第117話 お引っ越し?・1

早いもので私がこの世界に来てから1年が過ぎた。相変わらず冒険者として日々充実した日を過ごしている。


最近変わった事と言えば、冒険者ランクがCランクに上がったのだ!ふふふふ~、着実に冒険者としての実力が上がって来たって事よね!目に見える形で示されるのは頑張りがいもあるし、モチベーション向上にも繋がるから嬉しいよね。


ただ残念な事もある。


冒険者ランクがCランクに上がった事で、今住んでいる冒険者ギルドの部屋から出ていかなくてはならなくなったのだ。


あの部屋はあくまでも冒険者初心者が低ランクの依頼しか受けられず日々稼げるお金も少ないので、ランクが上り一定の生活が出来るようになるまでの謂わば救済部屋のようなものだ。


流石にCランクになった際にギルドマスターに文句を言った冒険者が居たのだ。私を贔屓にし過ぎると。確かに目を掛けて貰ってる自覚は私にもあるが、それと等しくギルドに貢献出来ている自負はあるので相殺ではないかと私は思うんだけど、世の中にはそう思わない人も多々居る訳で....。


「ギルド内の酒場でいつまでもグチグチと難癖つけられるのも嫌なので引っ越しは問題ないんですけど、どこか女の子1人で住んでも問題ない物件ないですか?」


引っ越しは問題ないが、問題は住む場所だった。正直に言えばどの辺りに住んだら問題がないのかが私にはわからないから。そこでいっそのことこの街に絶対と言うか当然詳しいギルドマスターとマリッサさんに聞くことにしたのだ。


この街の部屋や建物等の物件の管理をしているのは商業ギルドらしいので、商業ギルドに行ってみてもいいのだが、紹介して貰う物件が私が住むのに適しているかどうかの判断が私には出来ないので敢えて2人に聞いてみたのだ。


「この間のダム....あの冒険者の人に言われた事なら気にしなくても良いのよ?ギルドの部屋は新人冒険者だけじゃなくてリンちゃんのような冒険者が自立出来るようになるまで住む処の面倒を見る為にあるんだから....」


.....この間私に喧嘩吹っ掛けて来た人、ダムって名前だったのね....


「ん~……でも私もCランクになりましたし、普通に生活出来るぐらいには稼いでるので確かにあの人の言うことも一理あると思うんですよね。それに、他にもギルドの部屋に入りたい子っていると思うんですよね」

「それはあまりないのよ。この街で冒険者になる子は基本的に両親と一緒に住んでる子が多いから家から通う子が殆どなのよ。後は同じパーティ内で一緒に家を借りて住んでる子もいるわね」


へぇ~......ルームシェアみたいな物かな?


「そうなんですか?」

「そうなのよ。だからリンちゃんが住んでても誰にも迷惑は掛けてないのよ。そもそも数部屋はまだ空部屋なんだし.....」


確かにそれはそうだ。部屋が全く空いてないなら文句はわかるが、事実空いてるのに無理に出ていかせる意味がわからない。だけど....。


「いつまでもお世話になる訳にはいかないし、いつかが今になるだけですしね!」


そう。結局今、出ていかなくてもいずれ出なくてはいけないなら早目に次の拠点になる場所は見つけておいた方が良いだろう。


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