第116話 閑話 カノープス・メトリア

カノープス・メトリア、それが俺の名前だ。


今現在は王都で宮廷魔導師団の師団長をしているが、人によってはこう呼ばれる事もある。


賢者.....と。



メトリア侯爵家の三男として産まれた俺は、三男と言う比較的自由な立場で好きな事を両親はさせてくれていた。勿論勉学はちゃんとやる事を条件にだが。


王立学園で常にテストでは学年3位以内に入り、魔法も優秀とあらば貴族令嬢が常に近寄って来るのが少し面倒ではあったが概ね、問題も起こさず学園生活は有意義な物であったと記憶している。


王立学園は貴族子女だけでなく、優秀な子供は平民でも特待生として入学が許可されており、その特待生として同じクラスになったのがシリウスだった。


シリウスは見掛けは俺達と同年代に見えるが、彼はハイエルフだ。何故ハイエルフの彼が今更学園に通っているのか俺は不思議に思った。思ったらいても立ってもいられず本人に直撃したのは今思えば適切な行動だったとは言いづらいだろう。


結論から言えば、彼はレグルス辺境伯家からの調査依頼の為に学園に特待生として入っていたのだそうだ。彼はその時点で既にSランク冒険者だったのだ。


それから俺達はレグルス辺境伯の嫡男ヘンリー・レグルスを加え、それなりに顔を付き合わせる事になり、学園を卒業するまでには友人と呼べるようになった。


学園を卒業してからしばらくは俺も冒険者として活動し、たまにシリウスと共闘して依頼をこなす事もあった。冒険者としてSランクまで登り詰めた俺は当時の宮廷魔導師長からスカウトされ、冒険者活動を一旦休止し宮廷魔導師団へと入団したのだ。


宮廷魔導師団としての仕事は規律に嵌められ、なかなかに窮屈な生活だったが、唯一魔法の研究が自由に出来るのが楽しかった。自由に活動していた冒険者時代が良かったと思わない日が無かったとは言わないが、当時の俺は金の心配も、時間の心配も無く研究が出来る事が嬉しかったのだ。


研究で沢山の魔法や、魔道具を産み出した。それと同時に産まれる権力と、近寄ってくるハイエナ達。師団長を任命された直後の事は余り思い出したくない。思い出したら城を吹き飛ばしたくなりそうだ......。



そして久々に会ったシリウスはギルドマスターも中々板に就いていて、新人冒険者であるらしい少女をシリウス直々に教育しているようだった。


.....珍しい事もあるもんだ。

......まさかシリウス、少女趣味なのか?

......いや、でもあれ程の美少女ならアリなのか?


まさかこの年齢になって友人の性癖を心配する事になるとは思わなかったが.....。


ああ、でもあの少女なら仕方がないのかな?彼女からは凄く神聖な魔力を感じる。妖精や精霊達と共にあると言われるエルフには、何がしら感じる物があるのだろう。


.....まぁシリウスは簡単には認めないだろうがな?






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