第18話 次の戦いへ
あれから数週間がたった。7月に入り、梅雨明け。
また妖怪が現れたらしい。しかも今回は千葉だとか。
学校の無い土曜日。ミトラが住んでいる藤沢駅へ。
ミトラとの約束の場所へ。約束の9時、10分前。改札前のコンビニで涼む。
雲一つないカラッとした暑さでおでこには汗がダラダラ。特に胸のあたりは汗で蒸れてしまい、不快な気分。
胸が大きいというのは、私にとってデメリットであるのが痛感させられる。
そして、9時5分ごろになってミトラがやってくる。
私の姿を見るなり、手を上げて元気そうにぴょんぴょん飛び跳ねて話しかけてきた。この場に視線が私に集中してしまい、恥ずかしい気分になる。
また今回もかわいい服装──。
麦わら帽子をかぶっていて、フリフリのついた白いワンピースに、太ももが半分くらいみえるミニスカート。そして高そうな水色のブーツ。
まるで、裕福なお嬢様の様な格好だ。妖怪と戦うという前提の服とは思えない……。遊びに行くと勘違いしているんじゃないのか。
「こめんなさいわですわ。着替えに手間取ってしまいましたの」
両手を合わせ、申し訳なさそうな表情で話しかけてきた。
「ま、いいけどさ」
「ありがとうですの凛音。早速行きますの!」
そしてミトラは改札を通り、ホームへと歩いていく。
ミトラのかわいい服装に、思わず見入ってしまう。対して私、汚れてもいいようにそこいらの激安スーパーで買った紫色のシャツにGパン。
ミトラの隣にいるせいで、余計に地味な格好に見えてしまう。私は、ミトラに引き立て役なのか?人見知りだから目立たない方がいいから好都合なのだが。
すぐに電車が来て、東海道線の中で確認。今回は軽い遠征といった方がいい。
「場所は、印旛沼だよね」
「そうですわ。場所は知っていますので、私が案内しますわ」
そう、場所は千葉県にある印旛沼だ。先日、期末テストの勉強をしているとき、ミトラからここで妖怪が現れているのだと、説明を受けた。
ちなみに今回は他の妖怪省の人との合同作戦らしい。一応一緒に戦う人たちは私に対して理解があるようで、安心していいと言われたが、やはり不安が残る。
うまくコミュニケーションが取れるだろうか。
そして新橋からアクセス特急に乗り、一時間ほどで印旛日本医大駅へ。改札から降りると、新しい住宅街が立ち並ぶニュータウンの街並みが視界に入る。
「とりあえず、どっか喫茶店入って作戦会議しない」
「わかりましたわ──」
そして私は駅前の喫茶店へ。
入口の扉を開けるとチリンチリンとドアが開き、ウェイターの人に窓側の席へ案内される。
しばらくして料理が出て来た──。
机に並べられたのは、私が頼んだ紅茶に、ミトラのコーヒーそれから抹茶のアイスに、イチゴが乗ったショートケーキ。
貧しい学生の私には不相応な食品の数々。
こうなった原因はメニューを頼んだときなのだがこいつが──。
「紅茶と、コーヒー、オレンジタルトにイチゴパフェ。ショートケーキに抹茶のアイス──。それと……」
「それ、一人で食べきれるの?」
「凛音となら、この位いけますの!」
「私、裕福じゃないし……」
「初仕事のおごりですわ。この位パーっと行きましょう!!」
ということで、こんな豪勢な間食になってしまっているのだ。真剣な話だというのに、まるでサークルの打ち上げみたい。まあ、おごってくれるというのだからいいか──、たまには甘えよう。
私も、講義に昨日の疲れが重なって疲れているし、一息つこう。
姿勢を落とし前かがみになり、机に不相応に突き出たわたしの胸を載せる。
下着によって肩にかかっていた胸の重みがなくなり、気が楽になった。
そしてだらんとした体制でショートケーキのイチゴを食べてミトラに話しかける。
「なんていうか、ミトラの戦い方。というか考え方がわかってきた」
「へぇ~~。どんな?」
「出たとこ勝負。力任せの運任せ。やりたいことをやりたいだけやって、感情的で策もなく突っ込んでいく。困ったことがあったら、その時に初めて考えるタイプ」
私とは正反対のタイプだ。しかし、ミトラは落ち込むどころかエッヘンといわんばかりに腰に手を当てる。
「戦いとは、妖力のごり押し、ですわ。パワーぶつけ合い、力押し。それが私の座右の銘
それに半妖体となった凛音ならいくら傷を負ったり、骨が粉砕されても、死なないし、すぐに治るのですわ」
平然と言い張りながらケーキを口にするミトラ。他人事のような言葉にむっとしてしまう。
「死ぬほど痛いんだって。この前なんか頭から木に突っ込んで、しばらく動けなったし せめて 受け身の仕方とか、教わりたい……」
他人事だと思って。あんな痛い思い。私だってしたくないよ……。
「そんなことより~~」
「そんなことより?」
ミトラはウィンクをして、ノリノリな表情で言い放つ。
「恋バナとかしましょうよ──」
「ない」
私はミトラにきっぱりと言い放った。ミトラは残念そうな表情をする。
「そんな~~。凛音、スタイルいいじゃないですの──。もったいないですの」
「別に、付き合いたいとか、思ったことないし。人と一緒にいるの、あまり好きじゃないから……」
私は、別に容姿に優れているわけでもないし。人当たりがいいわけでもない。
ずっと一人で、学校生活を過ごしてきた私には、無縁の話なのだ。
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