ナイトウォーカーだった頃に

霧間愁

第1話

 そうだ。ボクは夜歩きナイトウォーカーだった。

 夜風に吹かれて、昔の記憶が蘇る。

 一歩進むごとに、よみがえる不思議な記憶。

 地元に帰った夜、運動不足解消のためにと母と散歩に出かけた。

 父は飲んだくれてマッサージ機の上でいい気分のようだ。

 使い捨てマスクにハイネックのジャケット、髪の毛をすっぽりと隠せる毛糸帽子。どう見たって不審者の出来上がり。十代の真ん中、15歳にボクは夜の散歩に出かけるようになった。

 理由は、何となくだ。特に理由なんかなかった。もしかしたら、かっこいいとか思っていたかもしれないが、あの頃の記憶は曖昧だ。

 例え、鮮明に思いだせたとしても、言うつもりはない。そんな小恥ずかしいことは、ボクには無理だ。

 ボクは夜歩き、昔、そう呼ばれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る