合いだから会った事が何度かあるぐらいだけどな....別に連絡も入れなくても問題はなかったんだが、万が一何かあった時に連絡してるのとしていないのとでは取れる対応策が変わるだろう?」
だから念の為に入れておいたのだと師匠は言う。
....うん、何か本当に有り難いよね。私1人だったら確かに身軽に移動は出来たかもしれないけど、この世界の事をよく知らない私だけだと行き当たりばったり過ぎて上手く逃げられなかった可能性だってある。
「.....師匠、ありがとうございます」
「気にするな....師匠として当然の事をしてるだけだ。だからお前はSランクになれるように頑張ってくれよ?」
あくまでも私に気を使わせないように軽口でそう言って私の頭をポンポンと軽く叩いてくる。
「はい。勿論です」
ならばなって見せましょう。Sランク冒険者に!
そうなれば王公貴族達に横槍を入れられる心配もなくなるし、私には必要な身分だろう。ならばやるしかないよね!
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