第65話 ランクが上がっても薬草採取は継続するよ

1日ゆっくりと休んで英気を養ったので今日から心機一転頑張る所存です。


ランクが上がっても薬草採取を止めるつもりはなく、いつものように依頼書が貼ってある掲示板を見に行く。今日からはCランクとDランクの依頼が受けられるので、もしかしたら採取する薬草の種類も違う物があるかもしれない。


薬草採取は時間が掛かる割に依頼達成の際の報酬が少ないのであまり人気がない。けれど冒険者になったばかりの新人冒険者では実力が乏しい為に大した依頼は受けられず結局は採取依頼を受けざるを得ないのだ。


つまり、ランクが上がれば上がる程薬草採取をする冒険者は減り薬草の調達が間に合わない事もあるのだとか。でも薬草がなければ薬が作れない訳で、最終的に困る事になるのは自分達なのでランクが変わろうと定期的に討伐依頼の合間にだが薬草採取をする冒険者も中にはいるそうだ。


私も今のところは薬草採取はやめるつもりはないので逆に何かないかと更にじっくりと1枚ずつ依頼書を見ていく。

ふと、1枚の依頼書に目が行く。Cランク推奨の薬草採取の依頼だった。


「......ん~……」


数秒だけ悩んで私はその依頼書を掲示板から外しギルドの受付へと持って行った。


「すみません、この依頼を受けたいんですが」


今の時間、マリッサさんの姿が見えないから休憩か休みかのどちらかなのだろう。なので違う人の窓口へと向かった。


「はい、薬草採取の依頼ですね?」


すぐに採取系の依頼書だとわかるのは使われている紙の色が違うからで、討伐系は白で採取系はクリーム色だったりする。受付のお姉さんが内容を確認すると私と依頼書を交互に見て困った表情を見せた。うん、その気持ちはわかる。


「あの、本当にこの依頼で大丈夫ですか?」

「はい。私のランクはDランクですが、ひとつ上のランクまでは受けられるって聞いたんですけど駄目ですか?」

「いえ、駄目ではないです!依頼を受ける資格も満たしてます.....ですが依頼内容がその " ドラゴンの涙花 " なので....」


"" ドラゴンの涙花 " とは虹色の花弁を持った花で、ドラゴンの涙が落ちた跡にしか咲かない花だと言われている貴重な花だと言う。その花弁は目の見えない人への特効薬になるそうで。しかも今回の依頼主が辺境伯家だったりする。


「でもCランク推奨の依頼書で上がってるって言うことはある程度目星がついてて、取りに行く人材だけが必要って事じゃないですか?」

「.....た、確かにそうですね....」


普通ならこんな依頼、Cランクでは出さないだろう。まずどこにあるのかわからない上に、もし凶悪な魔獣が出るところにあれば確実にCランクでは無理がある。何か裏はありそうだけど、この依頼書を無視しないであろう冒険者に依頼を受けさせたかったと考えた方が無難かな、と。


「そう言う訳で処理の方をお願いします」

「わ、わかりました」


貴族と関り合いになるのは後々面倒くさそうだけどそれよりも私自身が " ドラゴンの涙花 " の実物を見てみたいんだから仕方無いよね、うん。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る