第3話 誕生日は何をする?(目黒音夜視点)

 妹の友梨をどんな子と言われると、少し考えてしまう。


「まぁ、厳しいというか、なんというか風当たりが強い……まぁ兄弟の俺に対してだからかもしれないけど。お前はサバサバした感じの性格は好みじゃないだろ?」


 おそらくあれは家での……というか、俺に対する姿であって、本当はもっと違う1面や外面といったものがあるのだろうとは思う。

 あくまでもこれは、俺の知る友梨のイメージに過ぎない。


「好みというか……まぁ正直、音夜の妹に手を出す気はねぇから半分冗談だったけどさ。なに、あんま妹と関係がうまくいってねぇの?」


「……どう、なんだろうな」

 俺自信、それが一番よく分かっていない。


「嫌われているかは分からないけど、なんか避けられてる感じはするかな」

 どうも、いつものあいつの反応を見ていると、そう思えてしまう。


「まぁ、高校生の女子からしたら、兄なんてそんなもんなんだろうけど。ただでさえ俺は一緒にいることが多くて、口うるさいと思われてるだろうし」

「音夜はけっこう真面目なところがあるから、今をキャッキャッしたい女子高生からしたら、まぁ煙たい存在かもしれねぇよな」

 兼継ぐの言うことは、あながち間違っていないかもしれない。


 やっぱ、友梨からしたら、俺ってそんなもんだよなぁ……。


「でも、私は音夜みたいな兄貴だったら逆に嬉しいけどね」

「……そうか?」

「だってしっかりしてるし、頼れるし、どっかの誰かと違って無駄遣いばかりしないだろうからね」

「無駄遣いじゃーありません! 今しかできない思い出を買ってるんです」


「音夜はさぁ、妹さんと本当はどうなりたいとか、思いはあるの?」

 兼続の言葉を無視して、久美子は真っすぐに俺の目を見て質問する。


 どうなりたい……か。


「もう少し、仲良くというか、つんつんしないでくれたらとは思う」

 無邪気な頃とまでは言わないが、もっと気軽に、笑顔で話し合える関係にはなれたらと思う。


「そしたらやっぱり、誕生日にはプレゼントあげて、好感度アップを目指したらいいんじゃない?」

 顔の距離を、少し詰め寄り気味に久美子は提案する。


 関係を深められるプレゼントか……なかなか探すのが、大変そうだな。


「まぁ、もともと今年も買うつもりではいたんだけど。正直毎年何あげたらいいのか、分かんないから困ってんだけどな」

 いちおう、今までもプレゼント欠かさず渡してきた。

 だが、『ありがとう、助かる』的な事務的な言葉を返されたことしかなかった。


 もっと別に欲しい物があったのではないかとも思うが、俺にはあいつが喜びそうな物を想像することが難しかった。


「基本、毎年誕生日には何をあげてるの?」

「毎年希望を聞くが、ここ数年は雑誌とか参考書とか安いものしか言われない。なんかその場で欲しいものを思いついて、言われるだけだな。もっと強請っていいぞとか言っても、逆になんか不機嫌な反応されちゃうし」

「お兄ちゃん、めっちゃ塩対応されてんじゃん」

「だろ。期待されてないんだよ」


「ならなおさら、今回はサプライズで用意してあげようよ!」

 先程より、久美子との距離が近くなる。


「何もしないよりは、出来ることはやってみるべきだと、私は思うよ?」

 久美子は、なぜだかものすごく乗り気だった。

 その勢いに、若干こっちがたじろみそうになるが、彼女言っていることは、確かにその通りだとも思う。


「……それもそうだな」

 何もしないのであれば変わらないし、友梨の嫌がることをするわけではないから、やってみる価値はあるかもしれない。


「とりあえず、まずはさりげなく好きな物や、気になってる商品があるかを聞いてみたらどう?」

「上手く聞き出せるか……めっちゃ自信がないけどな」

 質問した途端に『は、突然何なの、意味がわからないんだけど?』と言われそうでならない。


「やんわり聞いてもらえれば、後は私も一緒に考えるからさ、頑張ってね! お兄ちゃん」

 久美子がいろいろ相談に乗ってくれるのは、かなり心強い。

 ただ、そもそも上手く聞き出せるかが不安だが。


「……あんま期待しないでくれよ」

 イメージがわかず、そんな曖昧な返答しか出来なかった。


「なんか二人の間を邪魔しちゃ悪いんで、俺はちょっくら吸ってくるわ」

 そういうと、兼続は席を外すよう立ち上がった。


 兼継は久美子の肩を軽く叩いて、にやけながら歩き出す。


「3〜4本は吸うから、ごゆっくりな〜」

「うるさい、早くいきなさいよ」

 ハエを払いのけるかのように、久美子は兼続を手で払った。

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