第74話 六花の霊峰・5
3日目。前日にかなり進んだので目的地に随分と近づいて来たのだが、逆に景色が緑から白に変わり歩きづらくなってきた。
つまり、雪だ。
積もっている量は僅か数センチなのだが、いかんせん雪道に慣れていない地域に住んでいたので非常に歩きづらくなっているのがネックだったりする。そんな中でも魔獣は待ってくれず襲い掛かってくるので少し強めの風魔法で一掃した。誰も見てないから出し惜しみする必要ないしね!
流石にレッドウルフやブラックベアーが出た時は一瞬ヤバいかと思ったけど倒した後の素材を考えずに魔法をぶっ放したら何とか倒せたので本当に良かった。
サクサクと歩みを進め、ようやく目的地に到着したのはギリギリまだ陽が登っている時間だった。
私は目の前の景色に思わず見とれてしまう。
目の前に広がる湖自体はそんなに大きなものではないが、雪が積もるなか滝から流れる水から跳び跳ねる水飛沫が湖に虹をかけキラキラと光っている。
まるでここだけ別世界みたい.....
そう感じてしまうぐらい美しいと思える景色だったのだ。
「あっと.....そうだ滝の裏、滝の裏」
この滝の裏側にある洞窟の中に " ドラゴンの涙花 " がある。
湖に落ちないように少し離れた雪道をぐるっと歩いて滝に近づくとかなり細い、人1人が通れるぐらいの道がありその先に小さな洞窟が隠れているのが見えた。
「あそこかな?....丁度真正面から見ると滝の影になってて見えないようになってるのね」
偶然なのか、わざとなのか....恐らく後者だろう。
ゆっくりと細い道を歩いて行く。落ちたら速攻滝壺にドボンだ。死ぬ事はないだろうけど、雪山で湖に入るのは気分的に遠慮したいところ。
滝の水飛沫がかかってしまうので風魔法で結界ではないけど薄い風の膜を身体に纏いながら進み、ようやく洞窟の入り口に辿り着いた。洞窟の中は何処かからか光りが漏れているのか薄暗い感じには明かりがあったが歩くには適さないようなので、ここでもライトの光で周囲を照らしてみる。
気配を探ってみても洞窟内には魔獣の存在は感じられず、ゆっくりと細長く奥に続く道を歩いて行くと、いつの間にか洞窟のつきあたりまで来ていた。
「......花がない?」
歩いてきた道には" ドラゴンの涙花 "はなく、そして洞窟の行き止まりであるこの場所にも花一輪たりとも咲いていない。
これはどういう事だろう?
歴代の辺境伯家で保管されていた記録に間違いがあったとは言いがたい。もしかして辺境伯家が知らない間に群生場所が変わったとか?まさかねぇ?
「ん?」
ふと足元を見ると水が流れている。流れている水を視線で辿って見れば水は正面の壁の下から流れているようだった。
「.....もしかして?」
水が流れていると言う事は水が流れられる空間があると言う事。
「ストーンカッター」
土魔法の初級魔法を何度か叩きつけるとガラガラと音を立て目の前の壁が崩れていき、その先に隠し部屋ならぬ隠し通路が現れた。
「.....やっぱり隠し通路があったんだ。でもこの壁毎回壊しても元に戻ってるってこと?」
何とも不思議な現象である。ゆっくりと隠し通路を歩いていくとその先にようやく念願の物があった。
「....これが "ドラゴンの涙花 " ......」
そこは虹色の花弁が光り輝くドラゴンの涙花の群生地だった。
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