第71話 六花の霊峰・2

シロッカの街はメントス、シーダーの街より更に小さめの街で山の麓ののどかな街と言う感じだった。冒険者ギルドもあり、お店も宿屋もあるのでそれなりに人通りはあるが都会とはまた違う雰囲気のある田舎町って言ったら良いのかもしれない。


取り敢えずこのまま山に入るつもりなので宿は取らず、冒険者ギルドへと私がシロッカの街に着いたと言う事を伝えておく。もし私に何かがあって予定日が過ぎたのに山から降りて来ない場合、捜索に当たってくれるからだ。山に入る準備はミルトンで準備して無限収納へと入っているので問題はなかった。




目の前に聳え立つ "六花の霊峰 " を見上げると天辺の方は雲に隠れて見えないが、凄く高いのだけは理解した。富士山よりデカイよね.....?


山への入り口はシロッカの街で管理されているようで、入山下山記録としてギルドカードや身分証明書を読み取る為の水晶が設置されていて、カードを翳すだけで大丈夫との事。一応冒険者ギルドには採取の為に1週間程籠りますと言ってあるので、その期間を過ぎても戻らない場合は自動的に冒険者ギルドへ連絡が行くそうだ。便利だよね。


水晶にギルドカードを翳していよいよ山の中へと入る。麓には雪は積もっていないので普通に山歩きをしてる感じになる。


「今のところ魔獣らしき気配は感じられないし、やっぱり霊峰って言われるぐらいだから魔獣自体が寄り付かないのかな?」


いやでも下の方に居ないだけで上に登れば登る程居るのかもしれない。麓に近い所だと街に近いんだから定期的にギルドから討伐依頼が出てるだろうしね。


今はまだある程度整備された山道があるけど途中からは獣道に入るみたいだしなぁ.....


辺境伯家から写してきた地図を片手に歩いていくと山道の脇に色んな薬草が生えている事に気がつく。


「へぇ~!こんな道端にも薬草があるんだ!確かにこれなら薬草採取だけでも来る価値はあるかも!!」


まだ初日だし、少しは良いかなと思っていくつかの薬草を採取しながら進んで行くとついに山道が途切れた広場の様な場所に出た。一応それぞれに立て看板の様な物が刺してあり、下山したい場合はこちら、山頂を目指す人はこちら、な感じで簡単に書かれてあった。まぁ山頂を目指す人は殆ど居ないから、下山する人様にわかりやすくしたのだろうと思う。


この場所は所謂ダンジョン等で言うセーフティーポイントのような所なんだろうと思う。シロッカの街の人が作ったのか、歴代の辺境伯家の人が作ったのかは知らないけれど。


「ま、ここなら魔獣が出ても戦闘しやすいし、逃げやすいもんね」


空を見上げれば陽は傾きそろそろ夕刻に差し迫る時間帯のようなので今日はここに野営を組むことにした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る