02、あっ、転生か、これ。

学園へと向かう馬車の中。

突如として、前世の記憶が蘇ってきた。

鈍痛で傷む頭を抱え、蹲ると前から声をかけられる。

「アン様、如何なさいました?」

「ぐっ……っ、……シェル……」

顔を見なくてもこの声は、私の従者のシェルマウンドと分かるが、今はそれどころじゃない。



共働きの親に育てられた子供。

どちらも周りから見ると、綺麗とか恰好いい類のようだ。

二人共仕事に忙しいから、食事はコンビニやスーパーの弁当。

掃除と洗濯をしに来る人が用意してた。

小二年辺りになると、その弁当も消え、一ヶ月に三万円用意され、それで買うようになった。

朝夕の食事を買っても一日千円は子供には多い。

使わないお金が増えてきた、ある時。

クラスの男子が新しい自転車を買ったと自慢していた。

自分も気になり、自転車屋さんに行き、買おうとしたら、お母さんとかは?と聞かれて、仕事中と答えたら、怪しまれて電話番号を聞かれたから、断念。

そのあと、ゲーム機を誕生日に買ったと自慢する他の男子がいた。

ふっと気になり、親が買ったのかと聞くと、自分で買ってこいって、一人で買ったと更に自慢。

金額を聞くと、貯まったお金で余裕で買える金額。

自転車は諦め、ゲーム機を買うことにした。

レジでお母さんとかは?っと聞かれたが、一人で買ってこいって言われたと言うと、偉いなっと買わしてくれた。

それからはゲーマーまっしぐら。

勉強は、適当だったがゲームはやり込んだ。

もっぱらにロールプレイングゲーム、RPGが大好き。

オフもオンもどちらでも好きだが、オンで人に左右されるチームとかは苦手だから、ロンリー最高っとひたすら、ぼっちを貫いた。

アクションや育成系もやってみたが、落ち着くのはRPG。

そして、シミュレーションやアドベンチャー系は苦手。

会話を読み込んで、決められたコマンドを選んで攻略していくのが全く駄目だった。

恋愛シミュレーションは、特にダメ。

乙女ゲーの奴らのどこがイケメンなのか分からない。

何個か試しで買ったが、どれも10分もかからず、ゴミ箱へと投下した。

そして、それからはRPG一本。

ゲームで始まり、ゲームで終わる毎日。

学校は、仕方がなく通い、ゲームしか考えてない馬鹿でも入れる高校に入学した。

その学校帰り、早くゲームがしたくて走って自宅へ帰っていた時に、トラックに撥ねられそうな子供を庇って轢かれた。

享年15歳の春、確か、入学式の翌日だった。



鈍痛だった頭の痛みが引いていく。

リアルな友人とか全く出てこずにゲームばかりで終わった前世の記憶につい笑ってしまった。

「なるほど、転生か、これ」

「えっ?」

その声に顔を上げるとシェルマウンドが不思議な顔でこちらを見ていた。

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