4-3.お布団の割り当てとお風呂の順番を決める
美空ちゃんとみーちゃんがお風呂に入ったので、俺は居間に戻り年長の三人と合流。
これからについて話し合う。
とりあえず布団の割り当ては、揉めに揉めまくった。
女子的には、義父さんの布団は使いたくないらしい。
「私がひー君と一緒に、ひー君のベッドで寝るよ」
「えっ?!」
美空がとんでもないことを言いだした。
顔は真っ赤だ。
「タイムスリップしてきたみんなにはできるだけ、負担を掛けたくないし……」
「それはそうだけど。俺と一緒のベッドって……」
俺のベッドで美空と一緒に……。
駄目だ、想像するな。
普通サイズのベッドだから絶対に肩や腕は触れあうし、寝返りでも打とうものなら抱きついてしまう。
俺達が中学生だった時は、両親が居ない雷雨の夜に布団を並べて一緒に寝たことはあるし、それも俺達が仲良くなった要因の一つだと思うけど、さすがにもう高校生なんだし……。
「拒否はせずに鼻の下を伸ばす……。成る程」
美空はスマホに何かを入力し始める。
もしかして、俺の反応を観察してた?
「ひー君、ごめんね。
やっぱり体格的に男の子は一人じゃないと、窮屈で眠れないよね」
「お、おう」
「あ、ひー君。密着すれば二人くらい寝れると思ってない?
美空、気をつけて。この顔、割と本気で一緒に寝るつもりだったよ」
美空さんが余計なことを言い、さらに美空に何か耳打ち。二人でひそひそ話をしている。さすが自分自身。二人は出会って数時間なのに、もう意気投合しているっぽい。
俺がからかわれたことは一旦置いておくとして、確かに体格を考慮するなら美空達が二人で一つの寝具を使うべきだろう。
「んー。
なかなか決まらないし、お姉ちゃん特権で私が決めちゃうよ。
美空ちゃんとみーちゃんが美空の部屋。
私がひー君のベッドで寝て、ひー君が義父さんのお布団。
美空と美空さんは義母さんの布団を二人で使うの」
「え、あ、いや、それは……」
各人の体の大きさを考慮するなら、無難なアイデアのように聞こえる。
でも、俺のベッドで年上の異性が寝る……。なんかエッチだ。
俺はどう反応するのが正解なんだ。
いいですよと愛沢さんの提案を受け入れる?
そうしたら下心があるみたいで、美空や美空さんから軽蔑されないか?
チラリと様子を窺うと、二人とも微妙な表情だ。
「お姉、いくらなんでもそれは」
「そうだよ。ひー君のベッドで寝るなんて……」
「えー。でも、大人の私は、ひー君と同じベッドで寝ている関係かもしれないよ?」
「未来ネタ禁止って言ったよね!」
「そうだよ。だいたい私とひー君は……! うっ……」
美空さんが言葉を途中で切り、俺と美空をゆっくりと順に見る。
「美空さん、俺と美空が何?
大学時代に何かあるの?」
「あ、いや、それは……」
美空さんの顔に「しまった」と書いてある。
美空さんが助けを求めるように愛沢さんに顔を向けるが――。
「言えないことだよねー」
「ぐ……」
「世の中には知っている素振りが有効なことがある一方で、仄めかしたら駄目なこともあるんだよ。
はい。もう、私の案で決定で良いでしょ。ね、美空?」
愛沢さんはこの時代の美空を立ててくれるらしく、美空に同意を求める。
「う、うん。それで」
「じゃ、次はお風呂の順番」
ぐっ……。愛沢さんがまたセンシティブな話題をぶっこんできた。
いや、避けて通れないことなんだけど。
中橋家では話し合って決めたわけではないが、中学時代は美空が先にお風呂に入っていた。美空が、義父さんや僕の入った後に入りたくないからだ。
高校生になるとこれが逆になり、僕や義父さんが先に入るようになった。
美空が、異性の先に入りたくなくなったからだ。
美空の風呂に対する意識が、ある瞬間に変わったらしい。
「今はみーちゃんと美空ちゃんが入ってるよね。ひー君は次は誰だと思う?」
「ぐっ……」
大人げない!
愛沢さんはわざわざ俺に意見を求めて、俺をからかっている。
どうする。
俺の順番は「次」か「最後」の二択だ。
次に俺が入ると、女子小学生と女子中学生の後に入浴したがる変態っぽさがある。かといって最後を選べば、五人が浸かった後のお湯になる。それはもっと変態感がある。
最初に入らなかった時点で、俺は異性が出た直後の湯を使いたがる変態になるのだ……。
それに、明日以降のこともある。
全員の生活リズムを考えるなら、俺が最後になった方が都合がいいはずだ。
「俺は、最後かな……」
「ふーん。ひー君は私達全員が入った後を希望……ね。
ほら、二人とも、メモメモ」
愛沢さんは笑顔。美空と美空さんは何とも言えない表情でスマホ弄り。
「じゃ、私達は年齢順だよね。美空、いい?」
「うん」
お風呂の順番はあっさりと決定。
入浴と就寝の段取りが決まれば、次に決めるのは明日の朝食だ。
「俺、今からコンビニに行ってくるよ。
明日の朝飯を適当に買ってくるけど、問題ないよね?」
「あ、じゃあ私も行く。三年前のこの辺り久しぶりに見てみたいし」
ということで、俺は美空さんと一緒に近所のコンビニへ行くことになった。
この時の俺は、まさか二人きりになったからって、美空さんがあんな積極的なことをしてくるとは思いもしなかった。
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