第9話 冒険者ギルド

何故かカウンターの中で笑顔のまま固まってしまった受付のお姉さんにもう一度声をかける。


「あの、お姉さん?」

「はっ!失礼しました......冒険者登録をしたいとの事ですが登録料に銅貨3枚と、冒険者には危険が付き物で何かあっても全て自己責任になりますが.....」

「はい、大丈夫です。あの私、身分証変わりに冒険者になりたくて基本的には危険な依頼は受けるつもりがないんです」


私が事情を説明すると明らかにホッとしたお姉さん。きっと子供で冒険者になって無茶する子が多いんだろうなぁ......ちらっと周囲を伺えば同じように安心した顔をする冒険者達がいる。


「それでしたら此方の用紙に記入をお願いします。もし字が書けないようなら代筆も出来ますが」

「多分大丈夫だと思います」


記入用紙を受けとればそこには名前、年齢、職業の欄がある。恐らく職業とは何が得意なのかを書くのだろうと予想。例えば剣士とか魔法使いとか。


私の場合は魔法使いが無難かな。子供の頃に剣道、学生時代に弓道はやってたけど剣道と剣では使い勝手も違うだろうし、弓も旨く出来るかわからないから後日検証が必要だろうと思う。


なので結局、用紙には魔法としか書かなかった。勿論文字は問題なく書けた。ふしぎだよね。自然と文字が頭に浮かんでスラスラと書ける。まるで自動書記みたい。

記入した用紙と一緒にポーチからお金を出す振りをしながら無限収納から銅貨3枚を出して一緒に渡す。


「リンさん、10歳ね」


お姉さんが記入した用紙を見ながら何やら画面に打ち込んでいるのが見える。パソコンみたいなものかしら?


「お待たせしました。これがギルドカードになりますので、この針で指を指して貰ってカードに血を一滴垂らして下さい」

「はい」


うん、お約束お約束。チクリと一瞬だけ針に指した指が痛んだけど血をカードに落とした瞬間カードが小さく光り血が吸い込まれていった。うーん、どんな原理で出来てるのか......不思議だよね


「はい、これで手続きは完了です。このギルドカードにリンさんの血を登録しましたのでこのカードはリンさん以外の人が使うことは出来ません。冒険者についての説明はどうされますか?」

「お願いします」

「わかりました。まずギルドカードは冒険者ランクによって変わります。冒険者ランクは最高ランクのSランクから最低ランクのFランクまであります。また登録したばかりの冒険者は全てFランクとなり、カードは鉄製になります。あとEランクも鉄製です。CランクDランクが銅製、Bランクが銀製、Aランクが金製、そしてSランク以上がプラチナ製になります」

「今現在Sランク以上の冒険者さんは居るんですか?」

「人数は少ないですが居ますよ。ただ現在は王都を拠点にしているようですね」


へぇ......なら会う機会はなさそうだよね。でもSランクの冒険者かぁ......いつかは一度は会ってみたいよね



そう遠くない未来にそれが現実になるのだが今の私は全く予想していなかったのだった。

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