第5話 嘘偽りの聖女には負けませんわ

王子様が近くにいるとなれば早速探しに行かなくては。あの後自室に戻りよく眠った私は昨日の話が本当であることを信じて朝早くから探索に出ることにした。




元々このゲームの世界は私が知っている中ではこの国の中だけでストーリーが展開するので正直な話をすればこの外側に国があるとは考えられない。でも、この世界の住人がそう言っているのだからどこかに本当の王子様がいるはずだ。




そうは言っても私が手に入れられた“奇抜で奇想天外”ということだけでその他は何も知らないしかもそれがあっているかどうかさえも分からない。しかし、この国の中の人々はみんな質素な服装をしているし、今のところすごく変わっていると思った人を一人も見ていない。




考えるより行動した方がこうなってしまえば手っ取り早い。宿を出てからうろちょろしていた私は決意をかためてスラムの方へ歩き出した。スラム街は荒れているのは名前の通りだがここよりかは面白い場所であることは知っている。




中にはカジノにバー、王族たちに呆れ返った人達が密かに営むいわば裏社会的なものが発達している。呆れられている当の本人たちは全く気がついていないのでスラム街で何が起ころうが無法地帯でしかなくて、わざわざ近づこうとする人は少ない。中には王族に従う者たちのくるった顔が嫌になり、城下町に見切りをつけて全てを捨ててこのスラム街に飛び込む者もいたりする。




そんな危ない場所へ向かって歩いているのに何故かルンルンな私を周りは完全に怪しい目で見てくる人が多数だが、ここら辺はスラム街と城下町の境界線にもなっているので地域の住民はまたかと顔に出すだけでスラム街へ向かう私を止めようとかなんてことは全くしない。




「ねぇ、知ってる?リースって王子の婚約者が聖女じゃなかったって話」




ああ、その事なら今私が否定してやるさ。こっちに来て話し合おうじゃないかと思いながらも今私のことをバラそうが誰も信用してくれなさそうなのでやめておく。




「知ってる。ミラニィナ様が本当の聖女で王子様と結ばれたらしいわよ。リースより断然かわいいんだってさ」




えー、まじでー、と何も知りもしないくせに世間話程度で興味がまっさらないその二人組は歩き去った。




あの二人がどうとは言わないが、もうスラム街の手前まで昨夜のことが話されてしまっていると言うことだけはよく分かった。とにかく早くスラム街に逃げて素性がバレないようにしなくてはと焦りを感じていた。焦る私の心とは反対に朝日は大空に昇りきって街を照らし始めた。


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