アキとハル~魔法少女は幼馴染と迷惑な幸運に挑む~
由兵衛(よしべえ)
第1話 初恋の幼馴染
私は神をホームランした。
ライオンほどのネコ神を空の遥か彼方まで。
話は一日前にさかのぼる……
「アキちゃん、ハルくん、バイバイ、家まで気を付けてね」
駅前に不審者が出ているそうで、担任のユイ先生が手を振りながら見送ってくれた。
ちょっと古風な、詰襟とセーラー服の私たちが手を振り返す。
駅を跨いでの通学は、幼馴染のハルと私の二人だけ。
決意する。
私からハルへ手を伸ばす。指先がぶつかりハルがこちらを見る。
「アキ?」
あと一歩、しぼみそうな心に喝をいれ
「怖いから」
臆病な勇気で言葉を捻り出す。手を繋ごうとしてるのが伝わるのか不安に思う間も無く、ハルは黙って握り返してくれた。
後悔した。
うまくいった後の一言とか、もっとこう引っ付いてみるとか、どうするか考えてなかった。
昔は私がハルの手を引いてこうようどこへでも行ってたのに、今じゃ手をつないだだけで体がぎくしゃくする。
賑やかな駅前を離れ、夕日が沈む山に向かって歩いていく。
踏切を越えると大きな鳥居があり、アスファルトではなく石畳が敷き詰められた参道の両脇に歴史を感じる一軒家兼店舗が立ち並ぶ。
今は閑散としているが
急な斜面を右に行ったり左に行ったりジグザグ縫うように進んで、猫神社のすぐ近くに私たちは住んでいる。
ハルが手を引き、緩くつないだ指先がほどけて家の前だと気づく。
まるで瞬間移動したかのようで、なんもしゃべってない。
微かに指先に残る余韻以外の記憶がない。
ハルが振り向く。
「このまま家に来るか?」
こんな時もある。私の両親は消防士で、父は大雨災害の援助に派遣され、母は119番通報を受けている。
今日みたいな一人でお留守番の日は、ハルの家にお世話になっているのだ。
普段と同じのようで、いつもと違う。「今日も来るのかよ」とか引っかかる物言いが無い。
真っ直ぐ私を見てる。
なんで私はハルがカッコいいと思った時にじっくり眺められないのだろう?恥ずかしくて逃げ出したくなる気持ちになんでなるんだろう?
「じゃあお邪魔するね」
視線から逃げるように、ハルの家に上がり込む。
意識すればするほど、まともにハルと喋れない。
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