05、シェルとの出合い
我が従者、シェルマウンドは元険者、結構な腕利きである。
その腕利きが従者をするには、十年前に遡る。
両親の恨み辛みを私で晴らそうとした馬鹿がいた。
領内視察で屋敷を離れ、旅行中。
薬か何かを使い睡眠中の私の拉致に成功。
だが、監禁先への移行途中、起きた私は隙を見て逃げた。
ちゃんと大声で相手を怯ませるという技を用いて、そいつらを失神させてから逃げた。
だが、小汚い馬車から下りたら、そこは森の中。
闇雲に動き回るのも危険だが、留まるにも心許ない。
どうしたものかと思っていると、声がした。
「今のはお前がやったのか?」
突然の声に驚いて見ると、そこには少々キツイめな目元の美人がいた。
短い髪に、着ているのがドレスではなく、心臓を守る胸当てをした動きやすい服装、腰には剣を提げた正しく冒険者。
「ええ、そうよ。ここはどこかしら。拉致されたまではいいけれど、帰り方が分からないの……貴女、私に雇われない?前金は……あっ、アクセサリーはあいつらに取られたわね。……ポケットとかに入ってるかしら」
気絶している拉致者達を見下ろすが、こいつらのポケットを探る気にはなれない。
「……仲間だとは思わないのか?」
「これの?貴女がボスなら、もっとましな誘拐をするでしょうね」
すると、美人はふっと笑みを見せた。
「お姫様はどこの……」
「アンダーツゥ・モーレイよ。そうね、これからを見据えた雇用を考えているなら、名前を教えて。帰路だけなら、名乗る必要はないわ。雇用保留なら、どちらでも良いわ。それと理由を聞いても無駄よ、カンだから」
「モーレイ伯爵家のお嬢様なら、きちんとした護衛を雇うのを薦めるが……」
「お父様が選んだ護衛がいてもコレよ。自分の身を守る為には、自分で選ばないといけないと学んだの、貴女なら過不足ないわ」
「それもカン?」
「そう。まあ、5歳児に言われても納得出来ないと思うけど、どうかしら?」
美人は、口元に笑みを乗せ、こちらに目線を合わせるように膝を突いた。
「私はシェルマウンド。孤児の為、姓はない」
「一応、雇用動機を聞いておくわ、私用と父用もね」
「お嬢様用は、私もカンの一言。お父様用は、お嬢様にスカウトされ同意したとそのままをお伝えする」
「いいわ。よろしくシェルマウンド……シェルね。それでここから帰るには……」
帰宅した私の雇用決定には、色々とあったがシェルはアッサリと全ての試験を突破し、めでたく従者兼教育係兼護衛として雇用された。
あとから聞いた話では、女性ソロ冒険者は、近隣国にも稀。
そして男女合わせたソロ冒険者の中でもトップクラスの実力者の持ち主だった。
それが、我が従者シェルマウンドだ。
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