第147話 エルフの国へ行こう・1
要塞都市ミルトンを出発して1週間。
私の事が王族にまで伝わったとカノープスさんから連絡を受け、私の師匠であるギルドマスターはすぐにギルドマスターを辞める事を王都のギルドに伝え、何だかんだと引き留められつつも冒険者は辞めないので緊急性の高い案件が発生した際には協力は惜しまないと約束をしてギルドマスターを無事に退任した。それを僅か1日で行ったのだから師匠のギルドマスターとしての能力は高かったのだろうと改めて思った。
.....王都のギルドが何とか留めようとする理由もわかるなぁ....
退任した後は、ミルトンの新しいギルドマスターをスピカさんに指名して副ギルドマスターをスピカさんが後々決める事を指示して引き継ぎを行う。この辺りは普段から副ギルドマスターとして師匠とこのミルトンの冒険者ギルドを運営していたのだから特段慌てて引き継ぎをする案件もなくスムーズに終了した。
そして隣国とこの国の丁度境にある大きな森林を統治しているのがエルフの国だそうで、じゃあ実際はエルフの国が隣国では?と思ったけどこの世界ではエルフの国は人族の"国"の定義には入れないそうなので隣国であり、隣国ではないのだとか。
ようは"不可侵の国"なんだって。
どこの国もエルフの国を侵略してはならないと決められているそうだ。だから実はエルフの国はそこだけじゃなく、何ヵ所かあって人族はエルフの持つ知識の恩恵を昔から受けているとか。
だから余計に不可侵なのかもしれない。下手に介入してその知識の恩恵を貰えなくなったら困るもんね。うんうん。
そう言う訳で王都からの使者が来るまでに要塞都市ミルトンを出発出来たのは良いんだけど、下手に馬車とかを利用すると足取り辿られたりしたら困るよね?と師匠と相談した結果、地道に馬と徒歩で行く事にした。馬は勿論師匠の愛馬のプレアだ。
ルート的には要塞都市から南の街道の先にある街メントスと、その先の街道沿いにある森を越えた先にエルフの国があるらしい。なので取り敢えず私の転移でメントスまで行って、そこから馬と歩きとで森の中を進むと言う事に決まった。そして今現在、メントスの街を越えた森の中を2人と1頭でのんびりと歩いていたりする。因みにこの森は比較的そこまで強い魔獣は出ないそうで、湖にホワイトバードが住んでたりとか、魔獣の住みかに当たる場所に近づかなければそこまで恐れる場所ではないのだとか。
ただそれがSランクの師匠情報なので少しだけ微妙に感じるんだけど本当に大丈夫かなぁ?大丈夫だよね?ギルドマスターやってたんだし.....
「どうかしたか?」
「いえ、何でもないです」
....大丈夫だと思っておこう.....
朝から森の中を歩き続ける事3時間程。流石に結構強行軍で今まで来たから少しだけ疲れたかもしれない。
丁度森と森の間の平原へと出た所で師匠が声を掛けて来た。
「リン、そろそろ休憩して昼飯にしよう」
「あ、はい。じゃあ準備しますね」
そう言って大きな木の下の少しだけ木陰になっている場所を見つけてその下に自作のレジャーシートを敷く。この世界には当然日本のレジャーシートタイプがなくて、有っても少し厚めの生地で作った物とかしかなくて直ぐに汚れてしまうし、雨が降った後の場所で使うには不向きだしで仕方ないから作ったのだ。実はこの世界にはビニール素材はあるのだ。だけどそれを加工して日本のレジャーシートのような防水に優れた商品を作り出す知識がないんだよね。だから使う時には気を付けなきゃいけないんだけど....まぁ師匠だし!
いずれ、師匠にも私の事情を話さなきゃいけない時が来るかもしれないなと漠然とそう感じる。
何だろう....こう、予感?的な?
そうなると師匠も私の事情に巻き込んでしまうからどうかなぁとは思うんだけど、既にここまで巻き込んでしまってるから問題ないかも?とか思ったりも。
お昼ご飯なので作って無限収納に入れて置いた鍋いっぱいの具沢山熱々スープに肉を挟んだバーガー風惣菜パンを取り出したテーブルの上に置くと、プレアに水と餌をやっていた師匠を呼ぶ。
「相変わらず旅の途中のご飯じゃないよな....俺はもう干し肉とかで遠征とか出来ないかも知れないなぁ」
しみじみと言いながらバーガーを頬張る師匠に苦笑する。
「私だってそれしかなかったらそれを食べますよ?」
「....まぁな」
世間話をしながらこうのんびりと食事をしているとエルフの国へ逃げてる感じが一切しなくて緊張感に欠けてしまう。
.....このまま何事もなくエルフの国に到着したら良いんだけどなぁ.....
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