第114話 薬師の迷宮・7

ボス部屋から設置されている転移部屋から1階へと戻るとまだ日が明るいからか、これから迷宮へと入る冒険者や、同じように出ていく冒険者が沢山居て、私達を見るとザワザワと騒いでいるのが見えた。


迷宮入口の受付のギルド職員さんに帰還した事の処理の為に再び水晶玉に1人ずつ手を触れていくと、無事に全員が迷宮から帰還した事が登録されると言うのだからハイテクだなぁ~なんて思う。

このシステムを考えた人、絶対に転生者だと思うんだけど実際のところどうなんだろう?


迷宮の入口を出た所でカノープスさんがギルドマスターに声を掛けてきた。


「シリウス、取り敢えず俺はコイツらを連れて転移で王城へ戻るが構わないか?」


1週間の期限付きで薬師の迷宮へ潜っては居たが、本来なら素材を手に入れた時点で王城へ戻っても良かったのだ。寧ろ、早く戻った方が良かったのにカノープスさんはこの機会だからと素材集めを優先したのだ。


.....いくら命に関わる病気じゃないと言ってもねぇ....まぁ結局同行してた私達も同罪なのだが....


だからこそ、馬車でミルトンまで戻る時間を短縮したいのだろう。転移は1度現地に行きさえすれば、次からは行き来が出来るようになる。つまり、薬師の迷宮から王城まで、カノープスさんは転移が出来るようになったと言うことだ。次からはもし薬師の迷宮に用事がある場合は自由自在に転移する事が出来るって訳。楽だよねー。


「まぁ別に構わないが....じゃあこの依頼完了書にサインだけ頼む」

「ん?ああ.....控えは宮廷魔導師団宛に送ってくれるか?」

「ああ」


ギルドマスターがどこに持っていたのか書類とペンを取り出すとカノープスさんがサラサラとサインをするのを下から眺めているとふっと視線が合った。


「ああ、リンのお陰で助かった。まさか初回からドロップするとは流石の俺でも思って無かったが.....また必要な素材がある時は同行を頼むな?」

「.....カノープス.....」

「別に構わないだろ?きちんと冒険者ギルドを通して依頼として出してるんだからな?本当は個人的に頼んでも俺は別に構わないんだぞ?」


.....個人的に頼まれたら多分受けないと思うなー


そう内心思った事は内緒だ。


「リンの冒険者としての経験値も上がるし、一石二鳥じゃないか?ギルドマスターとして、後進の育成も大事だぞ~?」


ニヤニヤしながらギルドマスターにそう告げるカノープスさんは楽しそうだ。もしかして昔からこんな感じなのかな?それならギルドマスターのカノープスさんへの塩対応も納得出来るなぁ。


「まぁ、冗談抜きに今回は本当に助かったよ。俺達だけだったら手に入れられたか正直わからないからな」


本当に私の運がドロップ率上昇に関係しているのかはわからないが、何だかんだと言っても薬の素材が必要なのは事実なのだから無事に手にする事が出来たのだから御の字だろう。




それから騎士団の皆とも挨拶をして、カノープスさんは戦利品と共に転移で王城へと帰って行ったのだった。

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