第73話 六花の霊峰・4

2日目はいつもよりも早く起き、朝食を済ませ次の野営地点である洞窟を目指す。何だかんだで子供の足では大人が進むより遅くなる。1歩が短いのだから仕方がないと言えば仕方がないのだが。


1日目の野営地点から先は綺麗に整備された道はなく、人が1人通れそうな道しかない。


「まぁないよりはマシだけどね」


剣を取り出して杖がわりに歩く。手元に出しておけば何かあってもすぐに使えるしね!


そして流石にこの辺りからは弱い魔獣が出るようになってきた。単体でのゴブリンやウルフ等。ウルフは一番弱いノーマルタイプなので楽勝である。倒した魔獣は街に戻ったら買い取りをして貰うべく無限収納にそのまま入れた。


勿論薬草採取も忘れない。次からは何時でも簡単に来れるようになったけど、せっかく来たのだから採取しない手はないだろう。


「あ、サイカ草見っけ」


普段採取している場所に生えている稀少な薬草ではないが、もしかして生えている場所によって多少は効能の差とかあるのではないかと正直私なんかは思う。だってここ霊峰って言われてる山だよ?何か聖獣とか聖域とかの御利益ありそうじゃない?


「よし!そろそろ行くかな」


袋一杯に詰めて無限収納へと入れ、歩き出す。

朝から歩き詰めで木々の隙間から見える太陽の位置的にそろそろお昼頃になる。地図を見れば思っていたよりも早く進めているようで、距離的には洞窟らしき物が見えても良さそうなものだが.....。


ふと地図から顔を上げれば前方に小さく洞窟らしき物が見える。


「.....もしかしてあれかな?」


地図に描かれたまるでハート型のような入り口をした洞窟とそっくりそのままの洞窟が遠くに見えた。


「うん、間違いないね~……あんな特殊な入り口をした洞窟なんて2つとないでしょ」


私は歩みを早めて洞窟へと急ぐ。ようやくたどり着き中を覗き込めば流石に昼間でも中は真っ暗なので慌ててライトの魔法で明るくすれば、冒険者の誰かがここに来た際に野営地として使っていたのか、中は意外と綺麗だった。気配を探って見ても洞窟内に魔獣は居なかったのでその点でも安心した。もしかしたら中に魔獣が入らないように辺境伯家が何か魔道具でも設置してるのかも知れないなぁ.....。


「.....ここまででまだ半分ぐらい」


時間的にはまだお昼だがこの先に整えられた野営場所はない。でもこのペースで行くと、どのみち明日はちゃんとした野営地には泊まれないだろうから条件は一緒なんだよね.....今日進めるだけ進んで野営して明日目的地に着くか、今日このまま洞窟内にいて明日野営して明後日目的地に着くか。


「.....考えるまでもないか」


早く目的地に着くに越したことはないよね。病気で臥せってる王女様が居るんだから。


「よし、お昼ご飯だけここで食べて行けるところまで今日は行こうかな」


そう決めた私は素早くお昼ご飯を済まして更に先に歩き続けた。







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