第10話 暴動寸前なようです
私が学園を休み始めてから数日が経過した。
エリックとは毎日少しだが話が出来ている。
私は私に出来ることをしよう。
そう思い、私は自室になかば引きこもりつつ、情報を集めることにした。
マリアベルはエリックが演技を始めても、様々な男子生徒と交流を
「報告はそれだけ?」
問いかけると、男は何枚もの紙を手渡して来た。
特徴がない男。顔と名前を覚えることが得意な私でも、彼のことはすぐに忘れてしまいそうだ。
「取り巻き連中の名前と、婚約者を
「ありがとう。やはりあなた方に頼んで正解だったわ」
リストは、マリアベルへの
「ふふ、そういえば私も事業をはじめようと思っているの。相談に乗ってくれるかしら?」
私が微笑むと、男は
争いになったらあなたの方が強いのにどうしてそんなに怯(おび)えるのかしら。犬みたい。
「そんなに
「
「いえ、腕が良くて信用できる錬金術師、魔法士、職人を探してきて欲しいの。平民向けには木製で、貴族には宝石を使って。それにともなって商会も作りたいから、商売が出来る秘書が欲しいわ」
「伯爵家に人材はいないのかよ」
男ははぁ、と大げさにため息を吐いた。
私は窓の外を指さした。
屋敷の前にはたくさんの市民たちが集まっている。警備を厳重にしたからか、入り込むものはいないが、殺さずに対処するのもそろそろ厳しくなってきている。
「あれを見て、うちの名前を出して商売ができると思う?」
「あのバカみたいな本にかけられた魔法にひっかかるやつなんて、バカばっかりだと思うがな」
「魔力のコントロールができれば、魔法への耐性もつくものね。でも彼らはそんなコントロールの仕方なんて学べなかったのよ」
「分かった。人材探しにうちを使う貴族なんてお嬢ちゃんが初めてかもな」
「そうそう。あんな状態じゃ安全に出入りなんて出来ないだろうから、テレポートの魔法が使えるアイテムも探してね」
「はいはい」
男はやる気のない返事をして、扉から出て行った。
「ああ、デザイナーも必要ね」
私は事業に関する書類をまとめることにした。
メインターゲットの
私は攻撃魔法は得意ではないが、できないわけではない。得意なのは守る戦い方。
「安価なアクセサリーを作って、宝石も安価な方がいいわね。デザインもシンプルな感じで」
ちょっとした
そして一気に流行させる。
お父様とお母様にも相談しましょう!
ふふふ、楽しくなってきたわ。
コンコン。
思考に水を差すように扉がノックされた。
「入ってちょうだい」
「失礼します。お嬢さま、そろそろお茶にいたしませんか?」
マーサが外の騒ぎから気を反らすためか、紅茶を運んできてくれた。
「お嬢さまの好きな料理長特製のクッキーもありますよ」
「うれしい! みんなにもありがとうと伝えておいて」
私の笑みにマーサはほっと胸をなでおろしたようだった。
そうよ、あれだけ敵意を向けている人たちはみんな、私の将来の顧客なの。
「マーサ、紙とペンを持ってきてれる? 手紙を書きたいの」
「はい!」
マーサの後ろ姿を見ながら、年代を問わずにつけられるアクセサリーを作成しよう、良い職人が見つかると良い、そんな事を思った。
☆
こうして私も様々な準備を水面下で進めていった。
たった三か月でここまでできたのは褒められても良いことだと思う。
そして私がついに屋敷を出れる日がやって来た。
迎えに来たエリックはうっすらと涙を浮かべていた。ようやく今日マリアベルから解放されることへの喜びだろう。
いつもより機嫌が良い。
今日は城で行われるパーティがある。
屋敷の前にあれだけいた人々はもういない。例の本も入手困難になっているようだ。
マリアベルの生家である商家が売りさばいていた本は、全て皇室が回収、今も監視されている。
「エミィ元気そうで良かったよ」
「うふふ、この引きこもり期間にお友達もたくさんできたからかしら?」
「良く笑うようになったよね」
エリックが私に釣られて少し微笑んだ。
そうなの。これが悪女の笑みなのよ。
エリックには教えてあげないけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます