隣の席の中二病が、俺のことを『闇を生きる者よ』と呼んでくる

海山蒼介/角川スニーカー文庫

プロローグ

 ――勘違い。

 それは、個人のそれぞれが抱く『何か』を、間違った状態で思い込んでしまうという過ちであり、我々は生きている中で必ずその状態に陥ってしまう事がある。

 この勘違いというものは非常に厄介なもので、合うべきでなかった辻褄が偶然にも一致する事により、その個人は対象をより深く思い違いしてしまうのだ。

(間違いない……この女――!)

(間違いない……この男――!)


((――俺(私)と同じ世界の人間だ!!!!))


 そして今、また新たに一つ勘違いが生まれてしまった。

「お前……一体何者だ!?」

 一方は『裏の世』に身を置きながら、自分と同じ『現実』の闇の中を彷徨っているのだと勘違いし。

「待っていたぞ! 私と同じ、闇を生きる者よ!」

 一方は『表の世』に身を置きながら、自分と同じ『空想』の闇の中を彷徨っているのだと勘違いする。

 加速していく過ちの渦。出口の見えない間違いのトンネル。


 彼らはその中でどう迷い、限られた時の中でどう抜け道を見付け出すのか。

 これは、互いが互いを誤解し合い、己で創り出してしまった勘違いに振り回されていく……。

 空想を知らない少年と、空想に溺れた少女の話である――。

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