魔王軍幹部のサキュバスですが、乗り込んできた勇者が可愛い女の子だったのでお持ち帰りしました
笹塔五郎
第1話 勇者
ルエラ・トゥエルは『オルティア魔帝国』の魔王軍の幹部の一人であり、四天王と呼ばれている。
金色の髪に巻き角が生えていて、翼や羽もある――が、何より特徴的なのはその妖艶な風貌。
彼女は淫魔族――サキュバスであった。
他人の魔力を絞り取ることで、自らを強化できるサキュバスだが、おおよそ強さの程度は決まっている。
だが、ルエラは素の状態でも、魔族として優秀な強さを持っていた。
故に、こうして魔王軍の幹部の一人を任されている。
そんな彼女が暮らす居城にて、今日は珍しい来訪者がいた。
「――ルエラ・トゥエルですね」
「人の寝室まで忍び込んでくるなんて……どちら様?」
「わたしは勇者、リリアです」
勇者――自らそう宣言した少女の声を聞き、ルエラはベッドで横になっていたが、身体を起こす。
そして、彼女の姿に衝撃を受けた。
少し長い黒髪を後ろで結び、まだ幼さ残る顔立ちからして十四、五くらいといったところだろうか。
とても可愛らしくて、紛れもなくルエラの好みのタイプであった。
勇者を名乗ったリリアだが、手に持っているのはどう見ても短剣であり、風貌からしても暗殺者というのがふさわしい。
実際、こうして忍び込んできたわけで。
「あらあら、可愛らしい勇者ちゃんが私に何の用かしら?」
「あなたを殺しに」
「ふふっ、そうよね。勇者を名乗って、魔王軍の幹部のところに来るのなら――そういう目的になるわよね。でも、どうしてわざわざ声をかけたの?」
リリアは完全に気配を消して部屋までやってきた。
おそらく、何も言わずに襲った方が手っ取り早いはず。
「不意打ちが通る相手ではないと思っているので」
「その理解は正しいけれど、成功するにしろしないにしろ、やるべきだったと思うわ」
「なら、わたしが勇者だから、そうしたまでです」
「――ふふっ、本当に可愛いのね」
少し話して、ますます気に入ってしまった。
勇者がやってくることは珍しく、ルエラの元に来る前に殺されるか、別の幹部が戦ってささっと消してしまう――ましてや、女の子の勇者はレア中のレアだ。
これは是非とも自分のモノにしたい――ルエラは決意した。
彼女は、このまま誰にも渡さないことにしよう、と。
ルエラはゆっくりと立ち上がると、指をパチンと鳴らした。
「……?」
何をしたのか、リリアにはよく分からないといった様子だ。
だが、今のはあくまで、ルエラへと注意を引くためだけの行動。
目を合わせて、ルエラはリリアに対して『淫魔法』を発動させた。
「……っ、な、何を、したんですか……?」
途端に、リリアの様子がおかしくなる。
呼吸が荒くなり、ルエラを前にしてもバランスを崩した姿勢になる。
「何をしたと思う?」
「へ、変な感覚が……くっ」
「変な感覚、ね」
ルエラは今の言葉で確信した。
すでに、彼女は性的な興奮状態にある――にもかかわらず、それがどういうものか分かっていない様子。
すなわち、リリアは性に関する知識に相当乏しいのだ。
可愛いだけでなく、無知――まさに、ルエラが愛するに相応しい少女だ。
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